読み聞かせ、もしくは音読

 音読に適した文章というものはあると思う。

 わたしの中で最も音読するにふさわしい文章は夏目漱石の文章である。美しい。ことばのリズムもいい。読んでいて、嫌なところがない。

 夏目漱石の「夢十夜」を、妊娠しているときに音読していた。変な妊婦である。夜眠る前に音読していたのである。


 夏目漱石に次いでいいなと思っているのが、宮沢賢治。

 しかも、宮沢賢治の作品の内容は読み聞かせにもぴったりである。わたしは宮沢賢治の作品をいくつも読み聞かせしたし、特に「銀河鉄道の夜」と「よだかの星」は何度も何度も読み聞かせをして、暗唱するくらい、声に出して読んだ。しかも、読むときジョバンニとカンパネルラの声色を変えて読んでいた。「よだかの星」も、やはり登場人物によって声色を変えて読んだ。

 ……変な母親である。

 ともかく、宮沢賢治の文章も大変読みやすく、読んでいてつっかかったりする部分がなかった。


 ということを思い出したのは、清瀬六朗さんの「『銀河鉄道の夜』の『版』について」https://kakuyomu.jp/works/16817330647519409261を読んでコメントを書いたら、そのお返事に「賢治は確実に声に出して読んだときの調子を考えて書いているので、読み聞かせるにはよい作品だと思います」とあって嬉しくなったからである。

 よかった! わたしの感覚、合っていた!


 読み聞かせに適さない、と強く思ったのはハリーポッターである。賢者の石は全部読んであげたのだけど、カタカナ多すぎるし、やはり翻訳の文章って音読には向いていない。同じ翻訳文でも「ナルニア物語」は大丈夫だった。たぶん、童話として書かれているからだと思う。


 読み聞かせして読んでいて、「こんな内容だったとは⁉」と驚いたのが、松谷みよ子の「モモちゃん」シリーズである。あれは大人の童話だと思う。

 何しろ、「働くママ」の大変さが描かれていたり、途中旦那さんが浮気をして離婚したりするのである。しかもそれがメタファで描かれている。ある意味シュールだ。

でもとてもいいお話です。わたしはあの6冊を3回通しで、声に出して読んだ。離婚するお話は、つらいけれどとてもうまく書いてあって、何度読んでもいいです。

 そう言えば、「モモちゃん」シリーズに「おいしいもののすきなくまさん」が出てきて、わたし、やっぱりおいしいものって、気持ちを明るくするなあって思ったのでした。


 童話ではなく、絵本の読み聞かせもたくさんした。

 あの、脳内花畑のあのとき、少しも本が読めなかったけれど、膨大な量の絵本と童話を読んだ。声に出して。声色変えたりして(笑)!


 なんだか、財産になっているなと思う。

 

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