嘘と友人
カーテンの隙間から差し込む光が残酷にも朝を知らせる。どうも新学期の朝は体にかかっている羽毛布団が重くてたまらない。外の寒さからくるものなのか、昨日の苦い体験からくるものなのか、もちろん両者だ。重い
「醜いな」
とっさに自分の口からこぼれだしていた。
目は充血し腫れが残っていて、髪の毛はところどころ寝癖が付いていた。階段を降り、両親が働きに出ていることを確認すると風呂場へ向かった。
打ち付けるシャワーの水滴一つ一つが肌を刺してくる。濡れた髪が重くて昨日のことを思い出して顔を上げられそうにない。こんな気持ちも一緒に洗い流してしまいたい、なんて恋愛漫画の受け売りのようなことを考えてしまうくらいには引きずっていた。でも、涙はもう枯れた。彼女への思いがまだ完全に消えたわけではないけれど、好きな人の幸せを願って俺は応援する。
それが主人公になれなかった、友人Aの最初で最後の仕事だから。
学校に着くころには、10時を回っていて、すでに始業式なる無駄な儀式も終わっていた。
普段と変わらず自分の席に座り、ワイヤレスのイヤホンを耳に付け、机にうつぶせる。薄っぺらい歌詞と一昔前の名曲に似たようなメロディーが頭の中を侵食し、それに体が耐え切れなくなったのか、自然と目を閉じていた。
数分後、俺の睡眠を止めたのは今一番顔を合わせたくない男だった。
「柊、朝お前が来なかったおかげで女子と二人きりの登校だったんだぞ」
さわやかな声とともに肩をつつかれ、重い頭を上げ返事をした。
「実は少し嬉しかったりするんだろ」
そんなことない。と、翔は笑いながら答えた。平然を装い、俺は自然な顔ができているだろうか。
「お前、目腫れてるけど何かあったのか」
笑っていた翔の顔が少し不安そうな顔に変わったのが分かった。家を出る前、鏡を確認して出てきたはずなのに、こいつには敵わないな。
「実は昨日見たアニメがさ」
「あ、その話長くなるパターンだから話さなくていいよ」
「どついてやろうか」
こんなくだらない会話をずっとしていたい。そう思うくらいには大切な友達で、一生かけても足元にも及ばないと思える唯一の友人だ。
すべて、消えてしまえばいいのに。 湊 笑歌(みなとしょうか) @milksoda01
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