k.o.iの侵略

やっぱりピンク

k.o.iの侵略


 世界統一団体k.o.iの代表n.oはインターネット上で声明を発表した。

「初めまして、世界のみなさん。私たち世界統一団体k.o.iは今日、世界統一を開始し、そして今日、完結させます。なんて言っても信じてもらえないでしょう。でしたら一時間後、とりあえず六十カ国を統一してみせましょう。ではまた。」

 一時間後、n.oは六十カ国の統一を発表した。

「たった今、六十カ国を統一しました。信じてもらえたでしょうか。あんまり時間をかけても仕方ありません。でも、すぐに統一するのはかわいそうですね。では二時間後、全世界の統一を完結させ、今ある世界も完結させます。ではまた。」

 世界統一まで二時間。

 その映像は瞬く間に全世界で報道された。報道によると、統一された国では武器や核兵器は一切使用されておらず、ただ国民全員が倒れているらしい。

 地球全体が混乱し、政府さえもが機能しなくなった今、正体不明のk.o.iもn.oも、誰も止められないだろう。

 

 世界統一完結までの時間、僕が考えたことは一つだった。

 美月に告白することだった。

 すぐに電話をかけ、僕たちがいつも放課後に寄っていた公園に呼び出した。


 美月を待っている間、n.oはさらに声明を発表した。

「みなさん、いかがお過ごしですか。言い忘れていたことがありました。私たちがどうやって世界を統一するのか、気になりますよね。それは、みなさんの心を無くすことによって、です。人間の心を無くし、私たちがコントロールする。そうやって世界を統一します。コントロール完了までには準備時間が必要なので、六十カ国の人は眠っているんですよ。あ、私急がなきゃ、準備しなきゃ。ではまた。」


 美月は集合時間より二十分遅れてきたが、人生初、そして人生最後の告白に緊張していた僕にはちょうど良かった。

 世界統一まで四十五分。

 ブランコの横に置かれた木のベンチに隣り合って座った。

 僕は何気ない会話を続け、世界統一完結の直前に美月に告白し、世界が終わる瞬間を一緒に過ごそうと考えていた。その計画通りに時間は進み、その間、美月も楽しそうに笑っていた。

 このまま世界が終わるなら幸せだと思った。


 世界統一まで三分。

 僕は立ち上がり、座っている美月の前に立った。

「美月、言いたいことあるんだけど、いい?」

「うん、いいよ。なんでも聞くよ。」

 立ち上がった美月を見て、さっきまであまり顔を見ていなかった僕はさらに緊張した。

 かわいい。かわいすぎる。たぶん今日、メイクしてる。髪も違う。真っ直ぐ下ろしてる。しかも制服じゃない。真っ黒な服。脚ながっ。体ほそっ。かっこいいし、やっぱりかわいい。

 そんな緊張を越えるために、人生最大の勇気を振り絞った。

「美月、俺、美月が好きだ。本当に好きだ。もうすぐ世界が終わる。その時、世界が終わる時に、一緒にいてほしい。」

 美月は笑っていた。幸せそうに笑っていた。

 僕たちの幸せな世界の終わりを、僕は幸せに思った。


「n.o」

「え、あ、そうだよな。やっぱりダメだよな」

「そうじゃなくて」

「あ、あそーいうことか。あの代表者の名前」

「ううん、そうじゃない」

「え、」

「私の名前」


 世界統一まで三秒。

 三、二、一。

「ではまた。」


 世界統一団体k.o.iの代表n.oは世界統一を完結させた。

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