24話 結果
一ヶ月のギルド戦が終了し、ギルド集会場は冒険者ギルド各々の資金を計上した。
「何だと!?」
執務室にて、渡されたギルド戦の報告書を見て、ゼフィールは驚愕のあまり椅子から立ち上がった。
1位 エクレア 30億G
フォールが静かに補足する。
「2位のマシュマロが8千万程だから、ダントツでエクレアの優勝だね。あまりに巨額だったので、僕がこの目で確認に行ったよ。確かにエクレアの建屋の中にあったよ。30億の金貨の山がね。公正中立を誓った主催者として、エクレアの優勝は偽りのない事実であることを断言しよう」
「どういうことだ!? エクレアの蓄積金額はゼロとなったはずであろう!? いきなり30億もの大金が沸いて出たとでも言うのか!?」
「そうだね。あの企画でエクレアが得られた資金はない。ゼフィールの言う通り、あの大金は突然現れたとしか思えない」
オウムのようにフォールは同じようなことを繰り返す。
はっきりと明言しないあたり、何かを隠していることは見え透いている。
フォールの蒼眼がある方に視線を向けて、逸らした。
ーー兵士長バルハロクが跪いている方を。
「バルハロク、お前何か知っているな?」
「ええー!?」とバルハロクがハニワ顔で仰反る。
「俺がですかー? 何が何だかさっぱりですよー! 知りませぬ、わかりませぬ、すみませぬ! それよりも、本日も陛下はお美しくていらっしゃる! 信仰領の奴らを鏖殺する陛下のお姿を拝見するのが、今から楽しみですなぁ!」
当然、そんな下手くそな誤魔化しが通用する実力領の王ではない。
ゼフィールはバルハロクの普段の10分の1にも満たない口に、宝剣を収めた鞘を一気に突き入れた。
「ゴガアアアア!?」
「会話もできぬなら、人間のように囀るな。ハニワ」
バルハロクの喉奥にまで鞘が収まっているにも関わらず、ゼフィールは容赦なく剣を上げていく。
纏わりつく生温い風も手伝い、バルハロクの巨体が串刺しになっているかのように持ち上がった。
「ゴェェェゲォォォ」
「このハニワは火入れが甘いな。内からじっくりと焼けば、馬の装飾品とするくらいの使い道はあるか? それとも中を抜き土器とするのが良いか?」
ゼフィールの声は怒気で低く、今すぐにでも中身を抉られそうな迫力があった。
「ゴギギガゲガギガゲガ! ゲガ! ガギギガガ!」
「申し訳ありません、陛下、お許しを」と、バルハロクは空中で必死に謝罪した。
口から剣を抜かれた後、号泣しながら事の経緯を説明した。
説明を終えて、地面に額を打ち付けながら尚も謝罪するバルハロク。
そんな大男に見向きすることなく、ゼフィールは魔術を使い、その場から姿を消した。
◆
テオラギア家にて。
「実力領の人々は、戦闘力のない相手を軽視する傾向にある。全く、寂しくなるくらいその通りだね」
自室の窓辺にて、ルーシーは相棒のトカゲと語らった後、黒く泡立つ酒を空へ掲げた。
「乾杯。"雷の冒険団"を舐めてくれるなよ、ゼフィール陛下」
膝関節付きの義足で、しかと両足で立って。
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