初あられと鶺鴒 🐦

上月くるを

初あられと鶺鴒 🐦





 映画のチケットを買って外へ出ると天候が一変、横殴りの風に霰が混じっている。

 大型スーパーの北側の宝くじ売り場、年末ジャンボの赤い旗が吹きちぎれそうだ。


 フードをかぶって車に急ぐと、霰が転がる駐車場で鶺鴒がキョトキョトしている。

 たしか季語は秋で、長い尾で叩くように見えるから別名を石叩きとも庭叩きとも。


「初あられ鶺鴒の背を叩きけり」季重なりだがこの場合は許されるのでは?(笑)

 でも、どうかな? 句会の選句はメンバーによるからね、どの句会に出そうかな。


 購入六年目の軽自動車のエンジンをかけると、いきなり森進一さんが流れて来た。

 山を、風を、雪を、そして女を泣かせる阿久悠さんの名作詞とジャストフィット。


 やっぱり昭和の歌はいいな、酸いも甘いも嚙み分けた胸にすっと忍び寄って来る。

 帰宅したら『東京タワー 〜オカンとボクと時々、オトン〜』を観ようかな。🥨




      🎶




 でも、お昼にすきやきうどんを食べながら観たのは一話が短い連続ドラマだった。

 毎回ぼうっと観て来たので気づかなかったが、どうやらLGBTQがテーマらしい。


 それが解禁になってから、小説もドラマもそればっかりという感じになっている。

 ほんま多彩なセクシュアルがあるんやなあ、ひとまず大阪弁で抑えておく。(笑)


 で、自分は? と考えたこともなかったが、思えば女性も(笑)好きだったかも。

 といって、セクシュアルな関係になりたいというのとは、ちょっとちがうけれど。


 気の合う友人を素適だと思うし、若くて性格のいい子を可愛いと思うしはするが、家族になりたいとか家庭を持ちたいとかいうレベルに発展させたことは一度もない。


 男性の荒々しさより女性のやわらかさの方が居心地がいいというくらいのレベル、いやいや、正直にいえば、男性にやさしくしてもらった記憶、ほとんどない。(笑)


 仕事上のポジションからも守られるより守る側だったし、顧客や取引先をふくめ、食事をご馳走してもらったことは皆無に近く、いつもこちらがご馳走する側だった。


 だから、従来の社会通念的にはあきらかに男性の立ち位置に何十年もいたわけで、このシチュエーションで恋愛が生まれる要素があったら教えて欲しいくらい。(笑)

 

 先刻の駐車場の鶺鴒ではないが、世間の荒波というやつに、ずっとビシバシ打たれつづけて来たので、性差を問わず好きとかきらいとか言ってる余裕、なかった。💦




      💻




 テレビ番組に触発されて考えているうちに、やや雲ゆきが怪しくなって来たので(こういうときはあれこれ恨み節が出やすい💦)、パソコンのメールをチェック。


 別の方が事務局を引き受けてくださっているメール句会の清記一覧が届いている。

 淡々とした自然詠が大半だが、なかにドキッとするような人事詠が混じっている。


 今回も辛い心境を率直に詠んだ佳句があったので、迷わず選句のひとつに入れる。

 うんうん分かる、わたしも同じ気持ちになるときがあるよ、そんな選評を添えて。


 むかしながらに男女に営まれる家庭も歳月の経過とともに構成人員が移り変わり、それに伴う哀歓が生まれるが、同性同士などの形態でも人情の基本は同じだろうね。


 とすれば、従来も一部の俳人連に酷評されて来た孫自慢俳句はいっそう時代錯誤のおもむきを増すだろうし、夫とか妻とかの語彙も、しだいに廃れていくのかもね~。


 マンネリ化が甚だしいオンライン句会は三年足らずで閉じる予定だが、コロナ前のリアル句会の延長のメール句会のいくつかは健在なので、新しい俳句に挑戦しよう。




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