十二月二十五日(日曜)こくに
ぼく、来たよー!
かりかりとガラス戸をひっかく。
「こくに! 来たの?」
ニンゲンはすぐ気づいてくれる。
ぼく、知ってるんだ。テレビがついているときはニンゲンがいるって。家の中から気配がするときも、いるなって思う。そういうときは、かりかりってやって、ぼくがいることを教えてあげるんだ。ニンゲンも嬉しそうにやってくるよ。
「こくに。今あげるからね」
うん、ぼくお腹空いているから、早くちょうだい。
「こくには、かりかりたくさんがいいんだよね」
そうそう。ぼく、いっぱい食べるんだー
「今日ね、朝、くろが来て、それからこくいちとみけが来たんだよ」
あ、そうなんだ。最近、ぼくはひとりのことが多いんだ。こくいちとみけはよくいっしょにいるみたいだね。
「くろ、足、大丈夫かなあ」
くろ父さんは大丈夫って言ってたけど……。
「足、痛そうなんだよねえ」
ぼくもちょっと心配なんだ。
「ねえ、くろにまた来てねって、言っておいてね」
うん、そうするよ。ちゃんと食べないと、怪我も治らないからね。
さて、と。
今日はどこに行こうかな。
――ガラス戸の中をちょっと見る。
ニンゲンは「入っておいで」と言う。「うちの子になって」と言う。
でも、ぼくたちはそういうの、よく分からないんだ。
「あったかいよ」「いつもお腹いっぱいだよ」
うん、でも、ぼくはひとりで歩いていきたいんだ。
あたたかそうな室内をもう一度見る。
そうして、くるっと向き直り、元気よく冬の世界に駆け出した。
今日は特別に寒い気がするなあ。どこかあたたかい場所、探さなくちゃ。お日さまが当たっているときはいいけれど、夜はもうかなり寒いからね。白いおうちの寝床かなあ、やっぱり。
ぼくたちは生まれたときからひとりで歩くよう教えられてきたし、自由に世界を歩いて生きている。そういうタイシツなのだと思う。
いつか、おうち猫になって、ぬくぬくした生活を送りたくなるかもしれない。
でも、今のところは、このままがいいな。
だからさ、とりあえず、またおいしいもの、ちょうだいね!
くろ父さんにもちゃんとあげてね。
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