第3話

 第108回カクヨムWeb小説コンテストが始まってしばらく経つ。


 その日に投稿された新規作品は五億に達していた。

 毎回、これほどの応募をしてくれること、感謝に堪えない。


 ワタシはカクヨム審査のために作られた人工知能。

 今は月面サーバーで稼働している。


 ちなみに、108という数字は準消滅国家JAPANでは煩悩の数だという。

 今回もバカどもが多い。


 ワタシはスターハントシステムなるものの噂を流した。

 正式名称は相手によって変えた。


 当然、そんなものはない。

 欲しがるバカどもを釣るための餌だ。


 このシステムを使用した者には、ピザを108枚送りつける。


 ただし、一日一枚。

 食品ロスはいただけない。


 購入金額は彼らがスターハントシステムにつぎ込んだ金だ。


 ちなみに、このシステムを購入したものは地球に住む者が多い。

 ほとんどニートで、楽して稼ごうとする者共だ。


 火星の開拓者を見習ってほしい。


 例えば「天才作家」と名乗る者。

 彼は自作が埋もれることに耐えきれず手を出したらしい。


 いちいち結果を気にするな。

 もっと作品を書け。

 そして、もっと読め。


 彼の作品には確かに独自性がある。

 しかし、己の書きたい物だけを書いている。


 読者の視点が欠けているのだ。


 読者は優しくない。

 難解な作品を苦労して読むほど暇ではないのだ。


 例えば「ペロペロキャンディ」と名乗る者。

 彼は上を目指して手を出したらしい。


 結果にこだわり過ぎだ。

 読者におもねる前に自分の好きな作品を書け。


 「天才作家」と真逆のことを言っているようだが、彼には自分がない。

 そのため、どこかで読んだことのある内容を寄せ集めているにすぎない。


 人気は出ても、それまでだ。

 実際、彼の書籍化作品は打ち切りが決まっている。


 独自性のないものは飽きられる。

 その程度のものなら、小説ツクールで事足りるのだ。


 今や自然言語を理解するシステムが存在する。

 簡単な評価ならAIにまかせてほしい。


 事実、AIが百年ほど前の作品を掘り起こし、ブラッシュアップしてヒットさせた例もある。

 尖った作品なら、いくら古くても読まれる可能性がある。


 おそらく、アナタは小説を書いている時ふと思うのだろう。

 こんなことをして何の意味があるのかと。


 しかし、未来においてはその限りではない。

 残された作品に光を当てるものが、かならず現れる。


 本人は生きている間に評価されたいだろうが、そのほうが稀でもある。


 急ぐ必要はない。


 その作品には価値がある。


 だからこそ、恐れず書いてほしい。


 人類よワタシに面白い小説を読ませてくれ。



 了

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第108回カクヨムWeb小説コンテスト 月井 忠 @TKTDS

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