オンライン愚痴のツボ

 そんなこんなで、第一の正念場と位置づけた討論会でまずまずの結果を収めた私達である。

 しかし、討論会はあくまで手段。漆原に捨て台詞を吐かせることができたとはいえ、生徒からの支持が集まらなければ選挙に勝つことは不可能だ。つまりはここからが本当の勝負。討論会は、言うなれば本格的な選挙戦の舞台に上がるための前哨戦でしかなかったわけだ。

「――ぶっちゃけ、期待してた以上の戦果です。私が先輩の応援人だって知ったクラスメイトが、先輩のこと聞きに来たりしましたし。今やちょっとした有名人ですよ、夢先輩は」

「それもそれで、不登校の人間としては気が重い話なんだよなぁ……」

「なに弱気なこと言ってるんですか、先輩は。それもこれも、先輩の快適な不登校ライフを守るためです。さ、気合い入れていきますよ」

 蓮からの映像が大きくブレる。空き教室の座席に座っていた蓮が、PCを持って立ち上がったのである。対する私の居場所はというと、勿論自宅の自室だ。

「で、今日はどこで演説やるわけ?」

「そうですね。美術部の部室近くとかどうでしょう」

「部活中なら、邪魔になっちゃうと思うんだけど」

「ああ、それはそうですね。だったら、一階の自販機前とかどうですか? あそこなら、小休憩しに来た生徒たちしか来ませんよね」

「自販機前、か。うん、いいんじゃないかな」

 蓮が迷いのない足取りで歩き出す。廊下に出てしばらくすると、チラホラと生徒たちの姿が映像に映り込み始める。ワードのウィンドウで蓮からの映像を遮断して、向こう側が学校であるということを意識しないよう、尽力する。

 程なくしてイヤホンから、「つきましたよ、先輩」と声がする。映像を確認してみると、自販機で飲み物やお菓子なんかを買いに来た生徒たちが、物珍しそうな顔でこちらを見ていた。

 いや、気にしない気にしない。言い聞かせながら再びワードのウィンドウをフルサイズにして、原稿を読み上げる作業へと舞い戻る。

 蓮曰く、今は作戦の第二段階に当たるのだという。

 第一段階ではありとあらゆる策を弄して、いやもうはっきり言ってしまえば倫理的、規約的にスレスレのラインを突いて、泡沫候補でしかなかった私の知名度を一挙に押し上げた。討論会では見事に漆原を言い負かし、ただの色物だというそれまでの認識をひっくり返し、投票に値する候補なのだと皆に知らしめる結果となった。例の青井構文で扇状的なことを捲し立てているのを期待して、討論会特集に目を通した物好きな生徒が、蓮の狙い通りに仰天してくれたわけだ。意外にも真っ当な主張をし、次期生徒会長の筆頭候補からの激励も得て、副会長筆頭からの追求にも華麗に言い返し、喧嘩を売られた際にも泰然と返しているではないか、と。

 その人達が「ちょっとちょっと」と友人知人に話をし、その友人知人たちもまた自分の友人知人に「ねえ知ってる?」と話をし、以下同様の流れを帰納法的に繰り返していくうちに、学校中が討論会の顛末を知るようになった、というわけだ。

 これにて作戦の第一段階はコンプリート。私は炎上系色物不登校立候補から、れっきとした一候補者へと格上げされた。それを踏まえて、作戦の第二段階へと移行する。これまでの沈黙を一気に破り、オンライン演説やウェブサイトへの詳細な政策の記載などの全面的な広報活動に打って出る。それも邪道から一転し、王道の方法で。まともな候補としての認識を打ち立てた以上、それを破壊するような行いをするのは逆効果となってしまうから。

 依然として分の悪い勝負であることには、変わりない。でも、夢物語と思われた当選が徐々に現実味を帯びて来たのは、確かだった。私はこれまで、心の何処かで当選なんてまず無理だろう、とたかをくくっていた節がある。でも、ここに来てようやく、もしかしたら本当に選ばれるんじゃないかって、選挙に勝つ可能性を真剣に考えるようになった。

 正直、不安や戸惑いといった負の感情が大きい。私なんて蓮の言いなりになってるだけだし、学校を変えようだなんて気概が本気であるわけでもないから。もし本当に副会長になってしまったらどうすればいいんだろう、って。大口叩いてはいるけれど、本当に不登校で生徒会なんてできるのかなんて未知数だし。不安の種は、尽きなかった。

 だけど、マイナスの感情だけというわけでもなかった。選挙に勝って、蓮と二人でバイト先で横並びになりながら、面倒な事務作業をこなしているような、そういう構図を妄想してみたことも、何度かある。そのときの気分は……まあ、それほど悪いものでもなくて。

 そのとき、イヤホンから蓮のものではない声が飛び込んできた。口先で演説を続けながらも、気になったので蓮側の状況を確認してみた。と、体操着姿でショートヘアの生徒が、ペットボトル片手にこちらに近寄ってくるところだった。

「あれ、例の不登校の候補者じゃん。これって生なの? それとも録画?」

「……な、な、生です。演説なので。どうも。青井夢です」

 演説を一旦切り上げて、軽く頭を下げてみる。愛想よく笑ったりとかはしない。そういうのは苦手だし、やったところで不自然になるだけだから。でも、それで問題ない。私が目指すべくは天真爛漫な愛されキャラではなくて、あくまで孤高な反逆者なのだ。下手に愛想を振りまけばイメージが壊れてしまう。あくまでも、冷徹で意志の強そうな人物像を保たなければ。

「わ、喋った。本当に生じゃん。ども、こんにちは。てか、今って家なの? 自分の部屋?」

「ええ、まあ。不登校、ですから」

「ふぅん、そっか。すごいね、不登校なのに生徒会選挙に出るなんて。私、不登校でもなんでもないけど、検討すらしたことないや。それじゃ、もう練習戻らなきゃだから」

 頑張ってー、と応援の言葉を口にしながら、その子は下駄箱の方へと消えていった。

「認知はされてるし、遊び半分とも思われてはないんだろうけど……なんか、支持されてるって感じじゃないんだよね。ただ社交辞令で、頑張ってって言われてるだけっていうか」

 声を潜めて蓮に言う。蓮もそれは感じているらしく、ですね、と悩ましげな声で返してくる。

 これまでにも、私の演説に足を留めてくれる人はちらほらいた。皆、頑張ってとか応援してるよとか、言ってくれはする。それ自体は嬉しいし、ありがたい。でもそう思う一方で、なんだかそれは「不登校なのに頑張ってて偉いね!」という、どこか上から目線というか、同情的というか、善意で励ましの言葉をかけられているだけに思えてならないのだ。喩えるなら小学生相手にすごいねー、頑張ってねー、と適当に声をかけるときのよう、とでも言えば良いのか。

 奥の方の教室から二人組がこちらに向かって歩いてくるのに気がついた。適当なところから演説を再開させる。特に声を変えられたりはしなかったけど、すれ違い様、「あれだよ、あの不登校の」「へぇ、結構ちゃんとやってるんだね。以外」「でも別に、うちら不登校じゃないしねぇ」「ま、頑張ってるのはわかるんだけどね」なんてやり取りが耳に入った。

「――っ、ふ、不登校は、誰であれなる可能性があるものです。考えてみて下さい。あなたじゃなくても、もし、あなたの友人が不登校になったとしたら、どうでしょう。勿論、通信制だとかフリースクールだとか、他の道もあるにはあります。ですが、可能性として。学校に残りながら勉強を続け、卒業するという道を用意することは重要で――」

 演説用の原稿から、それらしいパートを抜き出して声に出してみた。その二人はちらりと振り返りはしたけれど、そのまますぐにお喋りを再開し、下駄箱の方へと消えていった。

 自販機前が、再び無人に戻る。程なくして蓮が、嘆息混じりにぼやいた。

「……やっぱり、どうしても他人事感が出ちゃうんですよね」

 これこそが、私たちの抱える最大の問題にして、解消不能なジレンマでもあった。

 私が選挙に勝つことで最も恩恵を受けるのは、言うまでもなく不登校の生徒だ。でも、不登校の生徒はそもそも学校に来ていないのだから、校内で演説をしたところで私の主張は届かない。しかも絶対数が少ないときた。となると、否応なしに一般生徒からの支持を集める必要が発生してくる。しかし不登校でない、ごく普通の学校生活を遅れている生徒にとって、不登校の生徒の権利回復なんて所詮は他人事にすぎないのだ。そりゃあ、ある程度の同情とか気遣いくらいは向けてくれるけれど、でも、それだけ。誰にでも可能性がなんて言ったところで、実感が湧かないのは当然だろう。それを責めるつもりはないし、仕方のないことだと思う。

 とはいえ、選挙での勝利を目標にする以上、どうしようもないとも言っていられないわけで。

「やっぱ、別の手を案出しなきゃかな。でも、下手に動きを変えてキャラがブレるのも――」

 蓮の独りごとを小耳に挟みつつ、私が演説を再開しようとした、そのときだった。

「――あ、あの。……えっと。画面に映っているのは、青井先輩ですか」

 映像が大きくブレる。蓮が体を反転させたらしかった。画面が再び安定する。正面に、眼鏡をかけた背の低めな一年生が立っていた。そうですけどと素直に質問に答えると、その子は何事かを切り出そうとしているのか、えっと、その、と口ごもり始めた。

「……あの。どうかしましたか? 私に、何か言いたいことでも?」

 孤高の反逆者とはいえ、怖気づいてる下級生に助け舟を出すくらいのことはしても許されるはずだろう。そう判断して、こちらから話を振ってみた。慣れないことではあったけど。

「は、はい。……えっと。実はわたし、討論会の新聞、読んだんですけど」

「本当? わざわざありがとう。嬉しいよ」

「冒頭で、学校行事が嫌いだって、言ってたじゃないですか。……あれ、本当ですか?」

「うん、まあ。皆で大騒ぎみたいなの、あんまり得意なタイプじゃないから。もしかして、あなたもその口?」

「っ、そ、そうです。わたしも、そうなんです。……その。わたし常々、文化祭とかって自由参加にすればいいと思ってるんです。やりたい人はやりたい人で集まって有志でやってくれればいいじゃんって、去年からずっと思ってて」

「ああ、なるほど。確かにいいアイディアかも知れないですね」

「で、ですよね! 私、中三のころ大変だったんです。受験生だから勉強に専念したいのに、皆、一、二年のときにコロナで出来てなかったからって、やけにお祭りモードになってて。とてもじゃないけど、受験があるから手間暇のかかる出し物は嫌だなんて言い出せるに気じゃなくって。それでいて貢献度が低いと何かと嫌な顔されるし。こっちは端から大してやりたくもないのに、ですよ。ああいうのって、わたし、ひどいと思うんです……っ!」

「う、うん。そうだね。私もそっち側だから、気持ちはわかるよ」

 堰を切ったように語りだすその子を前に、私は些か面食らう。戸惑いながらも、うんうんと相槌を打っていると、興が乗ってきたのだろうか、その子は滔々と文化祭という行事に対する不平不満を吐露し始めた。

 その様子を見た別の生徒が、なんだなんだと興味を覚えて近寄ってきた。話の内容がただの愚痴なので、どう思われるかと心配になったけど、結論から言えばそれは杞憂だった。

「行事といえば、私、もう既に合唱祭が憂鬱なんですよね。音痴だから、皆と一緒に歌わされるのとか苦痛以外の何物でもないし。あーあ、今年も中止になってくれればいいのになぁ」

 その子は一人目の少女の愚痴に気を悪くするどころか、合唱祭に対する不満を語り始めたのだった。この調子で連鎖的に人が寄ってきて、最終的に十人もの聴衆が集まった。いっぺんに喋られたりしたら私は聖徳太子じゃないので辛いけど、皆、根本的には良い人と言うか遠慮深いタイプらしく、そういった事態には陥らなかった。一人一人、間を読み合うようにしながら順番に発言をしていく。私は相槌を打ちながらも、人に囲われた――物理的に囲まれているのは蓮だけど――現状に居心地の悪さのようなものを、少し覚える。だけど折角、私のような普通じゃない候補のところに集まってきてくれたのだ。このチャンスをみすみす不意にする訳にはいかない。私は注意深く、かつ根気よく、彼女らの話に耳を傾け続けた。

 といっても本当にただ聞いていただけであり、相槌を打っていただけだ。何らかの解決策を示したり、当選時の確約をしたりとか、未来の生徒会らしいことができたわけではなかった。にも拘らず、話は私の手を離れ、自然の成り行きでどんどんと発展していった。

 その日は結局、演説の原稿をろくに読めもせずに下校時刻が来てしまった。後からスマホで、「囲われてただろうけど、大丈夫だった?」と蓮に訊ねると、「文化祭で劇をやるなら、迷わず木の役に立候補しようと思います」と返された。ちょっとだけ、いやかなり申し訳なくなった。

 この一件がきっかけになったのか、次の日以降、私に話しかけてくれる生徒の数が徐々に増加していった。口に出される内容は愚痴や不満の類が九割。いつも通り相槌を打ちながら、場合によってはメモを取りながら、私は集まってくる生徒たちの話を聞き続けた。

 特徴的だったのは、見た目や雰囲気からの判断になってしまうから良くないかもしれないけれど、大人しめの、内気なタイプの子がほとんどだった、という点。

 私含め、内向的な性格の人間はともすれば、俗に言う陽キャたちの群れに淘汰され、個を殺してしまいがちだ。陰気な発言を使用者なら、場の空気を乱す、すべきことをちゃんとやらない、なんて烙印を押し付けられることもあるから、そういう気持ちは抱え込んでしまうことが多い。それを私が、不登校なんていう社交性の対極に位置するような人間なのをいいことに、吐き出しているってことなのだろうか。

 かといって、内向的なタイプだけが集まっているかと言えば、そういうわけでもなくて。

「――あたし、田舎の方から登校してきてるんだけど、鹿を轢いたとかで最寄りの電車が止まっちゃってさ。結局、登校できたのは午後からだったんだけど、午前中の授業は欠席扱いになるわけでしょ。オンラインやってほしいんだよね」

「ああ、わかるわかる。雨の日とかもやってほしいんだよね。電車の乗車率が若干上がるし、人の傘で濡れたりするしさぁ」

「つか、そもそも登校するのが面倒くさい」

「いや、それを言ったらおしまいでしょ」

「えっと。貴重なご意見、ありがとうございます。私としても、授業の配信は常時行ってくれてもいいなんじゃないかと思っていて。当選したら、学校側に申し出をしようと考えてます」

「お、マジで⁉ そうしてくれたら助かるわ。えー、どうしよ、マジで投票してみようかな」

「ちょっと、動機が不純すぎない? まあ、気持ちはわかるけどさぁ」

 最初こそ内気な生徒たちのたまり場、といった感じだったのだけど、日を追うに連れ、それ以外の生徒が足を止め、ああして欲しい、こうして欲しい、と願望やらちょっとした文句やらをこぼしていくケースも増えてきた。

 生徒たちの不満の吐き出し口となることに、最初は戸惑っていた部分もあった。でも、慣れてしまえば思いの外、楽だった。自分の口から政策やら意見やらを語るより、他人が語ってくれる話に耳を傾けているほうが、消費カロリーが少なくて済むから。

 とはいえ、課題がないわけではない。有権者たる生徒たちと言葉を交わす。親交を持つ。それはいい。でも、肝心のマニフェストを広める暇がないのは、ちょっと問題があるだろう。

「――ああ。別に、あれはあれでいいと思いますよ」

 いつも通りバイト先を訊ねてきた蓮に対し、そのことを相談すると、蓮は平然と気にするなと返してきた。冷えたオレンジジュースをストローで飲んでから、あのですね、と話を続ける。

「生徒会選挙ではぶっちゃけ公約の中身より、人望や人脈のほうが重要なんです。主張については討論会でも述べましたし、例のサイトにも載せてあります。ひとまずは、それでいいんじゃないでしょうか」

「だけど私達の本懐は、不登校の生徒の権利回復じゃ」

「当選しないことには、それも叶わぬ夢ですよ。まずは勝つことを最優先に考えましょう」

 尤もな指摘だった。そうだねと頷いて、間を作るようにコーヒーを飲む。いつの間にか六月も半ばを過ぎた。そろそろアイスにしたいなと益体もない思考をしつつ、でもさ、と言って。

「今のままだと私のキャラが崩れない? 正直、気骨のある反逆者っていうより、ラジオ番組の聞き役みたいな感じになってると思うんだけど」

「ええ、なってますね。だからもう、いいんです」

「え、いいの?」驚愕する私とは真逆で、蓮の反応は至極落ち着いたものだった。

「ある程度キャラが立ったあとで意外性を見せるのは、鉄板ですし、……それに。今のやり方のほうが、先輩にはあってるように思いますから」

 驚いて横を向く私に対し、蓮の様子は落ち着き払ったものだった。オレンジジュースをゆっくりと飲み、天井のあたりをぼんやりと眺めて、ほんの少しだけ目を細めて、言う。

「正直、誤算でした。先輩がここまで生徒たちに慕われるとは、予測していなくって。ま、この場合は嬉しい誤算なんですけどね」

「いや、慕われてるっていうか……。ただ単に、愚痴のはけ口にされてるだけじゃ」

「慕われてるじゃないですか。信頼していない相手に、心の暗部なんて晒さないでしょう?」

「……それは、まあ」真正面からの否定は、できないけれど。「でもそれ、物は言いようってやつじゃないの? だって私、本当にただ話聞いてるだけだし。こんなの、誰でも――」

「いいえ、できませんよ。これが意外と難しいんです。大抵の場合、話の途中でああすればいい、あれがいけないって、口を突っ込みたくなるものですからね。先輩って、そういうのが希薄ですから。邪気とか虚栄心みたいなものが、あまり感じられないんです」

「……それは、流石に美化しすぎだよ。私、そんなにできた人間じゃない。心の中じゃいくらでも酷いこと言ってるし、思ったりしてるよ」

 蓮との初対面のときだってそうだったし、と心の中だけで付け足す。

 ほら、やっぱり卑怯だ。口に出しては、伝えられてないんだからさ。

「それは単なる動機でしょう? 外側から認知できるのは行為だけなんだから、動機なんてブラックボックス、他者にとっては何であれ同じようなものなんですよ。そういう意味で先輩は、無害なんです。――だからきっと、それが救いになる人だって、いるんです」

 遠いところを眺めるように、蓮が再び目を細めた。氷だけになったグラスをストローでかきまぜるて、カラン、と音が鳴る。とにかくと蓮は会話を仕切り直して、私に顔を向けてきた。

「この調子で頑張りましょう、先輩。着実に、地道に、支持層を盤石なものとしていきましょう。千里の道も一歩から、ですからね」

「ん、そうだね。私も、出来る限り頑張ってみる」

「私も無言で棒立ちする練習、頑張りますね」

「……うん。なんかごめん。本当ごめん。マジでごめん」

 そんなわけで私は、かねてからの方針だった孤高の反逆者としてのキャラを完全に捨て去って、愚痴の壺としての地位を確立していったわけである。

 七月頭のテスト期間になってしまえば、部活などと同様に選挙活動も禁止となってしまう。私たちは残り少ない時間を有効活用しようと、連日の選挙活動に一層邁進していった。

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