解説
~青髭たるジル・ド・レたる青髭~
童話『青髭』の登場人物、青髭。そのモデルとなった人物として、十五世紀のフランス貴族、ジル・ド・レを挙げる説があります。ジル・ド・レは救国の乙女ジャンヌ・ダルク、そして戦友たちと共にフランス中を駆け廻った輝かしい過去を持ちます。その一方で、ジャンヌ・ダルクが敵軍に捕らえられ異端の咎で処刑されて以来、ジル・ド・レは魔術に傾倒して数多の少年を誘拐・虐殺したとされ、その果てに処刑され生涯を終えるという暗澹たる最期を迎えました。
この度は、「ジル・ド・レを元に青髭が書かれたのであれば、今度は青髭を元にジル・ド・レを書こう」と、拙作・この物語を綴りました。
~織り込んだ歴史、その一端~
前述のように、この物語には歴史の要素を織り込んでいます。ここでは、その主な(かつ、やや分かりづらいと思われる)ものを紹介いたします。
①裁判の果ての判
〝ジャンヌ・ダルクを処刑するため〟、この前提有りきで、敵対勢力の取り仕切る中ジャンヌ・ダルクの裁判が行われました。その裁判記録の最終頁に、判事を務めたピエール・コーションらの赤い判が押されています。そのイメージと、鍵についた血の染みを重ね合わせました。
たとえ扉を開けた背景に何があろうと、〝
②小さな十字架と大きな十字架
ジャンヌ・ダルクが火刑に処される直前。真に敬虔な教徒だった彼女は、火刑の広場に集まった群衆に、十字架が欲しいと求めました。その場に居合わせたとある人は小枝で十字架を作って渡し(この人物はイギリス人だったそうです)またある修道士は近くの教会から十字架を持ってきて、彼女が死する最期の時までそれを目の前に掲げ続けました。
物語中の〝神様〟はこちらの歴史とは異なるかたちのようでした。娘は、青髭の投げかけた意味の通じないその言葉に、それでも、何かを感じ取れたのでしょうか。
③ラ・イール、デュノワ伯、アランソン公
いずれの人物も、ジャンヌ・ダルクそしてジル・ド・レの戦友です。ジャンヌ・ダルクが敵方に捕らえられた後、彼らをはじめとした仲間たちは彼女の奪還作戦を決行しました。しかし歴史が示す通り、その作戦は失敗に終わったのです。
作中、娘の兄たちをかつての戦友と誤認した
その他の箇所でも、もしお気づきいただいたところがありましたら、恐悦至極でございます。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
【主要参考文献】
レジーヌ・ペルヌー著 塚本哲也監修 遠藤ゆかり訳、『奇跡の少女ジャンヌ・ダルク』、創元社、(2002)
シャルル・ペロー作 天沢退二郎訳、『ペロー童話集』、岩波書店、(2003)
あお・ひ・げ Ellie Blue @EllieBlue
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