幕間 怪異こぼれ話

あかかおんについて

 あくにん たべる あかかおん

 あくにん へって おなかがぐう

 ついには ぜんにん たべちゃった

 のんのん のの観音さま こらしめた

 のんのん ののさま おがみましょう

 あくにん いれば あかかおん

 いいこにしないと たべちゃうぞ


(仏教童歌『あかかおんのうた』(作詞:小駒こごま伊五郎いごろう 1932年)



③あかかをん

 わるい人間にんげんにバチをあてるために、観音かんのんさまからつかわされた。まっかないぬくびみっつあつまってそらび、とてもすばやい。うそをついたり、ひときずつけたりしたときに、「あかかをん!」とほえるこえがこえたら、すぐあやまろう。


小村谷こむらたに瑞薬ずいやく 1974年著『多摩こども妖怪図鑑』より)



〝アカカオン〟

 阿賀観音または赤ヵ怨。火の怪。夜になると里を飛び回る怪火で、目撃例は広範におよぶ。三つ一組の火球で、火の玉には苦悶する男性、もしくはニホンオオカミに似た獣の顔が浮かび、不明瞭なうなりを上げる。一説では念仏であると言われ、行き倒れたお遍路の霊と考えられた。火事や焼死を引き起こし、非常に危険。


藤森ふじもり晴之助はるのすけ 2012年著『怪異玉手箱 八王子編』より)



あかかおん【赤観音】

 多摩地方に伝わる、悪人を好んで食らう赤い獣。名はその吠え声から。

 元は子供を脅すために作られた妖怪と考えられるが、現在も八王子市内に小さなお堂が残り、全身を赤く塗られた観音像がまつられている。

 伝承では、人々はかつてあかかおんを恐れ悪事を謹んで生きていた。

 しかし食らう悪人がいなくなったあかかおんは飢えに苦しみ、次第にどんな小さな罪でも見境なく食い殺し、ついには旅の僧侶に鎮められたとされる。

 だがこの伝承は近世の創作という説もあり、その誕生や、観音像を赤く塗った理由には不可解な点が多い。

 当地では、参詣さんけいして悪人の名と罪状を告げれば、その者に罰が下ることで知られており、「丑の刻参り」に似たおまじないを試す者もいる。


矢土やど真清しんせい 1963年著『関東の民俗と信仰』より)

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