附録

言ノ葉案内

【みすらさま】

 正式には翠良みすら龗神おがみのかみ。一千年以上前に、どこからかやって来て翠良尾瀬(当時はただの「尾瀬」)に棲み着いた渡来神。

 龍神であるとされ、御前ごぜんたきの滝壺とつながる地底湖に座す。


【翡翠姫】ひすいひめ、かわせみひめ

 みすら神が村人に贈り物として差し出した娘。上半身は美しい少女で、下半身は魚身の人魚。その血液には病や傷をたちどころに癒やす力があり、村の宝となった。

 しかし旅の行者ぎょうじゃ・乾優婆塞が「肉を食えば不老不死となる、死んだ者も生き返る」と村人を煽動したため、殺害されて食われてしまう。

 なお、翠良尾瀬には翡翠の鉱脈がある。


【乾優婆塞】けんのうばそく

 旅の行者。みすらおがみ神社の神主を務める、裏巽うらたつみ家の先祖。

 翡翠を食べた村人が中途半端な不死に苦しむ中、龍神みすらと交渉し、人魚供養祭を七月の末に行うことと取り決め、事態を収めた。


【人魚供養祭】にんぎょくようさい

 かつて翠良尾瀬の人々が、翡翠姫を食べた罪をつぐなうため、姫の血肉、または「人魚実」と称する蛇の卵を滝壺に投げ入れる儀式。現在は元来の儀式部分は「ついぐなの儀」と分けて呼ばれ、単なる夏のイベントとなっている。


【にくべと】

 主に肉土、肉泥と書く。人魚の肉を口にして、中途半端な不老不死を手に入れた者のなれの果て。その姿はつるりとした肉袋(子宮)で、中に胎児が入っている。

 土の中に潜って隠れ、自分の分身である胎児を食い、また新しく産み、食い殺すという輪廻を何百年も続けた果てに、袋を破って「いを」と化す。


【いを】

 偽人魚をはばかって言う語。「人魚」を「にんべん魚」、「イ魚」と書き換えてこのように呼んだ。「にくべと」がより不老不死に近づいた存在。

 しかしまだ出来損ないでしかない。


【人魚実】にんぎょざね

①かつて翠良尾瀬の人々が食べ、いまだその血の中に残る翡翠姫の実(血肉)。

②上記の翡翠姫の血肉を、より濃く受け継いでいる家々。

「人魚の血を引く家」の意。その多くは廃れ、現在血を保っているのは裏巽家の他、七つのオヤカタサマのみである。


【人魚實】にんぎょざね

「にくべと」が「いを」になるのを見て、それを守り神として祀ったもの。基本的にはオヤカタサマ七家のものを指す。「いを」には人食いと共食いの性質があるため、自分たちの身を守るため利用した。

 裏巽家は龍神みすらを直接祀るため、人魚實はいない。


【オヤカタサマ】

 人魚実②に同じ。

 願施崎がぜざき垂田穂たるたほ生口いたこ来足きたり棗ヶ岡なつめがおか梲鳩つえばとよはで七つ。


【三つの神具】

 乾優婆塞が龍神みすらと交渉し、人魚供養祭が定まった時に授かったもの。

 翠良尾瀬に広がった翡翠姫の血肉を回収するための道具で、「にくべと」や「いを」を退治する武器となる。

・翡翠の鈴(警報)

・赤い蝋燭(見えないものを照らす)

使鬼しきせん(触れられない物を打つ古銭)

 の三つ。

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