噛み合わないはずの凸凹が噛み合えば恋になる

 社会人になった上原奈々子の身長は平均より少しだけ小さな155センチ。その「少しだけ」がコンプレックスで、だからこそパンプスを買う際に5センチヒールを選んでいる。そんな彼女がとあることをきっかけに、会社の後輩である鈴木太一と関わりを持った。彼の身長は195センチ、奈々子の手が絶対届かない先に悠々手が届く大男で……

 奈々子さんのコンプレックスには、誰しも経験がある「あと少しこうだったら」が押し詰まっています。そのささやかなのにみっしりと重たい悩みがあればこそ、太一さんとの出会いは鮮やかな深刻さを魅せてくれるのですよね。太一さんがまた開けっぴろげで一見ぞんざいなタイプなのでなおさらに。

 しかと定まったふたりの個性と人生的な経歴があるからこその、奈々子さんと太一さんの距離感の遠さがある。本作最大の魅力は、その遠い距離から近づいていくふたりの心情変化そのものなのですよね。

「あと少し」が転じてほろっと甘い最終話へ至る恋愛劇。もだもだ必至の一作ですよ!


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=高橋 剛)

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