嫉妬という気持ち

「品川猿」(『東京奇譚集』村上春樹)を読み返した。

 その中に嫉妬について書かれた部分があった。

 そうだ。

 ここが(も)とても好きだったんだ。


 わたし、実は嫉妬する気持ちがあまりよく分からない。

 憧れはする。

 いいなあ、と思ったりもする。

 羨ましい、と思うこともあるかもしれない。でも実のところそんなに強い感情でもなく、「うらやましー」くらいのものだ。


「それは肉体における腫瘍みたいに、私たちの知らないところで勝手に生まれて、理屈なんかは抜きで、おかまいなくどんどん広がっていきます」


 というような「嫉妬」って、ほんとうに分からない。

 どうしてなんだろう?

 わたしって、何か損なわれた部分があるんじゃないだろうか?

 小さいころは何もかも羨ましかったことがあった気もする。でも、どこかの地点で「嫉妬」をあまり抱かないまま生きてきてしまった。

 

 別に何もかもに恵まれているわけでもないけれど(恵まれていないわけでもない)。何もかもが、思い通りに行ったわけでもないけれど(いろいろなことがあったはずだ)。


 そうだ。

 そう言えば、つきあっている相手に対しての嫉妬心も希薄だった。もちろん相手のことが好きだ。でも、嫉妬ってしたことがほとんどない気がする(別にずっと順風満帆だったわけではない)。


 なんでか分からない。

 だから、カクヨムコンでも、嫉妬する気持ちは芽生えない。

「うまいなあ」「おもしろいなあ」という気持ちはあるけれど、「腫瘍みたい」な嫉妬心はまるでない。純粋な称賛だけ。

 別に自分がすごいって思っているわけでもない(何しろ初心者だしね)。


 なんだか、ものすごく不思議に思えてきた。

 ちょっとよく考えよう。


 憧れ止まりなのである、ともかく。

「腫瘍みたい」な、誰かを羨む感情が、わたしの中には存在しない。

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