四、迷霧の都
ついに決行という日、
その日、洛都は未明から深い白霧の底に沈んでいた。だが、昼頃には洛都いちの
確かに、格子窓から見下ろす通りも前後不覚なほどの濃霧といえ、正午頃には
そうした私の訴えに、夜盗はがんとして首を縦に振らなかった。
「道理のわかる
窓の桟に浅く腰掛け、手品師めいた器用な指で
「この霧は二、三日は
洛都の迷霧については、国元の旅日記『月は朦朧』で読んではいた。
神代から
理由は水気の源にあった。霧は洛都に網目をつくる水路から湧き上がり、その水は都の東西を挟む二本の龍神川〈雁川〉と〈
それぞれ洛都の北にそびえる霊峰にある水源には、〈
なんとなれば川こそが龍神の玉体そのものであり、その流れを都合よく変えて神通力を借用する洛都人、もとい明けの洛都それ自体に、神々は千年の恨みをつのらせ、憎んでいると言われるからだ。
「長雨の降る
大盗賊、
七嗣は唇に冷笑を浮かべてそれきり黙ったが、気の急いた私の値上げ交渉を歯牙にもかけなかった。さらに逼塞に飽いて外出しようとした私を止めようとすらした。
二日後に迷霧は霽れた。七嗣は昼間に街を見回ってから、夜も更けた〈
勢いを盛り返した
消えた酔客や無宿人、公家の頭がどこへ行ったのか――。
首尾よく素晴らしい枝を手に入れ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます