十二月三十日(金曜)みけ

 ねえねえ、くろ父さんが、ごはんあるよーって言ってくれたから、来たよ。

 早くちょうだい!

 あたしはガラス戸のすぐそばまで行って、中を覗き込んだ。

 ニンゲン、まだかなあ。早く気づいてくれないかなあ。

 テレビが点いているから、すぐ来てくれそうよね。

 あたしは「にゃぁああう」とか言いたくなるのをぐっとこらえて、じーっと待った。

 あ。

 こくいちも来た。

 こくいちもくろ父さんに教えてもらってきたの?

 うん、そう! 今日はすぐくれるよって。

 よかったね。

 うん、だってね、昨日は命の水、もらえなかったの。

 ときどきもらえないよね。

 うんうん。でも今日はあるって、くろ父さん言ってたの!

 あ! 来たよ、ニンゲン!

「あ、、みけ! くろに教えてもらったの?」

 そうそう!

「牛乳は、ちょっと待っててね。先にかりかりあげる。……あ、こくいちもいたの?」

 いるよーと、こくいちはソファとガラス戸の隙間から顔を出した。

「こっくー、昨日は牛乳なくてごめんね」

 うん、あたし悲しかったよー、今日はちょうだいね。

 とこくいちは言い、するりと餌入れの前に陣取る。

 今日もこくいちに一番は譲ってあげよっと。

 こくいちはありがとーと言って、あたしより先に牛乳を飲み始めた。あたしはこくいちが食べ終わるのをじっと待った。最近、こくによりこくいちといっしょにいることが多いんだ。

 こくいちは優しい子だから。

 こくいちがどうぞって言ったので、食べ始める。命の水はないなあって思ってたら、

「あ、からだね」

 と、ニンゲンがどぼどぼと注いでくれた。嬉しいな。

 こくいちは身体を舐めてきれいにしながら、あたしを待っていてくれる。

 ごはんを食べ終わって、こくいちに頭をすり寄せながら、ごちそうさまーって言い合う。しっぽをぴんと立てて、お互いにすりすりと身体を寄せる。ふふ。

 今日は陽射しがあったかいね。

 ああ、なんだか眠くなっちゃった。こくいちも眠いみたい。眠いのって、うつるよね。

 あたしとこくいちはソファの上で丸くなった。

 なんだか、いい夢が見れそうな気がする。

 こくいちとくっついて、まぶたを閉じた。


☆☆☆☆☆

「金色の鳩」

https://kakuyomu.jp/works/16817330651418101263

「銀色の鳩 ――金色の鳩②」

https://kakuyomu.jp/works/16817330651542989552

よかったら、こちらも見てくださいね。

カクヨム短編賞に応募中です。




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