第71話 とある大学生時代
最近、琉希の様子がおかしい。サークルは違うはずなのに、飲み会にはついてくるし、お酒を一滴も飲ませてくれないし、他の男子と喋っているとしれっと顔を出して追い払おうとする。これでは私には恋人がいつになってもできない。
飲み会終わりの帰り道、琉希は私の家までついてきた。
「寄ってくの?」
「杏子がいいなら」
彼氏はいないし幼馴染だからまあいいかと部屋に上げると、琉希は「他にも男を部屋にあげたことあるの?」なんて聞いてきた。いや、あなたが密着してるので上げる男もできないんですけど。そう心の中で毒付きながら、「あると思う?」と聞いてみた。
「僕の知る限り……ないかな」
ぽつりと琉希が呟く。
「大当たり」
そっけなく返すと、「じゃあ、何で僕は上げたの?」と聞いてきた。
「え? これから飲み直すんじゃないの?」
そう答えると、「お酒を飲んだ男女がどうなるか、知ってる?」と大真面目に返された。
えー、でも琉希はないでしょと思いつつも、「じゃあ、りんごジュースにしとく?」と訊くと、「アルコールじゃないならまあいいか」と承諾してくれた。
それにしても、どうして琉希はいつも飲み会の帰りに家まで送ってくれるのだろう。最近私と同じアパートに引っ越してきたみたいだし。
「これってストーカー?」
「え、なに。杏子ストーカーされてるの? 相手は誰?」
ぽつりと呟くと、琉希は食い気味に訊ねてきた。
「気のせいだよ」
まさか本人だとは言えず、お茶を濁す。
「でも、こういうのって早め早めの対処が必要なんだよ」
そうして私は本人からストーカーに遭った時の対処法を講義形式で学ばされた。
「何かあったらすぐ僕を呼ぶんだよ、わかった?」
もしかしたら、琉希はあの頃すでに裏で動き回っていたのかもしれない。そう思うと、少し寒気がした。
毒舌姉さんと腹黒ショタ 今泉 叶花/宮園 れいか @imaizumi_kyoka
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