第32話 お供を連れて
昼御飯を食べたあと、美咲の家に行くことにした。連絡すると、「ならおいでよー」と気軽に誘ってきた。
勉強を手伝うという名目で女子の家に行くんだ。不純な動機ではないけど、妙に緊張してくる。
インターフォンを鳴らすと美咲が出てきた。
「待ってたよ。ほら、早くあがりなよ」
「お、おう。お邪魔します」
案内されて部屋に入ると、女の子っぼい内装と匂いにドキドキする。課題をちゃんとやってたようで、机にはシャーペンや消しゴムが置いてあった。ちゃんと真面目にやってるようで安心したよ。
「いや~全っ然進まなくてさ~。まいったまいった!」
よく見ると、本当に全然進んでない。置かれてたノートやらプリントを見ると、一割ぐらいしか終わってなかった。さっき安心した俺の気持ちを返せと言いたい。
「沼٠٠٠美咲はさ、勉強が苦手なのか?天才スキルを習得しただろ?あれで補正とか入るはずなんだけど」
「いや、元々の学力が低いから無理なんじゃない?ちょっと考えて自己分析したの。中学で習う範囲とか、基礎の部分があやふやだから駄目なんじゃないかなーって。天才スキルで解ったわけなのよ」
「いや、天才スキルをそこで発揮してどうすんだよ!」
「ヤバッ。そこツッコミ入れるところ?ウケる!」
「ウケねーよ!まぁいい。強制的にブーストしに来たからな。多分大丈夫だろ。ちょっと鑑定させてもらうぞ?」
「何それ?いいわよ、どーぞ」
一言断りを入れてからレベルアップしたステータスを見させてもらった。
ミサキ・ヌマツ
人族 16歳 女性
職業 魔法使い
LV 3008
HP 155100
MP 525300
力 11500
体力 14300
速さ 22300
知力 43600
精神 188000
魔力 525300
運 45900
スキル
光魔法、演技、天才、手加減、身体制御、精密動作、上限突破、限界突破
称号
女神の戦士
以前よりはステータスが上がってるから頭も良くなってるはずなんだ。知力は高いんだから、ちゃんと知識を覚えれば大丈夫なはず。
若干ズルいかもだけど、多少のチート行為は許容範囲だ。時間の節約にもなるしな。
考えていたスキルを創造で作るんだけど、候補になったのは『英知』『知識共有』『アカシックレコード』の三つだ。このうち二つはボツとなった。英知とアカシックレコードは知識量が膨大過ぎて、人間の頭だと爆発する危険性があったのでボツとなったのだ。だから今回は知識共有を使うことになる。
創造で知識共有のスキルオーブを出して自分に使った。
「あんた何やってるの?」
「今からお前にスキルを使「お前じゃない!美咲!」٠٠٠ゴホンっ!美咲にスキルを使う。これで俺の知識を共有できるようになる。そうすると中学の基礎となる部分も解るようになる」
「へぇ~超便利じゃん!やってみせてよ!」
「へいへい、んじゃいくぞ。ちょっと動くなよ」
スキルの使い方は自然に理解できる。両者のおでこ同士を合わせることで知識が共有される。
美咲の頭を両手でそっと掴んで、おでこを合わせにいく。
「え?ちょ、待って。まだ早いよ」
何か言ってるけど早い方がいいに決まってるだろ?
構わずおでこを近付けると、美咲はぎゅっと目を閉じて顔を少し上げた。
٠٠٠なんかキスする姿勢みたいになっておでこをくっ付け難いんですけど。
ちょっとやりにくいけど無事におでこをくっ付けてスキル発動。一瞬ピカッと光って俺の知識が美咲に伝わった。
「これで伝わったと思うけど、どうだ?」
美咲は頭を少しフラつかせながら、ちょっと待ってと言わんばかりに片手を挙げた。
膨大ではないけど知識が流れ込んでるのが大変みたいで、少し苦しそうにしていた。三分ほど経つと馴染んできたようで、ようやく声を出した。
「知識共有、舐めてたわ٠٠٠すっごく頭が痛い」
「マジか。その、頭は大丈夫か?」
「なんとかね。知識が流れ込むってよりも、忘れてたのを思い出したって感じ。おかげでいらない知識も増えたわ」
「ん?あ、そうか!知識共有の範囲とか指定してなかったから全部伝わったのか。悪い、調整できてなかった。その、ゴメンな」
「気にしなくていいわよ。おかげで公式とか歴史とか色々と解ったし。ついでにあんたの好きなアニメとかも解っちゃったけど」
「うぉぉぉぉい!それは忘れてくれぇ!」
ヤバいヤバいヤバい!知識ってザックリとした言葉だけど、俺の知識ってことだよね?言い換えれば記憶も含まれてるってことか?どこからどこまでが知識かわからんけど、少なくともムフフな画像や動画も知られてしまった可能性ががが!
ま、まあいい。いや、良くないけど!とりあえず話を進めよう。
そこから頭を無にして美咲と勉強した。知識を手に入れた美咲は、スラスラと課題を終わらせていった。夕方には全ての課題を終わらせるという早さだった。
「ありがと。あんたのおかげで無事に課題が終わったわ。これで心置きなく異世界に行けるわね。明日は迎えに来てくれるんでしょ?」
「うん。また明日ね」
「何その話し方?ウケるw」
女子に知られたくない事まで知られてしまったので、少し人格が崩壊しそうだった。
美咲に別れを告げて家に帰って、ムフフなデータを全て削除した。アナログもデジタルも全てだ。ハハ、もう手遅れだけど。
翌朝、上木と美咲を迎えに行って異世界へと転移した。次はカッパー海運国家郡の北にある、ベルベ合衆国に向かう。その前に上木をアーガス国に送る予定だ。
というわけで先に転移したのはアーガス国である。ここで上木とはお別れになるけど、その前にいつものセットと上木に頼まれた効果のある装備品を渡した。
「うわぁ~ゲームであった本物のレジェンド武器だよ!ありがとう赤城!これがファイクエのリアル装備٠٠٠カッコいい!」
「そ、そうか。喜んでくれてなによりだよ」
「ホント男子ってそういうの好きよね」
上木に頼まれて創造したのは、ファイクエというゲームで最強武器とされる弓と、最強防具とされる軽鎧にアクセサリーだ。
弓は魔法弓となっており、矢は必要としない。よくわからないファンタジー成分で矢を生成して放つ仕様となっている。軽鎧も防御力と回避率アップの効果があり、各種アクセサリーも様々な恩恵がある。各種属性無効やら消費MP削減とか色々だ。
俺はスキルで同じ効果があるから必要無いけど、上木の美学的には必要らしい。
感謝する上木を置いて、ハリアーをストレージから取り出した。
上木と美咲は初めて見るハリアーに驚いていたけど、上木的にはファンタジーに現代兵器を持ち込むのはNGらしい。
「ダメだよ赤城。空の移動手段はいつだって飛空艇と決まってるんだから。いいかい?ファンタジーRPGの歴史には٠٠٠」
上木の美学を淡々と五分程聞いていたら、話が長いと美咲に止められてた。
「あ~もう!あんたのうんちくはもういいから!それよりも、これに乗って移動するんでしょ?早く乗せてよ」
「あ、うん。そうだな。よし、複座になってるから美咲は後ろに乗ってくれ」
「えー、前じゃないのー?私も運転したい」
「素人に操縦なんて出来る訳ないだろ?また今度操縦スキルをやるから。今日は後ろで我慢しろ」
「絶対だからね?じゃあ今日は後ろで我慢してあげるわ」
「へいへい、じゃあ行きますか」
そうして上木にも別れを告げて、この大陸で一番大きな国であるベルベ合衆国に向けて飛び立った。
テラフィアにはこの大陸以外にも別の大陸が幾つか存在する。勿論、平面体の世界ではなく、ちゃんと丸い惑星なのだから他にも大陸がある。
世界地図によると五つの大陸があるようで、そのうちの四つに人の住む国があるらしい。また今度詳細を見れるようにアップデートさせるとして、今いる大陸の最後の国がベルベ合衆国である。
合衆国と名が付く通り、いくつもの州がある。範囲が広いので、いつも通り最初の街で情報を買うつもりだ。
飛んでる最中、美咲はずっとはしゃいでいた。そんな彼女にクラスメイトを探すやり方を説明しようとしたら、知識として既に知ってると言われた。知識共有の効果って凄いね。
そしてベルベ合衆国の最初の街へと降り立った。
女神様のミスで俺だけ現代に転移したけど、強くなったから異世界に戻って無双してやるよ ジョージさん @wave7744
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