奥手男子はイチャイチャしたい!

ひりり

ラブのないコメでもラブコメにはいりますか?

国立明星学園こくりつみょうじょうがくいん。2年A組 三本みもと はん


彼のことを問えば皆口を揃えて


「成績優秀」「スポーツ万能」「秀才」


などの人によっては違うが様々な褒め言葉を送るだろう。そんな周りからの人望も厚い完璧な彼にもひとつ欠点があるらしい。




「あー、今日もいい天気…ですね?」



彼女に対してコミュ障になるほど奥手すぎるところだ。



そんな彼の彼女とのラブラブライフを手に入れるまでのストーリーをお楽しみください。






4月10日、早朝。

桜通りといわれる並木道をあるいている俺は心をウキウキさせていた。なんせ今日は始業式。久しぶりに学校があるとこんなにも心が浮つくのかと改めて思う。


俺、三本みもと はん国立明星学園こくりつみょうじょうがくいんに通う2年生になったばかりだ。


国立明星学園。国民であれば1度は耳にしたことのある日本トップレベルの高校だ。全国の中からの受験者が今年は特に多く万人レベルの受験者数だったがその中の300の座席を奪い取ったうちの俺は1人である。


我ながら幸運だと思うものだ。明星学園は学力はほぼ関係ない。活動実績やその人自身の能力を見定め合格したものだけが入れる。そのため実に運ゲーと言うやつなのだ。


「あ、帆じゃん。久しぶり。」


と俺に肩を組んできたこいつは成本なりもと 風磨ふうまだ。風磨は俺の秘密を知る3人の中の1人であり、良き理解者だ。


「久しぶり、春休みまじ暇だったわ。」


とたわいのない話を挟みつつ挨拶を返す。彼は真っ直ぐな性格で凄く顔はいい。まつ毛が長くきめ細かい肌。人との距離が近いため女子からの人気が高い。だがだらしがないのが玉に瑕だ。


そんな彼と学校に着くまでに近況報告を兼ねて話していると風磨が急に声を上げた。


「あ、いるよ。」


興奮気味に言われ一体何かと思い目線をあげると


━━━━俺の彼女がいた。


彼女は家が近い友達と登下校を共にしているらしく春風に髪をなびかせながら歩いていた。笑っている姿が可愛らしいなどと無意識に思い目が釘付けになってしまった。すると彼女がこちらの視線に気がついたのか目が合った。


慌てて目をそらそうとしたが彼女はこちらを見て嬉しそうに微笑んだ。



してやられたと思い風磨を見るとスゥッと目を細めてニヤニヤしている顔があったので軽くデコピンしてやった。


「声がでけーよ、ばか」


自分でも顔が赤くなるのが分かり重症だと痛感する。これでもまだ半年彼女と付き合っていて周りにバレていないのがすごいと褒めたたえたえてほしいほどだ。


だが俺はつるんでるやつの中でも特段珍しい方で俺には彼女がいない。…という設定になっている。

俺にも実は既に彼女がいるのだ。この事実を知っている人は3人。何故こんなにも少ないのかと言うと


「いやでもお前彼女に奥手すぎるって言うか…照れ性なの?」


「いや、まぁそういう訳じゃないんだが」


くそ、痛いところをつかれてしまった。


そう。俺は重度レベルの奥手なのだ。だからデートどころかリアルで話すことはほとんどない。


それって付き合ってる意味あるの?と思う人はいるかもしれないが彼女も急かすような人では無いので気長に待ってくれている。だがそれではダメなこともわかっているので少しいやだいぶ焦っているのだ。


「まぁでも、なんだか帆たちを見てると老後のカップルみたいでほのぼのするよ」


フォローのつもりで言ったのだろうか。すごく心に刺さったので今度はキツめにデコピンしておいた。


「そんな怒んなって、まぁなるべく俺もラブコメに近づくように頑張るからさ」


「余計なお世話だわ しかもラブコメで既成されているカップルから始まるのは見たことがないがな」


軽く受け流して言うと、えーいいと思ったのにー などとボヤいているため無視した。なんせ俺はラブ&コメなんてものは望んでいないからな。


俺が望むのはラブ&ラブ!!


だがしかし今の現状ではコメ&コメになってしまっている。さらに言うとそのコメディの部分は八割が男で構成されている。



「全く困ったもんだ」


ため息混じりに呟いた言葉は澄み切った春の空へと消えていってしまった。

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