第7話 報酬

見事な庭園だったねぇ~

金かかってんなぁ~

いやぁ~あーゆーの見るとさぁ、花とかよりも

制作費とか維持費とかが気になっちゃうよねぇ。

手入れも大変だろうなぁ~って。


自然の森とか林とかってウジャる程に雑草が生えてるじゃん?

あれくらいじゃないと虫に食いつくされて丸坊主になるのよ。

人が手を入れて整えた植栽しょくさいなんてあっと言う間よ~

だからしょっちゅう駆除しないと駄目なのよね。

それにさぁ、見た目重視で品種改良したのって病気に弱いの。

ぜにの花を眺めてるようなもんよ。


え?情緒じょうちょ

んなもん知るかぁ~い!


続いて案内されたのは日当たりの良いテラス。

丁度お昼どきだね。

程なくサイモンがやって来た。


「如何じゃったかの?」

「はい、とても素敵な御庭で御座いました」

「そうであろう?自慢の庭じゃ」

「聖女様の彫像ちょうぞうが素晴らしゅう御座いました」

「おぉ、分かるかの?大聖女様じゃよ」


寄り添い天に向かって手を差し伸べる二人の少女。

エルサーシアとルルナをかたどったのだと言う。


『ぜんぜん似て無いわよ』


ふいに姿を現したリンゴちゃん!

まぁ、確かに似て無かったよね~

でも彫像なんてそんなもんだよぉ。


「リ!リンゴちゃん・・・」


人前に出すなと言われてたからオロオロしちゃった。

サイモンは目を見開いてリンゴちゃんに釘付け~

前回は離れた所から遠目に見ただけだったもんね。

ほらほら~じっくり御覧なさぁ~い

かぶりつきだよぉ~

でも触っちゃダメよん!


「あ、あの、わ、私の契約精霊のリンゴと申します」

「おぉ・・・なんと素晴らしい・・・」

「え?」


だから触っちゃダメだって!

こらっ!

手をだすなっ!


カプッ!


「うわっ!」

「キャァァァァァァァァ!リンゴちゃぁ~~~ん!」


ほらぁ~言わんこっちゃない~

噛まれちゃったよ~

甘噛みだから大した事は無いけどね。

それでも相手は公爵様だからねぇ、

イリスちゃん真っ青になってるよ。


「ももももも申し訳御座いません!公爵様!

どうか!どうかお許し下さいませっ!」

「良い、良いのじゃ、これ、そんな事せずとも良い」


その場にひざまずこうとするイリスをサイモンは止めた。

ほら!何とも無いよ!大丈夫だよ!と指を見せる。

あらあら、イリスちゃん目に涙がこぼれそうだよ。

ふん!とふんぞり返ったリンゴちゃん。

この八角紋が目に入らぬかっ!って感じ?

チロチロと舌が可愛いね!


『これでアンタにも聞こえるでしょう?』

「なっ!ま、まさかっ!言葉を!」

『私が誰だか知ってるんでしょう?こないだもじっと見てたわよね』


なぁ~んだぁ、リンゴちゃん全部お見通し?

だからおとなしくしてたのか~

サイモンがどーゆー奴か見極めるつもりだね!


「十二支精霊の巳、リンゴ殿とお見受け致す」

「え?」

『その通りよ』

「え?え?え?」


なんで知ってるの?

口に出す必要が無いくらい、そーゆー顔になってる。

馬鹿っぽいからやめなさい。

可愛い顔が台無しよ。


『で?イリスをどうする気なの?』

「我がヘンベルツ家に養女として迎え入れる所存しょぞん

「え?」

『合格よ、命拾いしたわね』

「かたじけない」


「え?え?え?えぇ~~~!」


***


帰りの馬車の中でハロルドは、まだ夢心地だ。

期待以上の収穫にのぼせていた。


「うふふふ、家門の不名誉にどうなるかと思ったが、

どうしてどうして、親孝行をしてくれたものだ」


天下の大問屋ゴドローフ商会と直の取引を約束された。

当然、間に業者を挟むより高く買い取って貰える。

通常、子爵家などでは適わない特別扱いだ。

宿に山と積まれた贈り物は自由にして良いとの事だ。

イリスには新たに用意するそうだ。

あれはあれでひと財産だぞ!

見事な宝飾品の数々、支度金替わりでもに過ぎる。

第一、支度などしていない。

贈り物の衣装を着せて連れて行っただけだ。

丸儲けじゃないか!

そうと分かっていれば一番安そうな飾りにすれば良かった。


いやいや、どれもこれも一流品で甲乙つけがたい物だ。

お前にそれが分かるものかよ。

まぁ、イリスの誕生に一役買った事へのご褒美だ。

せいぜい気分よく領地に戻るが良い。


お前の出番は終わったのだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る