第7話 元凶はやっぱり旦那様?
この
誰も彼もが神の権能の末端を得て喜び、「花女神様に感謝を込めて年に数回祝わせてほしい」と花女神に告げ、彼女は快諾し、人と神の関係は良好だった。
少なくとも数年間は──。だが一部で「女神の力をさらに引き出せないか」と画策する者たちがいた。宴の日に花女神を酔い潰し彼女が髪に生やしている《赤い果実》を口にして、神々と同等に近い力を得た。
膨大な魔力、人智を越えた神の力。
謀られたと気づいた花女神は激高するも、すでに同等の力を持った人間たちに勝つことは難しく、地上を去る時に呪いをかけた。
「身に余る力を得た愚か者よ。自らの魔力によって内側から滅びるがいい!」と。
激昂、絶望、動揺、焦燥、嫉妬、執着などの感情が大きく揺れ動いたとき、魔力制御ができず暴走することを
この辺りはゲーム設定でも魔力暴走による自爆の際、花火めいた光によって周囲もろとも破壊してバッドエンドの文字が何度も出てきた。
この世界の人々はみな多かれ少なかれ、胸の奥に《
多感な時期であれば感情の制御が難しく、魔力を暴走させてしまう生徒が多い。
王侯貴族に魔力量が高い者が多いのは、花女神の《赤い果実》を口にした子孫たちだからだ。もっとも花女神の力を強奪したなどの事実を隠蔽して
それらのことを思い出し、今回の異常の原因を《赤い果実》の影響あるいは副作用と推測に至ったのだろう。
「私は転生したときから魔力がないイコール《
暢気に旦那様との生活を楽しんでいる状況じゃないのかもしれない。
楽観視していた気持ちを引き締める。二人が指摘してくれなかったらきっと気付くまでに時間がかかっていただろう。
「私、ここに来るまでに考えたんだけど、シャルが
「え」
ベアトリーチェの指摘に私は心臓がドキリとした。
心臓がバクバクして煩い。
「裏切り。酷いこと……」
「ベアトリーチェ様、アイリス様、その辺りのことは主治医が――」
ベアトリーチェは漆黒の扇子を開いてハンナの言葉を遮った。
「現状維持をしてシャルが回復するならいいけれど悪化しているじゃない! なら辛くても原因解明をすべきだわ」
「先延ばしにして取り返しの事態に陥ったらどうするのよ」
「それは……そうですが、これ以上、奥様を追い詰めたら……」
ベアトリーチェやアイリスの言葉も、ハンナの反論もどちらも私のことを慮ってくれている。それが取って嬉しかった。
「差し出がましいことを……。申し訳ありませんでした」
「いいのよ。
「ありがとうございます。……お茶のお代わりを用意してきます」
そう言うとハンナは一礼した後、退出した。
僅かな沈黙。
パキパキ、ペキペキ。
(あ、また……)
殻が割れる亀裂音は鳴りを潜めるどころか、さらに大きな音を立てていく。
これは幻聴なのだろうか。
それとも──。
(卵の殻が割れるような音? ……でもベアトやアイリスが気付いた様子はないから、私だけにしか聞こえていない?)
空気を変えようと私は明るい声で話題を変える。
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