道徳獣

怪人トウフ男

第1話 下書き

どんな人間も心にケモノを飼っている

きっとみんな 気づいていないだけ……



ビビビ! チュドーン!

シゲコは父親と一緒にTV番組をみていた。(父親の膝をイスにしている)

ウルティメットマンが怪獣に光線を浴びせた。

「つよーいっ!

わたしも『正義の味方』になりたい!」

覚えたての言葉を使いたいお年頃。

「いいかいシゲコ。『正義の味方』は『正義そのもの』ではないんだよ」

シゲコの視界には父親の口元だけが見えている。

「正しさを使うときは、優しさも忘れないでいてね」

父親の言葉は抽象的で理解できなかったが、言葉に確かな愛情がこもっているのを感じた。

シゲコはその愛情に応えようと思った。

「うんわかった、お父さんーー」

ここで初めて映るお父さんの笑顔はツルッパゲ

(チーン)

お父さんの笑顔は遺影の笑顔だった。

「そっか……お父さん死んじゃったんだ」

はらり。

父親の遺影からリボンが外れる。

葬式はとっくに終わっている。

遺影の父親が何か言いたそうにする。

なーに? お父さん。

「それよりシゲコ。学校はいいのか?」


そこで目が覚めた。

時計を確認して絶叫する。

「どーして起こしてくれなかったの!?」

寝覚めの悪い夢も見るし、とホロリ。

「あんた六年生になったんでしょ。ひとりで起きられるようになりなさい」

エプロンで手を拭きながら母は言う。(エプロンで手を拭くタイプ)

母親はカッターシャツにエプロン。

これから出社のため、汚さないようにエプロンをしている。

「そーだけど! 今日だけは起こしてくれなきゃ駄目じゃない!」

「うおお」

ぱくぱくぱくっと朝食にがっつくシゲコ。

行ってきます!と大きな声

いってらっしゃいと母親。(後ろから声がかかる)


「新学期初日から遅刻とかシャレになんないよ〜」とシゲコが走る。

「よしよしっ! このペースだとギリギリ間に合うぞ!」とポコ美。

(ボーイッシュな少女)


交差点でぶつかる二人。時が止まる。


「イテテ…」とシゲコが起き上がる。

「どこ見て走ってるんだドアホー! おニューの靴にざっくり傷が入ったじゃないか! どうしてくれるんだ」

「ごめんなさい」

「ごめんで済むか! 弁償だあ!」←隣に魚っぽいなにかがでてくる

「いや、その理屈はおかしい。まず広路優先! 過失割合はあなたの方が大きい。そして、だいたい靴なんて直ぐ傷だらけになるもんでしょう」←隣に虫っぽいなにかがでてくる

男勝りの、少年のような少女は。

「それは自動車の場合だろ……やっぱり、あれで白黒つけるしかないな」

ニヤリと不敵に笑う。

「【道徳バトル】だ!」(ガラガラピシャーンと雷エフェクト)

「望むところだ。受けてたとう!

……といいたいところだけど」

「おっとっと?」

「急いでるからまた今度。

とりあえずこれがメールアドレスなんで。

じゃ!」

「なんだぁアイツ」



ところ変わって授業風景。

ザマス系のメガネをかけた先生。


「この街では個人の道徳心が実体をもちます。

それを、みんなは【道徳獣】と呼んでいます。

いつからそうなったのかはわかっていません。

わかっているのは、

道徳獣は持ち主の心のカタチによって様々な姿をとるということ。

【ムシ型】の獣は特殊だということ。

それから……

ここまでで何か質問はありますか? ばつ丸くん?」


窓際で、うとうと微睡んでいた素行の悪そうな少年は、

先生に急に指名されて、ちょっとまごつきながら返答する。

「エッ、俺? じゃあ……ムシ型の獣はなんで特殊なんですか?」

「他の道徳獣と異なっているからです。……みんな質問はもうない?」

「答えになってないよ先生。どう異なるんですか? ムシ型をもってる人はどんな人なの?」

「……」クラス中の視線がばつ丸に集まる。クラスの雰囲気が一気に冷たくなる。

「ばつ丸、お前マジかよ」「それを聞いちゃうか…」「な? あいつはデリカシーがないって言ったろ」「本気じゃないよね? ばつ丸くんは、そんな子じゃないって私、信じてるから」「あれって冗談なの?」「冗談か。そりゃそうだよなー」「冗談だとしたら尚さら悪いだろ」

「今の質問。委員長として見過ごせないな」

腕章をつけた学ランファッションの少年が、イスから立ち上がって言った。

「先生。道徳獣の特徴はあと一つ残っているよね。実地授業の許可をください」

「わかりました。説明するより実際に見たほうがみんなの理解も深まるでしょう」

「聞いているかばつ丸君。授業の続きだ。道徳獣の特徴みっつめ。道徳獣は……道徳バトルで戦わせることができる」

「わけがわからなさすぎる……」

ライオネルとイーグルが教室をとびまわる。(どったんばったんと、爪やキバが引っかかるたび、机を引き倒し、イスをおしのけて←没)

道徳獣は道徳獣としか干渉しないので、狭いところで暴れ回っても平気なのだ。

ちなみに目の届く範囲までしか動けない。

獣の体は、視界に映らない部分が消えるからである。

だから相手の獣は部分的に消えたり現れたりして見える。

高度なバトルになると、道徳獣のこの性質を生かした立ち回りが行われる。

教室の机やイスをすり抜けて動く。地面とは接触しているように見えるが、それは接触しているのではなく、地中は持ち主の視界から見えなくなるからである。

教師は静かに見守る。


道徳バトルにおいて攻撃は口撃である。基本的に。


静かなもんである。たまに重い一撃が入ったとき歓声が上がるくらいだ。

ばつ丸のもつライオネルは、実際つよい道徳獣だ。

「正しさは俺にもある!」



おお…ライオネルが押している。

「道徳バトルで優勢ということは、正しさが優っているということである。そして、オーディエンスがどっちに傾いているかを表す。


道徳バトルでは、オーディエンスによってバフがかかる。

沈黙している人間も含めると誤差はでるが、

おおむね、声援はそのまま道徳獣の力なのである。と考えていい。

ずるい。あんな多勢に無勢で。

「自分がされて嫌なことはやっちゃ駄目だろうが!」

「いや、だから、それがわかんねぇんだって! 少しは分かるように説明しろよ!」

「ムシ型の獣をもっている飼い主がかわいそうだろう!」

「かわいそう、かわいそう……って、俺はかわいそうじゃねーのかよ……。こんなに大勢によってたかって攻撃されてさ」

ポロッと本音がもれる。

気丈に振る舞っていたが、崩れ始める。

ポロポロと本音が溢れはじめる。

だが、これが意外と強い。道徳バトルにおいて。

本音が漏れるのも醍醐味である。


「ダメージ入ってるぞ!」

「効いたんだ!」

道徳バトルにおいて攻撃は口撃である。基本的に。

道徳獣にダメージが入ったということは、つまり、相手の道徳心が揺らいだということを意味する。


とうとう、見ていられなくなったシゲコはばつ丸に加勢。

委員長の加勢に入っていたクラスメイトたちをやっつけていく。



劣勢の委員長が本気を出す。

髪が逆立つ。

地味と言われたデザインから、中二病全開の見た目に変化する。


「なんだあれ」「羽が増えたぞ」「ちょっとバランス悪いな」

獣に左片の翼が生えた。もともともっていた羽と合わせて3枚である。

「ゲッヘヘヘヘヘァッ。もうゆるさねぇ!! 遊びは終わりだぶっつぶしてやるァア!」

…そして持ち主の性格も豹変していた。

「翼つき…!」

メガネをかけた少年がポツリと呟く。

「知ってるの(か)レン君!」

「うむ。聞いたことがある」

レン君と呼ばれた少年は本名レンブラント。

レンブラント君の説明パートが始まる。レンブラント君はこういうのが得意なのである。

「詳しい条件は不明だが、飼い主に何らかの素質があると道徳獣の体の左右どちらかに羽が生える。羽の生えた道徳獣は別格のパワーを得るという」神妙な顔をして。

(本人の変わり様には特に理屈はないんだ……)


勝負を決したのは。

決着は一瞬だった。

勝利したのは委員長のイーグル。つまり、対外的には委員長の正しさが証明されたということになる。

ばつ丸の獣は敗北しただけではなく、死んでいた。


道徳獣は飼い主の信念の表れ。

道徳獣を潰されるということは、飼い主が精神的な支柱を失うメタファーなのである。

道徳獣が「折られた」と表現する習慣はそこから生まれた。


道徳バトルは「信念の戦い」!

バトルの敗北は己が今まで培ってきた信念の否定。

己の信ずる正義の敗北を意味するなり。


バトルの勝利は……良いことばかりではない。手離しで喜べるほど無邪気なものではない。

ケモノは己の内なる獣性の解放ともいえる。

獣に引きずられると、どんどん攻撃的な人格になっていく。

道徳獣が力をつけるにつれて、飼い主も高圧的になっていく。

道徳獣が力をつけると、引き摺られて、飼い主もどんどん高圧的になっていく。


「シゲコは、あの気持ちがわからないんだ! 自分の道徳獣が潰されるということがどんなに屈辱的か! 何を意味するのか!」

クラスでよってたかって。

【飼い主】って呼ぼう。

変わり果てた姿に。

【マ界】

【マ世界】

「ばつ丸、再教育センター送りだな」

「ちょっとかわいそう…」

「あいつは間違ったことをしたんだ、当然の結果だよ」


(回想シーン)

シゲコが園児だったときの出来事。

せんせー。シゲコちゃんがたっくんを泣かしましたー。「明らかに道徳バトルの事後!」と先生が叫ぶ。

これぐらいの歳になると道徳獣が現れるのだ。それにしてもシゲコの道徳獣の顕現は早いほうだった。育つのも早く。同年代の子供たちのものより一足早く育った。シゲコは暴れまわった。ただのスタートダッシュという話。「●スタートダッシュの差がのちのち大きくなる感覚の話」

「シゲコさん、正しさはひとつだけじゃないのよ。たっくんにはたっくんの正しさがあるの。同じものを見ていても、座ってる場所が違うと違ったふうに見えるでしょ。正しさもいっしょ。人の数だけあるのよ。正しさは自分のものさしだけじゃなくて、いろんなものさしをもつこと。そうするとお友達にもっとやさしくなれるでしょ。仲良くなれるんだよ。」

「でも正しいことがいっぱいあったら、どうすればいいか分からなくなるよ」

「そのときは、悩みなさい。悩み続けなさい。悩んで苦しんで、おちつかずに不安定な状態に耐えられる強さをもちなさい。先生の好きなロックマンXもそうしてたわ」

ロックマンXがそうしてるならそれが良い方法なんだろう。シゲコはそう思った。


「……!」

シゲコはばつ丸を追いかけて走っていった。


シゲコを縛る呪いの言葉でもある。

ネガティヴケイパビリティな話


掃除が行き届いてます。

バラック小屋。国内有数のスラム街である。道徳力の低いやつらの吹き溜まり。

心なしか映画や漫画で悪役をやってそうな顔つきが多い気がする。

決意を新たにする。

「あれはひどい」

「打倒・委員長だ!」

ここで作品の目標が明確になる。

「でも、失った道徳獣をどうにかしないと…」


列に並んで、ばつ丸はしょっぴかれそうになる。

スリルドキドキハラハラ展開。

すんでのところでジョニーが騒ぎを起こして助かるばつ丸。



「よくない?」「まあまあかな」

「まあまあじゃない?」「いいわー」


MSAF(道徳的安全支援部隊)モラルセキュリティアシスタンスフォースと書かれた厳しい車両が貧民街に向かって走っている。

車内の運転席にはオッサン(本名)が一人。

助手席には裕福そうな見た目のイケメンが一人。

イケメンの名前はジゼンカ(本名)。

とある非営利市民団体の看板男。

本人は自分が看板に過ぎないことを理解している。

「好きものだねぇ。アカデミー卒のお坊ちゃんが、まさかこんな社会の底辺職を手伝いたいだなんて」

「底辺が上を支えているんです。地盤が脆いと建物は崩れてしまう。僕は地盤のことをちゃんと知りたい」

「そりゃ立派だ。立派だが、俺たちのことを知れば知るほど、きっと嫌になるぜ。立派な差別心が育って、お得意の道徳獣も弱くなる」

少し黙る。きっとこれがオッサンの本音なんだろう。試されていると思った。

「自分と関わりの遠い相手に寛容になれるのは当たり前です。でも、相手と直接利害が対立していたら寛容になるのは難しい。己の正義を振りかざしてしまう。それでも寛容になれるのが真の道徳心でしょう」

「真の道徳心ねぇ……」


「さあ並んだ並んだ! 道徳獣が死んだやつは名乗りでろ! 再教育センターにしょっぴくからな!」

お兄ちゃん。これなーにー? なんの行列ー?

道徳獣が死んだり殺されたりして、道徳心を失ってしまった人をインモラリストと呼ぶ。

ヤケになって殴りかかってくるインモラリストも多いので、危険な仕事なのだ。

「【インモラリスト】って知ってる? 道徳獣が死んじゃって道徳心を失った人をそう呼ぶんだ。彼等を再教育センターに連れていくのが僕たちの仕事。再教育センターはここら辺じゃ評判が悪くて、連れていかれたくないばっかりにヤケを起こして襲ってくる人も多いから危険な仕事なんだよ」

連れていかれるのは、大抵は道徳獣を失ったまま申告せず、何年もたってる者が多いが、中には昨日今日で自分の道徳獣を失った人もいて、そういう輩は精神が不安定で錯乱している。


必然、嫌われ役だ。でも誰かがやらなくちゃいけない。大事な役目なんだよ。


「あっちいけよ」

ネコ耳ロリコン病患者が列からひきずりだされ、

石を投げつけられる

群衆は次第に興奮してヒステリー状態に。

なんだなんだ

ネコ耳ロリコン病とは。

あらゆる差別が表向き解消された現代。

唯一おおっぴらに残された差別、それがネコ耳ロリコン病である。

その特異な外見的特徴から容易に判別でき。

この度の災害により被害にあわれた方にお悔やみ申し上げます。

「なんだその耳はふざけてるのか!」

申し訳ありません。以降同じようなことのないように対応策としてまず、

「なんだその耳はふざけてるのか!」

ヘルメットがかぶれません!

「なんだその耳はふざけてるのか!」

就ける職業も著しく制限される。

「こないで」「保育士にならないで」←こりゃ再犯率の高い性犯罪者の場合かな。


やめろ! やめてくれ!

どうしてこんな酷いことができるんだ。

「醜い……

人間の本性とはこんなにも醜いのか。」


山のような大きさの

二階建ての建物くらいの大きさのケモノが現れた。

「みんなケモノを出しな。再教育だよ」


「本来そんなに恐れる病じゃない。

感染力も低いし、日常生活で感染ることもない。

もし感染したとしても脳改造手術を受ければ治る。

差別をなくすのは知識と知恵……

だから必要なのは……『啓蒙』だよ」


脳改造手術なんてするお金があると思うか。

お姉ちゃんの大事な受験前なんだよ。ケモ耳ロリコン病にかかるわけにはいかないんだよ。




「兄ちゃん! 山のような道徳獣が貧民街のみんなのケモノを潰してるよ!」

「住んでる人みんなを片っ端から再教育センターに送ってる」

「そんなことが許されていいのか。明らかにそれは越権行為だ。やりすぎだ」

MBPD(モラルビーストポリスデパートメント)

MSAF(道徳的安全支援部隊)モラルセキュリティアシスタンスフォースは道徳獣のいなくなった人をセンターに連れていくのであって、道徳獣を潰してむりやりセンターに連れていくのは違法行為だ。MSAFの仕事を逸脱している。


見た目で判断するのか!

見た目で判断してるのはそっちもだろ!

むしろ人間は見た目にひっぱられると理解した上で行動したほうが。

ルッキズムもからむ


そこに通りがかったジョニーの【魔獣】と

『被害者暗黒拳』で追い払う。

なんだあれは? あの禍々しいオーラはなんだ。あれは本当に道徳獣なのか?

「なぜだ。奴の方が道徳力が低いのは明らかなのに。

なぜ勝てない」とジゼンカ退却。



強さの秘密を教えてください!

「……」

明日、同じ場所、同じ時刻にこい。

いなくなった獣をどうにかしてやる。

潰された獣がどうなるのか、どこへいくのか、教えてやる。






「僕の財布から抜き取ったカードを返してください」

「なんのことだ…? 大事なものを無くしたのか?」


「これがなんなのか、あなたは分かってるはずです」

アカデミーへの特別推薦状。この学校の卒業生は、一人一つずつこのカードが配られる。

カードを持っている人間は誰でも好きなときにアカデミーを出入りできる。

つまり、誰かひとり好きな人をアカデミーの後輩として迎え入れる権利をもつのだ。

道徳的な人を育てる学校だからできることである。特別措置である。

「返してくださらないのなら、今からあなたの道徳獣を潰しますけどいいですか? あなたも再教育センターにいきますか?」

節がギシギシとしなって音をだす。

「悪りぃが……なんのことだかさっぱりだ。俺には縁のねぇ世界だし…」

無知を装いながら、何を盗んだのか白状してしまっている。嘘をついた経験があまりないのだろう。嘘をつけない性分らしい。紛失した時間から推測してカマをかけたのだが、どうやら当たりだったようだ。ジゼンカの目がキラリと光る。

「どうしてこんなことをしたんでしょうねぇ。あなたの年齢ではとっくに出願資格を超えているでしょうに…」

暗に示す。家族も無事じゃすまないぞ、と。


「すまねぇ! カードは返す! 許してくれ!」

急激に弱腰になる。

「俺には娘がいるんだ! 娘をどうしても道徳アカデミーに入れてやりたかったんだ! あんたと同じ学校だ! 俺みたいな底辺職の給料じゃ、とても学費が払えねえ。

でも、ここらにある学校は底辺養成所みてぇなもんだ。ヤクが蔓延して、休み時間にはヤクの売人の勧誘がある。教師のやる気がなく、質が低い。ひでぇもんだ。通ってる連中はみんな道徳力が低い。当たり前だ。親もそうなんだからな。

このまま順当にいけば娘も底辺になっちまうだろう。他のやつらと同じように。俺と同じように。例にもれなく。それでも娘にだけは違う人生を送って欲しかった。

こんな掃き溜めをでていって、道徳力の高い伴侶をみつけて、幸せな家庭を気づいてほしい。まるっきり親のエゴだ。わかってる。でも、それが親心ってもんよ。


俺はここで育った。先祖はひいひい婆ちゃんの代からここで暮らしてる。

ここにいる奴らは、自分が不幸だったら幸福なやつに何をしてもいいと思ってやがる。だから毎日が足の引っ張りあいだ。俺はそんなやつらに嫌気がさして、こんな場所出ていきたいと思うようになった。でも俺も連中と同じことをしないと幸せになれねぇ。生きていけねぇ。だから、これが最後の悪事だと思って……。


(お金じゃなくて推薦状が欲しいバージョン)

「普通に娘さんの受験を応援するのではいけなかったのですか。アカデミーには返済不要の奨学金もあります」

「道徳力の低い親からは道徳力の低い子供が生まれる。俺の娘も、俺に似て弱っちい道徳獣しかもってねぇ。だから、だから、娘をアカデミーにいれるには推薦状でもなけりゃ駄目なんだ。学校を騙くらかして入学したって、上手くいかないことが多いのもわかってる。でも一度でもいいから味わってほしかったんだ。足の引っ張りあいのない、純粋にお互いを高め合う世界があるってことを。娘はここしか知らねぇんだ」


「この町じゃ子供の進路を閉ざそうとする親が大半ですから、その点では感心な父親でしょう。……まあ、子供にとってはどちらにしても親のエゴに変わりないんですが」

「子供の進路を邪魔する親もいるなかで、なかなか感心な父親です」

誰のことを言っているのか。(自分の母親)


「悪いのはあなたじゃない。悪いのは罪を生み出す構造なんだ…」

誰に聞かせるでもなく呟く。


ここが魔世界と繋がっているんだ。

パブの裏口に魔世界と繋がるゲートを作ってるんだあ。オシャレだな。

正確には、魔世界と繋がってるゲートがもともと先にあって、そこを囲うようにパブを作ったというのが正しいな。

あれが殺された道徳獣の成れの果て、魔獣だ。

道徳獣が死んだら魔獣になるってのは、

これも正確に言うとちょっと違うんだがな。まあ、同じものとみてもいい。


ヘイトを撒き散らす。扱いの難しいやつらだが、捉えればこれほど心強いやつもいない。

だから鎖が巻きついてる。


ここを行き来できるのは魔界人か、一部の許された人間だけだ。

「えっ、じゃあジョニーさんは…?」

「実は俺は魔界人なんだ」

そういえばいつの間にか、耳も尖ってる。(これは作画上の都合にしとこう)

耳が尖ってるのが特徴だ。


お前たちの世界(俺たちは黄泉の国と読んでいる)で道徳獣が死ぬと、なぜか同時に俺たちの世界で魔獣が生まれる。逆も然りで、俺たちの世界で魔獣が死ぬと、お前たちの世界で道徳獣が生まれる。我々の世界は互いに反転した存在なのかもしれない。

ケモノたちが世界を渡り歩いているように見えるが、実際この二者が同じ存在なのかは疑問が残る。なにせ、全く性質の違うやつらだからな。

魔獣は



委「それは魔獣か? よもや正しさを得たいばかりに邪悪な力にすがるとは!」

慈「委員長のやってることは私のポリシーに反するんだ。正しさを使うときは優しさも忘れないようにっていうね」

委「お前のそれは『優しさ』ではない『弱さ』だ! いいカッコがしたい。気に入られたい。嫌われたくない。…自分のことばかり考える利己心(エゴ)だ!」

慈「エゴでけっこう! それを言うなら、あなたのもってる『優しさ』も

『優しさ』じゃなくて『強さ』なんじゃないの?」

委「優しさは強さから生まれるのだ!」

慈「優しさは弱さからだって生まれるよ!」

委「お前と俺とでは『優しさ』の定義が違うらしい……ならば問おう! お前の中の『優しさ』とは何だ!?」

メタ認知能力。己の本能を律するハック。

慈「……自分の理解できないものをガマンする力! 嫌いなもの、苦手なもの、不快なもの、それらをちょっと味見してみる勇気! 怖いもの、未知のもの、わからないもの、共感できなくても理解しようと努めること! 正しくないこと! 間違ってること! 悪いこと! それでも正しさについて考え続けること!(それでも最後は正しくあろうとすること!)」

言うに事欠いて。

委「ククク…ははははは! 何をべらべらと喋り出すかと思えば、正しさのために正しくなさを受け入れるだと! そりゃあ正しくない! まったく間違っている! でも……美しい道徳心だな」



ばつ丸の魔獣とシゲコの獣で委員長とのリベンジマッチに勝利する。

だが、突然ばつ丸の魔獣が暴走しだして…?



天界人、天使。

「金持ちばかりが高い道徳力を独占している? ……それは善きことではない。『正しいことではない』ね」

「だろ? だから…」

「『正しいことではない』。だから『間違っている』! 金持ちばかりが道徳的だなんて事実は認められない!」

「何を……言っているんだ?」


「わかったです! あいつは真偽と善悪を混同しています。ふたつは別の概念のはず」

「どちらも『正しくない』ことだろう? 同じさ」

「ウッ、頭が……」


自分にやましさがあるから正義にすがる!

モラリアン襲来!

宇宙人が攻めてきた(可愛い)

(ここら辺ドタバタ漫画にする)


道徳獣に干渉した!?

道徳獣に触れるのは同じ道徳獣だけじゃなかったのか!?

道徳力はこっちが勝ってるのに。

また道徳力が通じない相手か。厄介だな。

「正しさとはなんだ。それは事実か?」みたいなことをモラリアンが言う。

そういえば正しさってなんなのかしら? 道徳獣の力の源くらいにしか考えたことなかったわ。

分裂した!

「「私は正しいと思う」そうかい私は好きだぜ」正しい」」

多数決に強い。場の雰囲気を支配する。


次々と倒されていく道徳獣。

シゲコのケモノも空中であわやぺしゃんこに…


『私はお前が嫌いだ!』

突然ふっとぶモラリアン。

「なるほど。ヘイトは効くようですね」と魔界の住人ムルムルが言う。

「道徳力が効かないのであれば、私たちの魔獣の出番です。

知っての通り、魔獣のパワーの源は、正しさではなく好悪の感情ですから」

「シングル! あなたも戦うのですよ!」(露骨なパロ)耳が尖ってる魔界人だから、あとコスプレチュンリーのおっさん、オッサンは本名

「はわわっ!!」

さすまたをもった緑髪の少女が、おっかなびっくり攻撃に向かう。

シングルはフランケンシュタイン(人造人間)なのでケモノと直接戦えるらしい。

なんで助けてくれるの?

こいつら信用できるのか?

いままで敵だったのに

道徳獣が死ぬと魔獣が生まれます。

本来、魔獣の誕生を防ぐため道徳心を潰すのが、先日まで私に与えられていたミッションだったのですが。

迷惑な魔獣を増やさないために、あなたたちの道徳獣を守りましょう。

これでも当初の目的は達成できるのです。

じゃあ、今までなぜそうしなかったのかというと。

道徳獣の死と魔獣の誕生

魔獣の死と道徳獣の誕生

これらに因果はなく、ただ相関している関係なのだとわかりました。

「あなた方の世界で幸せを願うことは、私たちの世界での不幸を願うことと同義だと、知って欲しかっただけだったのかもしれません」

「こちらの不幸とあちらの幸せが連動してるジレンマを知っていただけた。それだけで満足なのです」

「消えてなくなれ」気持ち悪い」うざったい」うるさい」不愉快」不快だ」赦せない」

『嫌いだ』

おお…すごい猛攻だ。

気のせいかこっちまでダメージがくるぜ

あんな力をまだ隠しもってたのか

あいつが敵だったことに今更ながらゾッとするぜ

敵にすれば厄介な相手だったが、味方となった今、これほど頼もしいものはない。


撃退成功

今回はなんとか追い払ったけれど。

魔界人もいつもいてくれる訳じゃないから、俺たちだけでなんとかする方法を見つけないと。


多数決だと部が悪い、多数決の問題点の話もしたいな。

「えーーーー!!? モラリアンと部屋で仲良くお茶飲んでるーーーーー!!」

ムシ型の獣をもっている(ASD族)たちは、わりあいモラリアンと仲良くやれる。

「もちろん暴虐を許したわけじゃないけど、それはそれとして困ってたならお互い様だろ?」

その割り切りのよさ。

人間が「正しさ」と呼んでるものについて知りたいだけなんだとよ。

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