第5話
玉を手にしたまま、彼のそばへ駆け寄る。彼は腕を広げた。その腕に飛び込む手前で、リリアは立ち止まる。
「あれ、ハグしないのかい?」
「これは一体、何をしようとしているのですか?」
少しキツめの声で問う。実は、一人でいるのが少し怖かったのだ。すぐにユエが現れたので、怖さは和らいだが、レイウェンの姿を見るまでは安心できなかった。
彼はリリアの表情を見て、降参したかのように両手をあげる。
「君に他の守護神とその主に会ってもらおうと思ってね」
「玉を使って?」
「そう。一応これも儀式でね」
「儀式……?」
彼は詳しく説明してくれた。どうやら、初めて六匹の守護神全員に会う時は、同じときに六匹を集めないといけないらしい。特にまだ一度も会ったことがない者がいる場合は、必ず全員に挨拶する必要があるとのこと。
今回リリアは、残り二匹に会えていないので、この儀式が行われることとなったようだ。
「他のみんなも呼んでくれるかい?」
「分かったわ」
テーブルに置いてある残りの玉を見る。まずは赤色の玉だ。
「火龍」
呟くと玉が炎に包まれて、炎の立て髪をした馬の背にエドワードが乗って、姿を現した。
「やぁ、リリア。今日のそのドレスも似合っているね。まぁ、俺が贈ったドレスだから、似合うのは当然だけどね」
「このドレス、エドワード様からの贈り物だったのですか? ありがとうございます。とっても気心地がいいの」
「気に入ってもらえて嬉しいよ」
リリアの言葉に上機嫌になるエドワードにレイウェンが冷たい視線を向ける。
エドワードはその視線に気づき、得意げに鼻で笑った。静かに視線をバチバチと交錯させている二人を気にしつつも、次に白色の玉を手にとる。
「風龍」
少し強めの風が吹き、白い鳥が空から降りてきた。その背にはアイリスが乗っている。
「リリア、また会えたな」
「アイリス様」
リリアは、アイリスたちにお辞儀をする。フライが嬉しそうにリリアに頬ずりをした。ふわふわな羽毛に手をうずめて撫でてあげるとフライが気持ちよさそうに目を細める。
ひとしきり撫でた後、テーブルの上へ皆の視線が集まる。残るは二つ。何の力を持っている者かも分からない。だが、推測するに月·水·火·風ときたら、地(土)が来るだろう。あと一つが分からない。
二つの玉の色は、緑色と水色だ。緑色は、おそらく地で合っているだろう。もう一つは、空だろうか。
皆の視線がある中、緑色の玉を手にして中を見る。
「地……龍?」
読み終えると同時に、木々がざわつき始めた。だんだんと足元の地面が盛り上がっていき、土から草蔓が伸び始める。その蔓がどんどん太くなっていき、やがて一本の木になった。木を見上げると枝に女の子が腰かけているのが見えた。
「あんたが、リリアね。よろしく!」
大きな声を上げながら、少女が肩に小人のような子を乗せて地面に降り立つ。
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