本編

アバン


1 ロッジ


  新井孝哉(17)、畔上将也(17)、宇野健(16)、福永瑛理(16)到着。

新井「皆はいつ来るんだっけ?」

  将也、手帳を開く。


2 電車の中


将也N「石黒さん、棚瀬さん、丹羽さん、亀田さん、守屋さんは次の電車ですね」

  騒ぐ丹羽京(16)、怒る棚瀬美雨(17)、止める亀田雅(16)。

  困る守屋司郎(15)、我関せずの石黒果奈美(18)。


3 駅前


将也N「小林兄妹と越智さんは更に一時間後のようです」

  駅で待っている越智奈々代(15)。

  のんびり到着の小林祐一郎(17)と小林麻予(15)。


4 ロッジ


新井「そっか。二時間くらいしたら待ちに待った……」

  後ろで機材を準備している健と将也。

  木の陰に隠れて青い顔をしている瑛理。

新井「撮影の開始だ!」



オープニング ※セリフはなしです


5 ロッジ


新井「ロケハンに行ってくる」

将也「じゃあ、私は着ぐるみを出しておくか」

  瑛理は頭に着ぐるみの被り物をつけている。

健「何してるんだ?」

将也「その子、恥ずかしがりなんだ」

健「どうでもいいが、オレが丹羽に勝つ邪魔だけはするなよ」

新井「どうやって京に勝つんだ」

健「オレの映画の中で」

新井「おれっちのだよ。(拳を握り締め)今度こそ賞を獲って雅さんを喜ばすんだ」

健「何だ、その下心」

新井「お前こそ」

将也「(怒りマーク)仕事しろ」

新井&健「はい」

  瑛理は被り物をしたまま仕事している。


6 電車の中


  京、カメラを持って遊んでいる。基本声のみ。

  画面は雅を映す。

京N「亀田」

雅「(顔を真っ赤にして)わたしはちょっと……」

京N「じゃあ。しろっぺ」

  司郎は、カメラを向けるときりっとする。外すと気が抜ける。二回繰り返す。

司郎「ちょっと、丹羽先輩」

京N「はははは」

  果奈美を映す。

京N「おい、石黒」

果奈美「(顔を向けず)先輩なのよ。『さん』くらい付けなさいな」

京N「女優だろ。何かして」

果奈美「金、取るわよ」

京N「(ボソリと)腹黒」

果奈美「何ですって!」

  と怒った顔を上げる。

京N「その顔の方がお前らしいよ」

果奈美「どういう意味よ」

  カメラが美雨へ移る。

  じっとしている。

美雨「何よ……」

京N「美雨ってカメラ映り良いぞ」

美雨「そ、そう?」

京N「ああ。女優でいけるかも」

美雨「褒めすぎじゃない?」

京N「魔界刑事ゴレイディン。世界をはぐれ魔人から救う為参上!」

美雨「ちょ、ちょっと―――」

京N「天魔伏滅!」

美雨「(立ってポーズを取り)その相棒! 久和キナコ―――推参!」

京N「いいねえ―――」

雅N「京くん、カメラが録画になってないよ」

京N「そりゃそうだ。撮り方知らないもん」

  美雨はポーズのまま顔を赤らめる。恥ずかしさから怒りへ変わる

美雨「京!」


7 駅のホーム


麻予「お兄ちゃん、サンオイル持った?」

祐一郎「バカンス用品は全部揃ってる」

麻予「枕は?」

祐一郎「入ってるよ。イルカのサムくんもね」

麻予「そこまで言わなくていいわ。見せなくてもいい!」

  奈々代は本から顔を上げる。

麻予「何よ」

奈々代「妹のマネージャー?」

祐一郎「それが悦びなんだ」

奈々代「顔良し、ルックス良し、性格良し。唯一の難点はシスコン―――噂は本当みたいね」

祐一郎「そんなに褒めなくても」

奈々代「褒めてないわよ」

  麻予、奈々代に一歩近付く。

麻予「麻予たち、親戚の海外ウェディングで、成田から直行なんです」

祐一郎「新潟は日本だぞ、麻予。あと、あそこは成田じゃなく、上野だ」

麻予「お兄ちゃんは黙ってて」

祐一郎「はい……」

麻予「あなたは何故遅れたのかしら?」

  奈々代、艶かしい流し目をする。

麻予「な、何?」

奈々代「訊きたい? 本当に?」

  奈々代の雰囲気に、麻予押し負ける。

奈々代「訊く覚悟が、あなたにある?」

  電車が入ってくる。

麻予「いえ。いいです―――」


Aパート


8 ロッジ前


  京たちが到着。撮影準備中の新井たちに合流する。

京「孝ちゃん、着いたぞ」

新井「おう」

京「コレ、頼まれてた物」

  京はカメラを渡す。

新井「来たナ~二台目のカメラ。これで前はできなかった同時撮影が出来るぞ」

雅「去年は同じシーンを別アングルで何回も撮ったもんね」

新井「そう。この二つのカメラで、去年惜しくも逃がした入賞を……いや。もっと上を目指すんだ。おいしい汁をもっと吸うんだ!」

美雨「下心ダダ漏れだぞ」


9 ロッジのロビー


  小道具の準備を手伝う京と司郎。

司郎「どうして新井先輩は怪獣映画を撮らないんだろう。絶対いけると思うんだけど」

  将也が足を止める。

将也「予算的に難しいからだよ。巨大さを出すためのセットや、実物大の足とかね」

司郎「なるほど」

将也「だけど巨大生物ものは新井さんの目標だから、きっとそのうちやると思うよ」

司郎「その時にもぼくを呼んで欲し―――」

果奈美N「何よ、このロッジ! わたくし女優ですわよ!」

  司郎、びくつく。

  誰とも無しに果奈美は文句を言い続ける。

京「怪獣役は決定だな」


10 瑛理の部屋


  回想

  瑛理は頭を抱え、隅で脅えている。雅が落ち着かせようと肩に手を掛ける。

瑛理「マスク取られちゃったから、もうムリ~。知らない人ばっかりだもん」

  回想終了


11 ロッジのロビー


  雅は新井に報告する。

雅「―――というわけなんです」

新井「それは困ったな」

  傍らで聞いていた京が思いつく。

京「おーい、石黒」

果奈美「呼び捨てにしないでって言ってるでしょ」

京「それ貸してくれ」

果奈美「え?」


12 瑛理の部屋


  借りたサングラスを瑛理に付けさせる。

  瑛理は「よし!」とガッツポーズ。

雅「それで良いんだ……」


13 ロッジのロビー


  果奈美は雅に文句を言っている。

果奈美「女優としての待遇が足りないですわ。出来ないなら、わたくし帰りますわよ」

雅「それは困りますぅ」

建「ただいま」

  果奈美が健に気付き、頬を赤らめる。

雅「え?」

  健は真っ直ぐ新井の所へ向かう。

新井「どうだった?」

健「砂漠のシーンで使えそうな砂浜があった」

  果奈美が健に歩み寄って、横に立つ。

果奈美「(よそいき声で)初めまして。石黒果奈美と申します」

  見ていた皆はびっくりする。

健「ああ。女王様役の人か。よろしく」

果奈美「こちらこそ」

京「どうした、変な声出して。腹でも壊したか?」


14 ロッジのロビー


  しおらしい果奈美と無愛想な健を京と美雨は見ている。

美雨「石黒先輩、急にどうしたのかしら」

京「ああ。もっと迫力を出せなければ、怪獣役は美雨に取られるぞ」

美雨M「はっ! ワタシ気付いちゃった。石黒先輩、宇野くんを好きになったのよ」

美雨「(笑顔で)京、もしかして石黒先輩―――」

  京、美雨の言葉を手で遮る。

京「(真顔で)美雨、そこは言うべき所じゃない」

美雨「え―――そう? ああ、そうね」

京M「お腹の痛みは自分で乗り越えるしかない。頑張れ、石黒。波が引くのを待つんだ」

美雨「多分あなた、地味に勘違いしてるよ」


15 ロッジのロビー


  新井が京に歩み寄る。

新井「これから撮影の段取りを決めるぞ」

京「わりい。おれ、買い出しに行かないと」

  健、それを聞きつけて近付いて来る。

健「お前、本気でオレとスタント対決する気あるのかよ!」

京「ふっ。ウザ健よ。この一年間の修行の成果。しっかり見せてやるよ」

健「ほう」

京「秘伝のレシピで、お前の舌を唸らせてやる!」

新井・健「料理対決かよ」


16 ロッジのロビー


新井「仕事は準備八割だ。今日やれることは今日やるぞ」

京「料理だって素材が大事なんだ」

司郎「すっかり料理人だ……」

奈々代N「来たよ~」

  麻予、祐一郎、奈々代、到着。両手に荷物。

  祐一郎は麻予の荷物も背負っている。

祐一郎「もうだめだ……」

麻予「麻予も……」

  二人ともへたれる。

奈々代「買い物もしてきたよ」

  京に買い物袋を渡す。

京「ホント?! (袋を覗き込む)おお。おれが買おうと思っていたものが全部入っている! おめえ、すげえな」

  奈々代、ドヤ顔。

皆M「いやいや、怖いだろ。普通―――」


17 同ロッジのロビー


新井「皆揃った所で、ロケハン行くぞ!」

京「ところがどっこい! おれは晩飯の下ごしらえだ!」

美雨「じゃあ、ワタシも料理を手伝うわ!」

  新井と奈々代に美雨、引きずられて退場。

新井「去年のこと、忘れたのかなあ?」

奈々代「今年はやめてねえ」

美雨「すみません、つい……」

祐一郎「(唖然として)何があったのだ?」


18 ロッジの調理場


  京と雅と美雨。

T「(美雨へフキダシ)結局残って料理当番」

  てきぱき動く京と雅。

  美雨はデザートのリンゴ剥き。するっと手が滑る。両手が空。

美雨「(手を見て)あれ?」

  リンゴは雅が作っていた料理の中へ。包丁は京を掠めて柱に突き刺さっている。

京「(包丁を取り上げ)美雨は包丁禁止! おれを殺す気か!」

  美雨、調理場の角で拗ねる。

雅「あ~あ……」

美雨「いいもん、いいもん。どうせ、アタシは不器用ですよ」

  京、閃く。

  間。

  美雨は上機嫌に、レタスを千切ってボールに入れている。

京「終わったら、これとドレッシングを入れるんだよ」

美雨「うん、うん」

雅M「子供のお手伝いみたい」


19 同調理場


  雅と美雨の仕事は終了。京が仕上げをしているのを見ている。

美雨「(小声で)ワタシね、あいつに……京に告白されたことがあるの」

雅「え―――?」

美雨「中学の時よ」

  京、ご機嫌に調理をしている。

美雨「その時は思わず断っちゃったんだけど、その後もあいつ、全然平気で、全く変わらなくてさ」

雅「美雨さんに心配かけないようにしてたのでは?」

美雨「ワタシもそう思って……。あいつの笑顔を見てるのが辛くなってきたんだ」

雅「それで違う高校に?」

  美雨、頷く。

  京、盛り付け中。

美雨「離れてみて、ワタシの判断は正しかったのか、分からなくなったの。そんな時、孝哉からサークルの誘いがあったの」

雅「お三人は幼なじみですものね」

美雨「うん。京もワタシも孝哉の夢のためにアクションの練習をしてたんだから、京もきっとサークルに参加すると思ったわ」

雅「それで去年は撮影に参加してくれたんですね」

美雨「(照れながら)もちろん、京のためじゃなくて、ワタシのスタントを役立てるためよ。(真顔になって)でも、去年撮影が終わってからは余り会わなくなって……」

雅「そうなんですか?」

美雨「近所だし、家族同士が知り合いだから、全くではなかったけど。―――意地を張って、高校を変えたせいで、あいつの日常が全く見えなくなってしまった。(雅を見て)あいつと毎日いると、大変でしょ」

雅「そうでも―――ないですよ」

美雨「今の間……」

  二人、笑う。

美雨「雅ちゃんはどうして京と知り合ったの?」

雅「わたしは……同人マンガを描くのが趣味だったんだけど、誰にもいえなくて―――。でも京くんが認めてくれた。わたしはそれが嬉しかった」

美雨「そうか。あいつが孝哉に雅ちゃんを脚本家として薦めたんだね」

雅「はい。わたしが役に立つ場を用意してくれたのが、京くんなんです」

美雨「ふうん―――」

  と、京の背中を見る。

美雨「やっぱりこうして顔を合わせてると、京がいる毎日がワタシの日常だったんだなって感じるな」

雅「美雨さん……」

美雨「なんか色々失敗した気になるのよね」

  美雨、調理場から出て行く。

雅M「(ドアを見て)やっぱり美雨さん、京くんのこと……」

京「完成!」

  雅、京の背中を見る。


20 ロッジのロビー・朝


  司郎、撮影準備中。

瑛理N「あのー、おはようございます」

司郎「福永さん、おはよう(振り向いてビックリ)ございます……?」

  特撮用メットを被ったままの瑛理。

司郎「ずっとそのままだったんだ」

祐一郎「福永くん、守屋くん、おはよう」

司郎「小林先輩、おはようございます」

祐一郎「今日は撮影日和ですね」

瑛理M(二人の会話の中で)「頑張るのよ、あたし。ここで好印象を与えることで愛が生まれるの。笑って挨拶して、それで、君は笑顔が可愛いねと言われ、それがきっかけで婚約して―――」

  妄想中の瑛理に奈々代が近付く。

奈々代「畔上さんがこれを探してましたよ」

  と、瑛理からメットを取る。

瑛理「(動転して)いや―――まだあたしには新婚旅行のハワイでフラダンスは早いのぉー」

  と、走り去る。

司郎「妄想が斜め上過ぎる……」


21 ロッジのロビー


  瑛理を慰めている京と雅。それを果奈美が見かける。

果奈美「ねえ、棚瀬美雨。わたくし気付いてしまいましたわ」

美雨「唐突に何です?」

果奈美「福永瑛理は丹羽京を好きなんですわ」

美雨M「確かに福永さんにとって、京だけが唯一普通に話せる男子。そういう仲になってもおかしくはない。ワタシが口を出せた義理ではないけど、京が女心を玩ぶような男だったら―――(京を睨む)ただじゃおかないから!」

  京、背筋に悪寒。

雅「どうかした?」

京「いや……今、命の危険を感じた」


22 海


  ボートで波に揺られている麻予。太陽はまだ午前の位置。


23 ロッジの一部屋


  メイク中の果奈美と健

果奈美「宇野くん、メイク大丈夫? 手伝おうか?」

健「いや、いい」

果奈美「この下地使ってみる?」

健「いや、いい」

果奈美「上手く行かない時は頼ってくれて構いませんわよ」

健「大丈夫だって」

果奈美「なんと言っても、わたくし女優の娘ですから。ほほほほ」

健「お前、変なやつだな」

  と、部屋を出て行く。

  果奈美、ガーン。

果奈美「(崩れ落ちて)違うの。全く違うの。上がっちゃてるだけなの……」

  それを見かける京と奈々代。

京「何だ、まだ腹痛いのか」

奈々代「京さんに色恋沙汰は理解できませんね」

京「ん?」


24 ロッジの外


  美雨に怒られている京。祐一郎が通りかかって目撃。

祐一郎「棚瀬くんって、学校の時と全く違うね」

美雨「そうですか?」

祐一郎「おしとやかで、人当たりの良い子だって評判だよ」

美雨「うへえ。そんなことありませんよ」

京「こいつ、昔から外面(そとづら)がいいんだよね」

  美雨の横目が、キラリと光る。京は恐れをなして、走り去る。

京「おお越智。何だ、手伝って欲しいのか」

奈々代「ボクを巻き込まないで」


25 海岸近くの洞窟前


  新井、カメラのチェックをしている。近付く雅。

雅「新井さん。撮影準備できましたよ」

新井「おお、雅さん。いつもすまないね。君に進行管理まで任せちゃって」

雅「わたしの担当は脚本ですからね。基本ヒマですし、こういう仕事の方が、本当は向いてるんです」

新井「今年こそ世間に君の作品を認めさせてやるからね」

  雅、微笑む。

  新井、照れながら目を逸らす。

新井「だけど、おれっちがカメラを始めた理由は――実は、雅さん。君だったんだ。君を撮りたくて、始めたんだ。そう、今からでも遅くない。おれっちの人生のカメラに君を収めて―――」

  と振り向く。

奈々代「みやちゃんなら俳優のセッティングに向かいましたよ」

新井「ええええー?!」


26 海


  ボートで波に揺ている麻予。太陽は真上。


27 洞窟内


  爆発シーン撮影のため、セッティングをしている将也。司郎と奈々代が手伝い。

  打ち合わせでもめる新井と果奈美。

  おしゃべり中の美雨と祐一郎、着ぐるみの瑛理。

  将也のおでこに怒りマーク。

  スタントでもめる京と健。止めようとあたふたしている雅。

  将也のおでこに怒りマーク二個目。

T「結局締め出された」

  新井、果奈美、美雨、祐一郎、瑛理、京、健、雅。

新井「おれっち、監督なんだけど……」


28 同洞窟内


T「暇つぶしで奥まで肝試しをすることに」

雅「(くじを差し出して)ということで、ペア決めです」

  新井と美雨。祐一郎と雅。着ぐるみ瑛理と健。京と果奈美。

全員M「何かイマイチ……」


29 同洞窟内


  全員、だらだらと歩いている。

新井「ペア制度廃止。ただ奥へ探検―――」

美雨「でも何もないね」

京「亀田。何か話をしてくれよ」

雅「そうですね。じゃあ、こんなのはどうです? (洞窟の景色をバックに声だけ)わたしの友達なんですけど―――」

  時間経過

雅「―――でも、そこにあったのはお墓だった……と、まあ、ありふれた創作ですけど」

  と振り向くと、誰もいない。

雅「ええええ?!」

  皆、走って戻っていく。

健「すまん、用事を思い出した」

果奈美「門限があるんでしたわ、わたくし」

祐一郎「麻予を迎えに!」

雅「ちょっと―――」


30 海


  ボートで波に揺られている麻予。太陽は夕方の位置。

  麻予、起き上がる。焼けている。


31 ロッジの調理室


  当番は果奈美と奈々代。

  落ち着いて料理する奈々代と必死で頑張る果奈美。

果奈美「越智奈々代。あなたのはカレー?」

奈々代「ボク、これしかレパートリーないんだ」

果奈美M「ホーホホホ。勝ちましたわ。わたくしのはフランス風の料理ですもの。これで宇野くんのハートを落としてみせますわ」


32 ロッジの食堂


  カレーを美味しく食べる健。

健「このカレー、うめえ!」

健に矢印T「カレー大好き」

  落ち込む果奈美。

美雨「あららら」

祐一郎「でも、この名も知らぬ魚料理も美味しいですよ」

  とフォロー。


33 ロッジの食堂


  皆揃っている。

雅「歩いて五分くらいの公共施設に、温泉がありますので、ご利用ください」

司郎「どうします?」

京「おれらはスタントの打ち合わせがあるんだ。汗かいちまうから、後で行くよ」

新井「先に行ってな」

司郎「はい」


34 温泉


  司郎、一人湯船に浸かっている。

  脱衣場に人の気配。

司郎「来た?」

  ドアを開けて入ってきたのは女子群。

奈々代「意外と広いですね」

雅「効能は疲労回復らしいです」

司郎M「ええええ?!」


35 温泉


  鼻まで浸かる司郎。

  全員洗い場。

果奈美「小林麻予。あなた真っ黒ね」

麻予「遊んでたわけじゃありませんよ」

雅「違うの?!」

  全員湯船へ移動。

美雨「麻予ちゃんは畔上くん狙いなんだってね」

麻予「監督から聞いたんですか。おしゃべりなんだから」

美雨「いや。小林先輩よ」

麻予「お兄ちゃん……」

  と拳を握り締める。

奈々代「何? 恋バナ?」

果奈美「主役に二枚目を出演させるため、小林祐一郎に声を掛けたら、出した条件が妹のために畔上将也を参加させることだった―――てのは皆知ってますわ」

麻予「別に恋人になりたいわけじゃないけど、全くアプローチに動じないのが気に入らなくて」

奈々代「まあ、生意気」

麻予「なんせ彼と別れたばかりのフリーですからね。こんなの今だけですよ」

果奈美「なんて下品な―――」

麻予「カナカナは誰が好きか分かりやすいですからね」

果奈美「ま―――」

  と顔を赤らめる。

麻予「みんなはどうなんですか? 好きな人とかいるんですか?」

  皆、押し黙る。

麻予M「メガネ巨乳の本音を引き出してやろうかしら」

  被り物の瑛理が近付いて来る。

麻予「うわっ」

瑛理「お兄さんは今フリー?」

麻予「え―――ええ。多分……」

  瑛理、頷いて、すーと去っていく。

奈々代「あのまま入ってたんだ」

雅「そろそろ出ましょうか」

  全員、湯船から出る。

麻予「麻予、ラムネ飲みたい」

果奈美「自分で買いなさいな」

麻予「ケチー」

  全員、脱衣所へ。

  一人残った司郎。

司郎M「ええええええ?!」


36 温泉施設の廊下


  新井と京が歩いてくる。

新井「確かに上手くいけば良い絵になるけど」

京「大丈夫。成功するから、おれの案を通して」

  反対側から美雨。

京「よお、美雨。フロはどうだった?」

美雨「何さ! このスケベ!!」

  とすれ違っていく。

  その後姿を立ち止まって見送る新井と京。

新井「なあ、京。おれっち、何かしたか?」

京「孝ちゃんは生きているだけでエッチだからな」

新井「そうか―――」


Bパート


37 食堂


T「その日の晩」

  健がシナリオを読んでいる所へ果奈美が通りかかる。

果奈美M「宇野くん、発見!」

  すすっと近付く果奈美。

果奈美「セリフのことで悩んでるなら相談に乗ってもよろしくてよ」

健「(シナリオを見たまま)うるさいな。悩んでるのはスタントのことだよ」

果奈美「わたくし、演技全般に詳しいからスタントも分かりますわよ」

健「いいから、放っておけ」

果奈美「ここはプロのわたくしにお任せを―――」

健「うるさいって言ってるだろ! このでしゃばりが!」

  と怒鳴る。

果奈美「で―――でしゃばり?!」


38 海岸近く


T「次の日」

果奈美「(元気なく)お~はよ~ございま~す~」

  慌てる皆。

新井「おいおい、あんなので撮影できるのかよ」


39 同海岸近く


  ゴレイディンパワード(京)が女王(果奈美)をビームサーベルで必殺斬り。

  女王の悲鳴を上げ、膝をつく。

女王「無念―――だ―――」

  倒れる。

  間

新井「カーット。OK!」

  女王役の果奈美、起き上がる。

果奈美「―――はあ……」

皆M「すごい、プロだ」


40 海


  ボートで浮かぶ麻予。

麻予M「あーあ。今日も一人でこうして浮かんでるだけ。全然嫌いじゃない。嫌いじゃないけど―――」

麻予「(ボソリと)寂しいなあ」

新井N「だから遊びに来てやったぞ」

麻予「え?」

  と起き上がる。

  それより早く、新井と奈々代がボートをひっくり返す。

麻予「ええええ」

  麻予、海に落ちる。


41 同海


  麻予、落ちて浅瀬に座ったまま、新井と奈々代を見上げる。

  楽しそうに笑い合う新井と奈々代。

麻予M「監督―――と越智さん―――」

  岸から駆けてくる祐一郎。

祐一郎「麻予ー!」

麻予M「お兄ちゃん―――」

  岸のパラソルの下に将也と司郎、瑛理。

将也「オイルを塗ってくれないか?」

司郎「どうしてぼくに言うんです?」

瑛理「……」

麻予M「畔上さんと守屋くん―――、それにえりえり―――」

  祐一郎が麻予の傍に駆け寄る。

麻予「どうしたの、みんな。……撮影は?」

祐一郎「それを説明するには、午前中の丹羽くんのスタントから語らなきゃね」


42 海、双子岩


  回想

  岩から岩へジャンプで跳び渡るゴレイディンパワード(京)。

祐一郎N「スタントの目玉。双子岩のジャンプを、丹羽くんは一発OKでこなしたんだ」

  カメラで撮り終えたシーンを確認するメンバー。

麻予N「それのどこに問題が?」

祐一郎N「ある男のスタント魂に火がついたんだ」

  健が手を握り締める。


43 海岸・砂浜


  回想

  須見トール(司郎)がワルフォード将軍(健)をビームガンで撃ち、倒すシーン。

祐一郎N「砂漠での宇野くんの最大にして最後の見せ場。撃たれて砂丘を転がり落ちるシーン」

  パターンを変えて砂丘を落ちる健。

祐一郎N「何度も何度も。新井くんがOKを出しても、自分が納得するまで、何度も何度も」

  健、倒れる。

祐一郎N「結局、暑さと疲労で倒れてしまったんだ」


44 海


麻予M「筋肉バカの宇野さんっぽいエピソードだけど、まあ、感謝しておこうかしら」

祐一郎「さあ麻予、お兄ちゃんと遊ぼう」

  岸では司郎が将也の背中にオイル。瑛理は座ってそれを眺めている。

  奈々代は背泳ぎで浮かんでいる。

  新井はボートに立とうとしてひっくり返って飛沫を撒き散らす。

麻予「他の皆は?」

祐一郎「石黒くんと亀田くんは宇野くんに付いている。丹羽くんと棚瀬くんは見てないな」

麻予「そう―――。(考える)やっぱり皆いた方がいいわ!」

  麻予、岸へ走り出す。

祐一郎「おい麻予!」

麻予「ちょっと行ってくる!」

  海に静けさ。

T「微妙なメンバーが残ってしまった」

  新井がボートでひっくり返ってバカ笑いする声だけが響く。


45 ロッジ。健の部屋


  ベッドに眠る健。その横に果奈美と雅が座っている。

果奈美「わたくし、どうしてこう不器用なのかしら」

雅「石黒さん……」

果奈美「人付き合いは、元々上手い方ではないんだけど、こんなに思い通りにいかないのは初めてですわ」

雅「わたしが言えたことではありませんけど、宇野くんもそれほどコミュニケーションが上手い人ではないですよ」

  果奈美、雅を見る。

雅「大丈夫。石黒さんの一生懸命はきっと通じますよ」

果奈美「亀田雅。君、良い奴だな」

  スパーンとドアを開けて麻予登場。

  驚く果奈美と雅。

麻予「さあ、皆で海へ行きますよ!」

果奈美「え?」

麻予「せっかく海に来たんですから!」

雅「目的は撮影合宿よ……」

  果奈美、目で麻予に訴える。

  麻予も気付く。


46 ロッジ。廊下


  麻予、雅を引きずるように連れて行く。

雅「ええええ。あたしだけぇ?」

麻予「丹羽っちとミウミウは?」

雅「知らないですぅ―――」


47 ロッジ。健の部屋


  二人きり。

健「騒がしいな……」

果奈美「宇野くん―――」

  果奈美、宇野の頭のタオルを水で冷やす。

健「―――撮影は?」

果奈美「今日の分は終了しましたわ。午後はお休みです」

健「そうか……」

  果奈美、無言でタオルを乗せる。

  部屋は再び静かになる。


48 ロッジ。二階のバルコニー


  海を眺めている美雨。

美雨M「京のスタントはすごかった。しかも一発OK。見ていて分かるわ。この一年間、かなり修行したのね。―――それに引きかえワタシは……。やっぱり別の学校へ行くんじゃなかった―――」

京N「(声だけが上から)おーい、美雨」

美雨「―――え?」

  びたんっとバルコニーの手摺に京が着地。

  美雨、ビックリする。

京「おっす」

美雨「おっすじゃないわよ! どこから来たのよ!」

京「二階のバルコニーから」

美雨「ここが二階よ! おバカ!」


49 同バルコニー


京「どうした美雨、元気ないな」

  と手摺に腰掛ける。

美雨「(目を逸らし)去年撮影が終わってからほとんど会ってなかったじゃない。どうしてた?」

京「ああ。アクション三昧だったよ」

美雨「へえ」

京「映画やドラマで良いスタントを見つけたら練習して、出来るようになったらまた映画を見て―――を繰り返してた」

美雨M「そうか。昔から何一つ変わってないアクションバカのままってことね」

  美雨、微笑む。

京「屋根から落ちるとか、エスカレーターの逆走とか、壁から隣の民家へ飛び移る下町パルクールとか」

美雨「いやいや、軽犯罪だし、それ」

京「上手い自動車へのぶつかり方とか、橋から川へダイブとか、電車の前を素早く通り過ぎるとか、やってみたいんだよね」

美雨M「こいつ監視しておいた方がいいんじゃね?」


50 同バルコニー


美雨「そんな危ないことをしないように、止める人が必要かもね」

京「そうかなあ……」

美雨「一人にしたら危険だし、ワタシが一緒に修行してあげようかしら」

京「本当か?! そりゃあ、良いアイディアだよ」

美雨「(照れて)そ―――そう?」

京「ああ。一人だと限界あるからな」

  美雨、顔を逸らし、嬉しそうな笑顔を浮かべる。

京「中学三年くらいから、美雨ってよそよそしくなったからな」

美雨「それは―――(京を見て、再び目を逸らし)ワタシが京をふっちゃったから気まずくて―――」

京「ん? おれは美雨にフラれた覚えはないぞ」

  顔を見合わせる二人。

二人「―――え?」


51 同バルコニー


  美雨、京の胸倉を掴む。

美雨「あなた、ワタシに好きって言って、でもワタシは付き合うつもりはないって―――」

京「そんなのいつも言ってたじゃん」

美雨「え―――? えーと、そういえば……ええ、じゃあ……」

  雅を連れて麻予がバルコニーへ入ってくる。

麻予「おーい、ミウミウ、丹羽っち、海行くよ、海!」

雅「今、お取り込み中なのでは?」

  青空をバックに声のみ。

京N「おお、海か。行く行く」

美雨N「あ、コラ! まだ話しは終わってないぞ」

雅N「やっぱり、お取り込み中だったでしょ」


52 海


  全員岸にいた。

  まだオイル中の司郎と将也。座っている瑛理。

  飽きて転がっている奈々代。疲れて倒れている新井。

京、美雨、雅、麻予N「何があった?!」


53 ロッジ・食堂


  誰もいない。片づけが済んで、寂しい感じ。

T「晩ご飯後。皆各々自由時間を堪能していた」


54 ロッジ・新井の部屋


T「撮り終えたシーンをチェックする者」

  京は画面を食い入るように見ている。隣に雅。

矢印付きT「してない者」

  新井は雅を撮ろうとして、嫌がられている。


55 ロッジ・中庭


T「花火をする者」

  麻予はススキとスパークを回して光の軌跡を楽しんでいる。

  司郎はヘビ花火。祐一郎は線香花火。将也は打ち上げ花火。

  空に花火が光る。


56 ロッジ・健の部屋


T「静かに過ごす者」

  ベッドに座る健と、イスに座っている果奈美、窓の外の花火を見ている。


57 公共施設の温泉


T「温泉に入る者」

奈々代「昨日、司郎くん―――」

瑛理「いましたよね……」


58 ロッジ・廊下


T「そして―――」

  歩いている美雨。

  新井の部屋のドアを開ける。

美雨「京、雅ちゃん、孝哉。ワタシ、撮りたいシーンがあるの!」


59 海・砂浜


T「結局撮り直し」

  須見トール(司郎)がワルフォード将軍(健)をビームガンで撃ち、倒すシーン。

  背中から撃たれ、ワルフォード将軍の驚いた顔。膝を付いて、倒れる。

新井「はい、カーット! オーケィッ!」

  健、起き上がる。

  司郎は小道具の銃を将也へ渡す。

雅「後は追加の美雨さんのシーンだけですね」

被り物の瑛理「ええ」

新井「他の者は片付けに入ってくれ」

奈々代「はあい」

  果奈美、健に冷たいタオルを持って近付く。

果奈美「はい、宇野くん」

司郎M「うわっ、また……」

健「あ……りがとう」

  とタオルを受け取る。

  皆、びっくり。

  雅だけは微笑む。


60 海岸・双子岩近く


  準備運動をする美雨。その様子を見守る京。

京「なあ、美雨。このシーン、無理しなくても繋がるぞ」

美雨「昨日、話したでしょ。必要なのよ」

京「確かに次のシーンは、二人で逃げた将軍を追ってるけどさ」

美雨「でしょ。パートナーであるワタシも岩を渡ってなきゃ不自然なの」

京「そうかなあ。観てる人はその間を補完してくれるもんだぞ」

美雨M「京との差、今のうち埋めておかないと、もう来年は並んで立てない」

  ぐっと決意を拳に込める美雨。

美雨M「岩跳び、絶対に成功させる!」

京M「美雨もお腹痛いのか……? 何か変だ」


61 ロッジ・食堂


  ソファーで横になっている麻予。

  廊下を掃除している祐一郎。

祐一郎「麻予、掃除してる?」

麻予「してるよ~」


62 海岸・双子岩


新井「シーン50の5」

雅「五秒前―――三、二―――」

  新井、ジェスチャーでゴーを出す。

  美雨、ダッシュ。

  跳ねる。

新井「ダメだ、届かない―――」

雅「美雨さん―――」

  ゴレイディン(京)が走って、飛び込む。

  美雨を空中でキャッチし、海へ。

新井N「京! 美雨!」


63 ロッジ・食堂


  ソファーで横になっている麻予。

  各部屋のシーツをまとめる祐一郎。

祐一郎「麻予、掃除してる?」

麻予「してるよ~」

  食堂へ入ってきた奈々代と被り物した瑛理。

二人「!!」


64 海岸


  タオルにくるまる美雨。傍にいる雅。

  着ぐるみを脱いで海パンの京と叱る新井。

新井「お前まで飛び込んでどうする。あの辺は深くないし、流れも穏やかで、しかも美雨は泳ぎが得意なんだぞ」

京「すまん。美雨がお腹を壊してるから心配で―――」

美雨「壊してないわよ」

雅「あのシーンはカットしても問題ないし、そんなに怒らないで」

新井「おれっちが怒ってるのは撮影が止まったことじゃない。ついでのPV撮影が出来なくなったからだ」

美雨「PV?」

新井「予告編も撮りたかったのに、スーツを濡らしやがって」

京「面目ない」

新井「ま―――なんだ。おかげで、次回作のアイディアは浮かんだけどな」

雅「どんなのですか?」

新井「男子と女子がラブラブ度を高めることで合体できるようになる変身ヒーロー! 名付けてラブラブ―――」

美雨と雅「却下!」

京「ええええ」


65 ロッジ・食堂


  台所を片付けている奈々代、瑛理。

  機材を外へ運ぶ祐一郎。

  ソファーで横になっている麻予。

祐一郎「(廊下から声)麻予、働いてる?」

麻予「うん―――」

(以下、寝る麻予をバックに声のみ)

  果奈美と健、将也と司郎、到着。

祐一郎「機材は出しておいたよ」

将也「じゃあ、あと小道具か。誰か片付けるの手伝って」

司郎「ぼく行きます」

  二人は去る。

果奈美「帰りはバスでしたわね」

健「そうだね」

果奈美「では、後で」

健「うん」

  二人の気配も去る

  台所を終えた奈々代と瑛理が廊下へ。

(声のみ)

新井「撮影終わったよ」

奈々代「お疲れ様です」

雅「もうそろそろバスが来ますよ」

新井「各自、部屋の戸締りをして、荷物を持って門の所に集合」

瑛理「はい」

  食堂に入ってきた祐一郎。ソファーで眠る麻予を見つける。

祐一郎「麻予……」

麻予「(寝言で)してるよ……」


66 ロッジ・階段


  部屋へ向かっている雅。

雅M「迷わず飛び込むなんて―――丹羽くん、やっぱり美雨さんのこと……」


67 海岸からロッジへ向かう道


  並んで歩く京と美雨。

美雨「本当にもう。京はムチャしすぎよ」

京「おれがダメなの?」

美雨「また額みたいに、傷が残る怪我をしたらどうするのよ」

  京、前髪を上げる。

  傷がある。

京「これか? よく覚えてるな。小学校に上がる前じゃないっけ?」

美雨「そりゃあ、まあ……ワタシのせいで怪我したんだものね」

京「これはおれの勲章のようなもんさ」

美雨「そう―――なの?」

  京が頷くと、美雨照れる。

京M「天下御免の向こう傷って感じだもんな」

  美雨、察して睨む。

京「(焦って)大事な美雨との想い出でもあるしな」

  美雨、京に見えないように、嬉しそうに微笑む。

京「あ、バスが来た」

  ロッジの門のところに、バスが到着。

美雨「皆も出てきたみたい」

  ロッジの玄関で皆が手を振っている。


68 バスの中


  乗り込んでくる皆。

新井「合宿も終わりかあ。夏休みもあと少しだな」

奈々代「そうですね」

  果奈美と健は目が合うも、逸らして離れた位置に座る。

  雅、その様子に悲しげな表情を浮かべる。

司郎「帰ったら宿題終わらせないと……」

京「真面目だな、お前」

美雨「それが普通でしょうが」

将也「丹羽さんはどのくらい残ってるの?」

京「おれはまだ全くやってないぞ」

祐一郎「ええ?!」

麻予「どうすんの?」

京「まだ焦るほどじゃないって」

  と笑う。

瑛理(被り物中)「慌てても遅くないくらいですよ」

京「大丈夫、大丈夫」

果奈美「どこにそんな自信が……」

健「今年は見せないぞ」

京「亀田に写させてもらうから平気さ」

雅「え?!」

美雨「そんなこと言って、多分写すことさえやらないでしょ」

京「おれ、ここ取った」

  と、後ろの真ん中に座る京。

全員M「絶対やらないな……」



エンディングのバック

  バスは高速へ。

  標識は東京までの距離。


  バスの中、皆眠っている。

  一人一人を映していく(思いを寄せている相手を表している)

  新井→雅

  健→美雨

  瑛理→祐一郎

  奈々代→新井

  司郎→瑛理

  果奈美→健

  祐一郎→麻予

麻予「―――今、悪寒が……」

  麻予→将也

  雅→京

  京と美雨はツーショット


Cパート


69 バスの中


  将也、立ち上がる。

  奈々代と麻予だけが気付く。

  将也、司郎の隣に座る。

奈々代と麻予M「―――アリかも」


(終わり)

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