第13話
朝陽が小屋の中に差し込み、眩しくて
「鬼め」
銀の鬼はすでに動けるまでに回復しているのだろう。鈴はそう思うと素直に嬉しかった。
「やあ。あなたが山へ入ったと聞いてね。探していたのですよ」
そう言って小屋に入って来たのは
「お前……」
まさかここで会えるとは思ってもみなかった。しかし、この山に入ったのも、そもそもこの男に会うためだったという事さえ忘れていた。いろいろな事がありすぎたのだ。
「龍、お前はなぜ鬼と暮らしているのだ? わたくしには理解できぬ。人と鬼は……」
鈴は土間に降りて、そう言いかけると言葉に詰まった。
「鈴、もうすでにあなたもこちら側の住人。鬼と一晩過ごすとは……」
龍はそう言って鈴に近寄った。口元に笑みを浮かべながら。鈴はその妖しげな微笑みのせいか動くことが出来なかった。
その時突然、龍が後ろを振り返った。その手にはどこからか飛んできた小石が握られている。
「こいつは驚いたぜ。お前、人が嫌いと言っていたではないか。こんなところで何をしている?」
そう言って銀の鬼はゆっくりと小屋に入って来た。銀の鬼と龍は、どうやら知り合いらしいが、お互いに敵意を示していた。
「そいつには構わないで欲しい。ここから出て行かないと、我はお前を殺してしまうかもしれない。だがそうなれば、あいつが困るだろう?」
銀の鬼が言うあいつとは誰のことだろうか? 龍と共に暮らしているという鬼のことなのだろうか。
「まあ仕方ない。今日は諦めます。だが、私はいつでもあなたを奪いに来ますよ。銀の鬼、奪われたくなければ隙を見せぬことだ。お前の父上も狙っておるぞ」
龍は鈴をしばらく見つめて去っていった。
「お前も悲運よのぅ」
銀の鬼は鈴のそばにきて肩を抱いた。鈴は少しも嫌な気はしない自分を、もう違和感なく受け入れていた。
「……」
悲運。鈴は頭の中で反芻した。なぜ自分だけがこのような目に遭うのか? 鬼討ちであること以上に特別な何かが、自分にはあるのかもしれない。金の鬼が母の雪を知っていたことにも関係しているのか?
「お前の肩、見せてみろ」
銀の鬼は鈴の肩に巻かれた布をするすると外した。傷口はジュクジュクしている。
「痛むか?」
鈴はその質問に軽く首を横へ振った。少しばかりの意地がそうさせたのだ。
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