第12話 恋する乙女の闘い? -2-

 あれから数時間後。


 場所は、体育の授業が行われる体育館へと移された。


「第二種目――――『バレー』! じゃあ、いってみよーっ♪」

「オッッッラァァァアアアアアーッ!!!」


 開始早々、鼓膜を貫くような音とともに、床にボールが叩きつけられた。


「……って、いきなり……ッ!!?」


 素手で打ったはずなのに、一瞬、ボールが凹んだように見えたんだけど……?


「ば……バレー部のエース様が、体育の授業で本気出しちゃダメでしょーっ!!」


 ネット越しに抗議すると、


「ふんっ。試合形式である以上、絶対に勝たせてもらうっ!!」


 私の文句を軽く受け流し、メラメラと闘志を燃やしていた。


「ほらそこーっ。早く自分のポジションに戻れー」


 バレーは、点を取ったチームが次のサーブを打つ。ということは、つまり……


「次は……ワタシの番だな」


 つばさのサーブは、ただフワッと浮かせてポンッと打つものではない。


「……フフッ」


 不敵な笑みとともに、手首のスナップを効かせて回転をかけたボールを前方向に上げると、助走をつけながらラインギリギリでジャンプし、ボールを……




 バァンッッッッッ!!!!!




「……って、じゃ、ジャンプサーブ!? あんなサーブを取れる人なんて…――」

「――あたしがいるだろ?」


 振り返ると、レシーブの体勢に入っていた秋がニヤリと笑みを浮かべた。


「…………っ」


 ボールはネットのギリギリ上を通過し、一直線に秋へと向かう。

 最初から、狙いは秋だったのだ。


「お前のことだ。そう来るとわかっていたぞ!」


 さっきとは違うズドンっと重い音を上げながら、秋はそのボールを前にいる私に向かってトスした。そして、


「秋ーーーッ!!!」

「あたしに任せろーーーーーッ!!!」


 私が放物線を描くようにトスすると、頭上から落ちてくるそのボールをジャンプした秋が……


「はぁぁぁあああああああああーっ!!!」

「なに……ッ!!?」


 秋が放った強烈な一打は、真っすぐと相手コートに叩きつけられた。


「………………っ」


 自分のスマッシュと遜色がなかったことに、目を丸くしたつばさ。


「……フッ。面白い」


 ボールの行方を追ってから秋の方に体を向けると、真っ直ぐ進んでネットの前で立ち止まった。


「………………」

「………………」


 ネット越しにぶつかる、二人の燃えるような瞳。

 見ているだけで汗が出てきたそうだ。


「勝負は、まだまだ始まったばかりだっ」

「フフフッ。……いいだろう、受けて立つ!」


 そして再開される、二人の闘い。


「オッッッラァァァアアアアアーッ!!!」

「はぁぁぁあああああああああーっ!!!」


 燃えている二人を止められる者など、この場にはいなかった。

 その激しい打ち合いは、いつしか体育館にいた全ての人たちの視線を集め、


「……………………」

「………………………………」

「…………」

「………………」


 みなみな、瞬きをするのも忘れて見入っていた。

 その中で、ふと誰かが言った。「一体、どっちが勝つの?」……っと。

 正直、私ですらわからない。

 しかし、その言葉が発せられてから、僅か数分後。

 この闘いの『勝者』が決まった。それは…――


「ワタシに決まっているだろ!」

「くっ……このあたしが負けるなんてっ!」


 床に崩れ落ちると、秋は悔しそうに歯を食いしばった。だが、そんな時間もすぐに終わり、ゆっくりと立ち上がると、


「まぁいい。これはお前の得意分野だからな」

「ほぉー、随分と余裕だな」

「……ふっ。次はあたしの得意分野だからなにも問題はないっ!」

「いいだろう。だが、次もワタシが……勝つ!」


 バチバチ……ッ。


「ぐぬぬっ……覚えてろよぉぉぉ……ッ!!!」

「フンッ!」




 次回、ついに勝者が決定……するかも?

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