第28話 ナイーダの想い

 どうして、どうしてこんな風になってしまったんだろう。


 いつから、いつから彼に普通に接することができなくなってしまったのだろうか。


 明らかにここ最近は以前よりもお互いがお互いを良き相棒同士としていい雰囲気を保っているはずなのに。


 なぜ、自分だけがこんなに意識してしまうのだろうか。


 アルバートが笑った。


 ただそれだけなのに。


 彼が自分に笑いかけたことはほとんどなかった。


 ずっとリリアーナの側について彼のそれを見てきたではないか。


 今さらこんな気持ちになるなんて、絶対変だ。胸の痛みにまた泣きそうになる。


『君は、彼を意識しているんだよ』


 以前言われた、エリオスの言葉が頭をよぎる。そんなことあるはずない、そう思いたい。


「あ、あの方が変なこと言うからだ」


 そうだ。あの日からだ。


 自分がおかしくなったのは。


 そう自分に言い聞かせるようにナイーダは自身の頬を力いっぱい両手で打った。


「目を覚ませ、ナイーダ。そんなことは絶対にないんだ」


 絶対にない。


 あの騒がしい貴婦人方のようにアルバートに心を動かされているはずがない。


 そもそもこんな気持ち初めてだった。


 だからこそナイーダは気のせいだということにした。


(でも……)


 それでもあの時、リリアーナに嫉妬した。


 あの時の気持ちだけは否定することができなかった。

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