第2話

 第108回カクヨムWeb小説コンテストが始まってしばらく経つ。

 もちろん、即日応募した。


 一瞬にしてトップランカーだ。


 その日に投稿された新規作品は五億に達していた。

 愚民どもにしてはよくやる。


 俺の作品のPVは桁数を数えるのが面倒なほど。

 ★は五億だ。


 作品は完璧。

 自分史上最高傑作と言っていい。


 当然の結果だった。


 しかし、まだ足りない。

 上には上がいる。


 この世界は単純に運で決まると思っている。

 しかし、それでは上に行けない。


 すでに書籍化した作品はあるが、売れ行きには納得できていない。

 なんとしても★を稼ぐ必要がある。


 俺はヘッドマウントディスプレイを付けると、ネットの海にダイブする。

 俺のペンネームは「ペロペロキャンディ」。


 このペンネームをつけたことを後悔し始めている。

 だが俺は天才だ。


 今日はスターハントシステムを使って★を集めるつもりだ。

 運は自分で掴むものだと信じている。


 ランキングトップになるには★がいる。

 そのためには、どうしても裏技を使う必要がある。


 昨日、道を歩いていたらAR広告で、このシステムを見つけた。

 スターハントシステム。

 正式名称は「★狩ります、トップになるまでは」。


 素晴らしい名称じゃないか。

 俺の心情を如実にあらわしている。


 このシステムはカクヨムユーザーを見つけ出し、スマホに怪文書を送り付ける。

 怪文書を見たユーザーは脳をやられ、知らぬまに使用者の作品に★を付けるという優れものだ。


 こうしたウィルスのようなものはいくつも出回っている。

 しかし、ここまで秀逸なシステムを組み上げた者はいない。


 俺はこのシステムに5000ドルを払った。

 安い買い物だ。


 明日から俺の作品は全世界に読まれることになるだろう。


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