第27話 VSクリスタルゴーレム
「マ”アァァァァァァァァァ!!!!」
砕けたはずのクリスタルが自己修復。巨大な水晶のゴーレムに変身した!
――――ピカッ!
水晶ゴーレムの全身が白く輝く。
――――シュゥゥゥン!
ゴーレムの眼前に魔力が集中。巨大な光の球が生まれた。
「なんだアイツは!? 何をするつもりだ!?」
「ヤツは洞窟を護るガーディアン、クリスタルゴーレムじゃ。光線魔法による自動迎撃が防がれたので直接攻撃に切り替えたようじゃな」
カーラ人形はマイペースに説明を続ける。
「アレはワシが現役だった頃に開発した古代兵器での。大地の精霊と光の精霊がその身に宿っておる」
「古代エルフの置き土産ってことか?」
「だったらカーラさんの命令を聞くんじゃない!?」
「残念ながら無理じゃな。経年劣化で命令系統の魔術刻印にエラーが発生しておる。故に物置小屋にしまって封印したのじゃ」
「その言い方だとカーラがあのゴーレムを造って、手に負えなくなったから封印したように聞こえるんだが……」
「マ”アァァァァァァァァァ!!!!」
「話は後じゃ。今は目の前の敵に集中するのじゃ!」
「わかってるよ!」
俺は盾をかまえてクリスタルゴーレムと対峙する。
――――シュゴオオオォォォッ!!
極太の光線魔法が俺たちに向けて放たれた!
「同じ手を食らうかよ!」
漆黒の盾でレーザー光線を受けきる。
だが、最初に食らった光線魔法より威力が上がっているようだ。
――――ジュゥゥゥ!
盾が音を立てて溶け始めた。
「くっ……! このままだと盾がもたないか」
オレは後ろで控えているユウキに呼びかけた。
「ユウキ! フォーメーションAだ!」
「ボクが前線に出るの!?」
「ああ! 温存してきた魔力をぶっ放せ!」
フォーメーションAは、オレが得意とする【攻防のかまえ】をパーティー陣形に応用したものだ。
オレが護りを固めている間にユウキがサポートを行い、隙を見てコジロウが俊足の居合いで斬りかかる。
「おまえはコジロウを倒しただろう。いまのユウキならやれる。おまえを信じてる……!」
「……っ! わかった。やってみる!」
ユウキは力強く頷くと、右手を天高く掲げた。
「【闇の寵愛】!」
ユウキは魔装具を召喚。黒い外套と魔女服に身を包んだ。
――――ヴンッ!
ユウキの魔力が一気に膨れあがる。
「【クラブエンハンス】&【ダークエンチャント】かーらーのー【フィジカルブースト】&【マジックレジスト】!」
ユウキは高まった魔力を使い、メイスに強化バフ魔法をかける。
それだけでなく自身の肉体を強化した!
【フィジカルブースト】は身体能力を向上させるバフスキルだ。
【マジックレジスト】は全属性の魔法攻撃のダメージを軽減する効果があり、魔法戦では必須のバフスキルだった。
――――シュゥゥン…………。
やがて光線魔法が止まった。
結晶体の時と同じく、再チャージするまで時間がかかるらしい。
「今だ! ここまで我慢したんだ。ド派手にかましてこい!」
「了解!」
攻撃が止まったチャンスを見逃さず、ユウキが前線に飛び出す。
「マ”ッ!!」
クリスタルゴーレムは巨大な両腕を動かして、ユウキを捕まえようとする。
「キミの動きはもう見切ってる!」
オレとロックゴーレムの戦いを見て攻略法を学んだのだろう。
ユウキは華麗にジャンプすると、クリスタルゴーレムの攻撃を難なく回避。
巨大な腕の上に着地すると――
「とぉぉぉりゃああああ!」
雄叫びをあげてクリスタルゴーレムの腕を駆け上った。
肩部に到達したところで再びハイジャンプ!
「【ダークネスブロークン】!」
溜めに溜めた魔力をメイスに集約。
大きく振りかぶって。
「せぇぇのっ!」
――――ズガンッ!
クリスタルゴーレムの頭部めがけてメイスを叩き下ろした!
「グオオオオオオオッ!!」
頭部に強烈な一撃を食らい、クリスタルゴーレムの巨体が揺れる。
全身に大きな亀裂が入り――
――――ガシャアアァァァンッ!
クリスタルゴーレムは、ガラスが割れたような音を立てて粉々に砕け散った。
「どうよ」
ユウキは背中に生えたコウモリの翼を羽ばたかせながら、その場に降り立った。
笑顔でVサインまで決めている。
オレはボロボロになった盾を下げながら、ユウキに笑みを返した。
「やっぱりすごいな。やれると思ったがまさか一撃で倒すなんて」
「ロイスがのおかげだよ。魔力を温存してなかったら、あんなに多くのバフをかけられなかった。【ダークネスブロークン】を撃つ前にガス欠になってたと思う」
「いつの間に新しいスキルを覚えたんだ?」
「ロイスが壺の中で修行している間だよ。カーラも死印持ちでしょ? だから魔力を分けてもらって能力値を底上げしたんだ」
ユウキは自分のステータスを表示させる。
――――――――――――――――
【ユウキ・マリアドール】
●冒険者ランク:ブロンズ
●クラス:ダークプリースト(Lv35)
●能力値:【体力251】【反射349】【知覚274】【理知411】【幸運8】
●ユニークスキル:【死印付与】
●所持スキル:【ダークエンチャント】【ダークネスブロークン】【ダークビーム/弱】【ダークヒール】【闇の寵愛】【魔法属性付与/上級】【武具強化/上級】【身体強化/中級】【精神強化/中級】【回復魔法/上級】【感知魔法/上級】【棍棒術/中級】
――――――――――――――――
ユウキは確かにレベルアップを済ませ、スキルも増えていた。
全盛期にはまだ遠いが、それでもかなり強くなっている。
「覚えたのは【ダークスラッシュ】じゃないんだな」
オレの記憶では、ユウキは漆黒の剣を持ち【ダークスラッシュ】を放っていた。
そんなオレの疑問にカーラ人形が答えた。
「ユウキのメイン武器は棍棒じゃろう? だから斬撃ではなく、破砕系のスキルを覚えさせたのじゃ。石化の呪いを付与してぶっ叩けば、相手は一瞬で粉々じゃ」
「なるほどな。ところでさっきの話の続きだけど、クリスタルゴーレムを造ったのはあんただよな。オレたちに後始末させただろ」
「あーあーあー。聞こえないのう」
オレが早口で責め立てると、カーラ人形は浮遊の魔法を使ってオレとユウキの元から逃げた。
「おいこら待て!」
オレは手を伸ばして人形を掴もうとするが、ユウキは参加せず自分のステータスを見て首をかしげていた。
「おかしいな。クリスタルゴーレムはダンジョンのボスだよね? 強敵を倒したのに経験値がまるで入ってない」
「言われてみればそうだな」
オレも戦闘に参加しているので経験値が入るはずだ。
だが、強くなった感覚はない。スキルもこれといって変化がなかった。
「反省会をしておるところ悪いが、ワシが伝えたクエスト達成条件を覚えておるか?」
「確か洞窟のボスを倒して……」
「魔石を回収すること!?」
オレとユウキは顔を見合わせて大声を上げる。
「わーーー! どうしよう!? 魔石ごと体を粉々にしちゃったよ。今からでも回収できるかな」
「手分けして探すんだ!」
オレとユウキは床に散らばったクリスタルゴーレムの破片を調べる。
だが、いくら探しても魔石は見当たらない。見つかるのは水晶の欠片だけだ。
「待てよ……」
球体だったり立方体だったりと、魔石のカタチはさまざまだ。
スライムの場合は、体に合わせて真珠のようなカタチをしていた。
クリスタルゴーレムが岩巨人の上位個体だとしたら、魔石のカタチは立方体だろう。
魔石を好むモンスターが徘徊するダンジョン。
その最深部にあったコアクリスタル。
コアクリスタルは一度砕け散り、自己修復をしてゴーレムに変化した。
つまり――
「そういうことか!」
点と点が結びつく。
不自然に距離を取っていたカーラ人形が笑う。
「言ったであろう? お遊び気分で合格できるほどワシの試験は甘くないと!」
――――ピカッ!
地面に散らばっていた水晶の破片が輝く。
それだけではない。天井や床、壁、部屋にあるあらゆるモノが輝いた。
「伏せろユウキ! ダンジョンそのものが敵だ!」
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
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