24話 中型クリスタルの正体
アサヒ達は竜がいる地点から一時間程移動し、中型クリスタルの前で成果を確認をすることにした。
「ここまで来れば大丈夫だろう。それで、ディア、目的としていた物は見つかったのか?」
「はい。それらしきものを見つけたので採取してあります。わたしには魔力の色がわかりません。なのでアサヒさん、並べていくので、それっぽいクリスタルがあったら教えてください」
ディアが木箱から出て、鞄から様々なクリスタルを取り出していく。
鞄だけでなく、白衣のポケットや服の中からも現れて、地面にはクリスタル20個ほどが並べられた。
「……お前、それ全部持って帰るつもりか」
「当然です♪」
その中に赤色は2つあり、片方が強い輝きを放っていて瘴気を跳ね返している。
「これだと思う」
「確かにそのクリスタルの周りは晴れているように見えますね。それでは、この赤いクリスタルが瘴気のドロを浄化できるものか検証してみましょう。ペルセウス、瘴気のドロを出してください」
「わかった」
「オロロロロロロ」とペルセウスが瘴気のドロを吐き出した。
ディアが吐きそうな顔でそれに近づく。
「そ、こに、この赤いクリスタルを実際に落として、みま、しょう」
「……俺がやろう」
ペルセウスが出したブツに赤いクリスタルを落とすと、黒いドロが一瞬で透き通った水たまりのようなものに変わった。
「間違いない。俺達がここに来るのに通った水たまりだ」
「これで仮説は実証できましたね。『この赤いクリスタルは浄化の属性である』と。一方はこれで論証完了です。もう一方はまだですが」
「もう一方?」
ディアは躊躇なく明言する。
「マザークリスタルはこの赤いクリスタルと同様、浄化の属性を持つ遺物であるのか、否か。というものです」
「それまだ考えていたのか。マザークリスタルは浄化の光で遥か昔から人々を守ってきた。疑うやつはお前くらいだろうな」
「研究に固定観念は障害でしかないのです」
瘴気を食品加工に使うことといい、国の守り神であるマザークリスタルに疑念を持つことといい、ディアは相変わらず非常識な感性をしている、と思う。
しかし、その脅威の発想と思考力こそが、知を制覇する世界征服に欠かせないものであり、彼女の強みであった。
「これまでの探索で、中型クリスタルのかけらがクリスタルの首飾りとして機能していたことと、マザークリスタルと同じ性質だったことから、『中型クリスタルはマザークリスタルの小さいサイズである』と断定します。
それで、マザークリスタルに関して以前から試してみたいと思っていたことがあるのです。
アサヒさん、竜に対抗する武器にしたように、この中型クリスタルを引っこ抜いてみてくれませんか?」
「マザークリスタルを引っこ抜いたらどうなるのか、帰る前に確認しようと言うことか。お前が望むのなら元の世界でやってもいいんだぞ」
「あははははは。アサヒさんが言うと冗談に聞こえないのです」
「はははははははははは」
「ホホホホホホホホ。笑ってないでナンか言えよ」
三名でしばらく笑い合った。
ともあれ、中型クリスタルが抜ける瞬間を全員で観察することになった。
「いくぞ」
「お願いします」
アサヒは身の丈以上の中型クリスタルを抱えると、ボコっと上に引き抜いた。
「「「……」」」
「俺には青白い光が地面に逃げていったのが見えた」
「オナジク。ナンカ嫌いな光だった」
「わたしには白い根っこみたいなのが地面に逃げていくのが見えました」
「……何だと?」
「根っこがあり、時間が経つと成長する生物……それじゃあ、マザークリスタルって……」
「ショクブツ?」
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