第13話 はじまりの物語

 幼かったあの日、父上はアルバートと共に、隣の国から嫁いできた小さな姫君を紹介するとナイーダに言った。


 幼い頃のアルバートとナイーダは、大人たちのわだかまりをものともせず、また性別への意識にも疑問をもう事もなく、毎日楽しく遊んでいた。


 そんな時、アルバートは言った。


『俺、やだよ。子供のおもりなんて……』


 アルバートとその姫君はたった二歳しか変わらないのに、とナイーダは言いかけたが、やめた。


 毎日彼と遊んでいるのは楽しかったし、彼のことやそんな大切な時間を誰にもとられたくなかった。


 でも、初めてリリアーナを見たアルバートは違っていた。


 顔中を真っ赤にし、ぽかんと彼女に見入っていた。子供心でも、あの時、彼はリリアーナに心を奪われてしまったのだとナイーダにもわかった。


『守ります! 絶対に!』


 だからその後、彼が笑顔でそう言ってのけた時も、さっきと矛盾してるじゃないか!とはあえて言わないでおいたのだった。

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