第5話

真っ暗な天井を見つめる時間になっても結局何も思いつかず、自分がどうしたいのかさえわからなくなってしまった。この脚の間や枕もとや腕の間にもぞもぞしている生き物たちをどうするべきか、俺は決めなければならない。しかしながら、可愛いなぁと思いながら眠るしかなかった。


もぞ、と腕と体の間で何かが動く感覚に目が覚めた。両脇に陣取っていた二匹が起きたらしかった。脚の間にいる一匹はまだ夢の中のようだ。二匹は音もなくベッドから飛び降り、部屋の隅へ移動した。そっと気づかれないように二匹を見ていると、何かの儀式のように向かい合った。

すると、二匹の耳の間、そして額へ亀裂が走った。そしてそこから体が、波にさらわれ崩れる砂の城のように、ぱっくりと割れて同時に倒れていった。俺は目が離せなかった。

目を凝らすと、合計四つに分かれた愛猫の欠片は、びくびくと顫動せんどうしているのが見て取れた。正直部屋が暗くて助かったと思う。もし昼間なら俺は彼らの断面を見なければいけなかっただろうから。

しばらく見ていると欠片はぎゅっと丸くなり、次にむくむくと大きくなった。そして、完璧な猫の形をとった。今この部屋には五匹の猫がいる。


脚の間に丸くなっている俺の愛猫。きっと最初からいたのはこの子だ。

そして部屋の隅で生まれたての子猫に母猫がするように、ぺろぺろとお互いの体をなめている四匹の愛猫。彼らは猫であり、他の何かでもあるのだろう。ただ、今は純真無垢な猫である。




昔から連れ添った愛猫と、これからも増え続けるであろう愛猫。俺は震えた。

ごくりと喉を鳴らし、ぺろりと舌なめずりをする。


俺は今、どちらを『』とするか決めたのだ。

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増殖 藤間伊織 @idks

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