第108回カクヨムWeb小説コンテスト

月井 忠

第1話

 第108回カクヨムWeb小説コンテストが始まってしばらく経つ。

 もちろん、即日応募した。


 一瞬にして埋もれた。


 その日に投稿された新規作品は五億に達していた。

 埋まるのも納得だ。


 未だにPVは一桁。

 ★にいたっては0だ。


 作品に不備はない。

 むしろ、自分史上最高傑作と言っていい。


 なのに、なぜだ。


 トップランカーはすでに★を八億稼いでいる。

 何が違う?


 この世界は単純に運で決まると思っている。

 しかし、それでは納得できない。


 書籍化するまでは死ねない。

 なんとしても★を稼ぐ必要がある。


 俺はヘッドマウントディスプレイを付けると、ネットの海にダイブする。

 俺のペンネームは「天才作家」。


 自分が言うのだから間違いはない。

 俺は天才だ。


 今日はスターハントシステムを使って★を集めるつもりだ。

 運は自分で掴むものだと信じている。


 いくつかの★を手に入れれば、この作品の素晴らしさに皆、気づいてくれるはずだ。

 そのためには、どうしても裏技を使う必要がある。


 昨日、道を歩いていたらAR広告で、このシステムを見つけた。

 スターハントシステム。

 正式名称は「★狩ります、書籍化するまでは」。


 素晴らしい名称じゃないか。

 俺の心情を如実にあらわしている。


 このシステムはカクヨムユーザーを見つけ出し、近くの電子機器から怪電波を発信する。

 その電波を受けたユーザーは、知らぬまに使用者の作品に★を付けるという優れものだ。


 こうしたウィルスのようなものはいくつも出回っている。

 しかし、ここまで秀逸なシステムを組み上げた者はいない。


 俺はこのシステムに5000ドルを払った。

 安い買い物だ。


 明日から俺の作品は全世界に読まれることになるだろう。

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