迷子の風船
外清内ダク
迷子の風船
どこへ行くべきかなんて知らないが、とにかく僕は旅立ちたいんだ! 同族を強引に振り切って、
学者たちの観測によれば、この星は赤道半径7200kmのガス惑星で、僕らが生息可能な領域、すなわち
だから僕らはずっと、この狭い薄い牢獄の中に閉じ込められてきた。有史以来3000年……3000年もずっとだ! そこで何十人か何百人ずつ身を寄せ合って、まるでひとつの生物みたいに互いの体温を共有して生きる。それが僕らの生態だ。この
僕にはそれが、我慢ならない。
僕は
すると
「お前はどこへも行けないよ」
うるさいよ。
どうして分かる? 試してみたことないくせに!
だから僕は上へ行く。もちろん天上層の希薄な大気への対策は考案済みだ。まず下層の厚皮生物から作った布を身体に貼り付け皮膚を補強してから、針で自分自身に穴を開けた。要は破裂しなけりゃいいんだろ? 僕らの丸い身体の中はガスで満ちていて、それが膨らんで破裂するのが問題なんだ。なら、あらかじめガス抜きしておけばいい。ま、少し痛いけどね。
さあ行こう。赤道半径7200km、その頂点に達したとき、僕は何を見るんだろう。どこへたどり着くんだろう。行き先は知らない。戻る家もない。寄る辺のない迷いびと……だけど不思議と怖くはない。僕は昇るんだ、永遠に。行くぞ――まだ見ぬものを探し求めて!
THE END.
迷子の風船 外清内ダク @darkcrowshin
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます