高潔の胸

長月(ながつき)

夢のまた夢。覚めるか覚ますか。

楽園の先、いえ楽園そのものは朱く美しきものでしょう。伸ばした手の奥は暗がりであり花が1輪小さく座っておりま した。少し近けば可憐に微笑み手招きをします。


優雅に踊る花は細い足を巧みに動かし、時にゆっくり時に早く。見れば見るほど目が離せなくなります。ふっと意識を戻すとそこには先程までの小さな踊り子は見当たりません。どれだけくまなく探そうとも見つかりはしないのです。

 心の中にぼっかりと洞窟ができたみたいで下した。ふと冷たく水が落ちる音が聞こえてきます。それに合わせて音楽が聞こえてきます。音楽とともにリズム良くタッタッタッタタッと音が聞こえてきます。鏡を見ると貴方の胸の洞窟で先程の子と似た姿をした妖精が踊っています。ですがどこか悲しそうな顔をしております。先程の踊り子のしたり顔に比べたら不思議と下を向き、自信を感じさせません。見れば見るほど恥ずかしそうに悲しそうに顔を紅く染め上げをします。小さな足を少しぶらつかせながら妖精は地面に座り込んでしまいました。

 洞窟の中の小さな吐息。やがて奥から大きな猛獣が唾液を垂らしながら妖精に近づきます。妖精は震える足に力を入れ後ろを確認しながら逃げます。ですが前に気づけず洞窟から小さく落ちてゆきます、貴方は反応できず妖精は床に叩きつけられ血が飛び散り小さな四肢をあらぬ方向に投げて、苦しそうにもがきます。

猛獣も後を追い床を綺麗に掃除してくれました。

 夢から覚めれば、陽の光が差し込み暖かくなった部屋が目に映ます。外は葉桜の揺れる音が耳に残り目覚めがよく布団から足が抵抗なく出せます。窓の外から視線を感じてみるとく不気味な物体があなたを覗き込んでいました。

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高潔の胸 長月(ながつき) @ngatuki

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