第6話
「えっと……、あなたは?」
「あたしは、サラ。ソルム・ティ・サラっていうの。アイリスさんが治めるハウ国の隣国、タナ―国の次期女王様よ。植物と土使いなの。で、この子はグリ、地龍の守護神だよ!」
彼女の肩に乗っている小人が小さく頭を下げる。よく見ると頭に小さな木が生えていて、とても可愛らしい。
≪は、はじめまして……、リリアさま≫
体が小さいからか、声が高く癒しボイスだった。どうやら、恥ずかしがり屋のようだ。サラの二つに結ばれた長い髪に隠れるようにしながら、こちらを見ている。
一方のサラは、元気一杯で少し子供っぽさがある物怖じしないタイプに見える。二人の組み合わせは、正反対で面白いペアだ。
失礼がない程度に二人を観察しながらも、リリアも挨拶を返す。
「初めまして、サラさんとグリさん。私はアルバード·リリアと言います」
「サラでいいよ。あたしの方が一個上だけど。リリアのことは知ってるよ。レイウェンから聞いてる。記憶がないんでしょ?」
「え、ええ。そうなの……」
「まっ、気長に思い出していくのがいいんじゃない? 無理は身体に良くないし」
言い方は雑だが、リリアに対して思いやりのある言葉だった。そういうタイプは、嫌いではない。むしろ気が合うタイプだ。
「ありがとう。よろしくね」
微笑みながら握手を求めて手を差し出すと、サラは照れたようにそっぽを向いた。ツンデレのようだ。
レイウェンが最後の水色の玉を手渡す。
「これで最後だよ。久々に六神全員が揃うな」
レイウェンから玉を受けとり、中を覗いてみる。
「クウリュウ?」
呟くと同時に空模様が変化した。さっきまで明るかったのがどんよりとした曇り空になり、木々がざわつき、鳥やリスなどの野生動物達が姿を現し始める。リリアの周りに彼らが集まり、それぞれに体をすり寄せたり、肩に乗ってきた。
野生の動物と触れ合えるとは思ってもみなかったリリアは、驚きつつも彼らの身体をそっと撫でてみる。撫でているうちに、やがて空から一筋の光が射す。その光が当たっている所を見ると、大きなネコの背に少年が乗っていた。ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
「や、やぁ、リリア。ぼ、僕、シエロ・ネぺ・テイラーって言うんだ。この子はクウ。僕は天候使いで、あと特技は動植物と会話ができること、です」
サラと同じようにリリアと年が近いであろう少年は、緊張しているのか、小さい声で囁くようにつぶやく。
「初めまして、テイラー」
優しく微笑みかけると、照れたようにもじもじしながら、俯いてしまった。
「テイラーの国は、あたしの国の隣国でシエル国に住んでいる次期国王よ。彼はリリアの一個下であたしたち、幼馴染なの」
恥ずかしがって話さなくなってしまったテイラーに代わり、サラが補足してくれる。
全員の顔ぶれが揃うと五人がリリアの前に整列した。
「これで全員と顔合わせが完了したね。改めて、リリア。我が光の一族へようこそ!」
彼の言葉を合図に、どこに隠れていたのか、彼らの一族らしき人々が一斉に拍手と共に姿を現し、賑やかになる。
「今日は、リリアの歓迎会パーティーも兼ねているから、みんなにも来てもらったんだ」
レイウェンはリリアの手を取り、それぞれの一族の挨拶に回る。サラとテイラーのご両親はリリアの姿を見て、涙を流して生きていることを喜んでくれた。つられて、リリアも少し涙ぐんでしまう。
一通り挨拶を済ませると、いつの間にかモルガン家に遣えている従業員総出で、パーティーの用意をしてくれていた。レイウェンのエスコートで席に案内されて、歓迎会が始まった。
用意された食事をみんなで囲みながら、それぞれが思い思いに楽しいひと時を過ごす。
サラとテイラーがすぐに近くに来て、自分たちのことやリリアのこと、六神についてなどをたくさん話してくれる。
アイリスは、エドワードとレイウェンと飲み比べを始めていた。ミリアは、あのアーチを手掛けた庭師に会えたようで、熱心に何やら話し込んでいる。
≪リリアー、こっちで話そう≫
≪フライ、独り占めするな≫
≪ぼ、ぼくもお話ししたいです……!≫
食事も進み、談話も弾んでしばらくすると、リリアはフライに呼ばれた。
フライ、カル、グリに引っ張られるようにして近くの木に行き、根元に座る。近くでは、クウが横になっていた。
「クウ、初めまして。これからよろしくね」
≪よろしく、リリア。一応、私がこの六神の中では、最年長になるんじゃよ≫
声は若く聞こえるが、話し方は少しおばあさんのようだった。リリアがそっとクウの背中を撫でると、尾で顔周りをふさふさと撫でられる。気付くとユエとハクも集まっていて、六神が勢揃いしていた。
そのとき突然、急に辺りが暗くなり始め、木々がザワザワと一際大きく音を立て始めた————。
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