第4話
「ユエの羽をリリアが身につけていたものに縫い付けてどうするんだ?」
「もしかしたら、彼女を探し出すのに何か使えるかと思ってね」
「あっ……」
レイウェンの言葉の意味にテイラーが気づいたようで、声を漏らす。
「なに、テイラー。あんた、何か知ってるの?」
目ざといサラがテイラーに顔を近づけた。サラから離れようと後ろに下がりつつ、テイラーがこちらへ話してもいいのかと目で問う。レイウェンはゆっくり頷く。
「えっと、確か前に本で読んだことがあるんだけど……。守護神の身体の一部を主人の身に着けていたものと一緒にすると主人の元へと戻るとするっていう伝説があって」
「五百年以上も前の話だから、本当にそんな力があるのかは分からないけど、やってみる価値はあるだろう?」
「確かにな。ユエの羽なら、リリアの元へ戻ろうとするかもしれない」
≪もしかして、アイツ、それを見越してわざと羽を落としていった……?≫
カルの言葉に、皆が驚いて顔を見合わせる。
「ユエならやりかねない。頭の回るやつだしな」
エドワードの言葉にレイウェンも頷く。
リリアを見つけ出すためだったら、できることはどんな手を使ってでもやるつもりだ。
彼は椅子から立ち上がり、全員の顔を一人ひとり見つめる。
「必ず、リリアをダンから連れ戻すよ」
「当たり前だ」
「言われなくても、俺がリリアを連れ戻すさ」
「もちろん! まだ、聞きたいことや話したいこと沢山あるし!」
「ぼ、僕もリリアに見せたいものがあるんだ……」
それぞれの思いを口にし、全員が自然と円陣を組む。手を重ね合わせ、目線を合わせる。
「まずは、ダンの居場所を突き止めるところからだ」
レイウェンの掛け声に合わせて、一斉に声が上がる。
それぞれが部屋の窓から出ていくのを見送ったタイミングで、ドアがノックされた。
「レイウェン様、ミリアです。先ほど頼まれたものをお持ちしました」
ミリアのハキハキした声が扉の向こう側から聞こえ、入るように伝えるとドアが遠慮がちに開かれた。
彼女は会釈をし、部屋に入ってきてレイウェンのそばへ歩み寄る。そっと手にしているものをテーブルに置いた。
「リリア様の身に付けていた物に縫い合わせたものになります」
「ありがとうございます。さすが、ミリアさん。仕事が早いですね」
レイウェンは、テーブルに置かれたハンカチを手にする。薄いピンクの使い古された様子のハンカチだったが、しっかりとした生地で作られていた。端の方に羽の刺繍がある。おそらく、ユエの羽を縫い付けたものだろう。
「素晴らしい出来ですね」
「このような形でよろしかったでしょうか」
「はい、問題ないです」
「よかったです。他にもリリア様のためでしたら、私にできることは何でもいたしますので何なりとお申し付けください」
あまり表情には出していないが、リリアのことが心配でたまらないのだろう。
ミリアはいつもより固い表情で、レイウェンを見つめる。安心させるために、羽の使い道をミリアにも話す。
「これがリリアの居場所を教えてくれる鍵になると思います。必ず見つけ出しますから」
「はい。リリア様がいつでも戻ってこられるように、暖かい物などを用意してお待ちしてます」
背筋をしゃんと伸ばし、レイウェンへ信頼の眼差しを向けつつ、ミリアは部屋を後にした。
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