第4話 煌びやかなネオンの陰へ

 少子高齢化が進む国内情勢の中、日本政府は外国人を1人でも多く受け入れて国内で5年就労を難なく果たせば日本国籍が与えられるような政策を打ち出していた。

 技能実習制度から変わる特定技能制度制度や難民支援など外国人に関する法律も多岐に渡るが、外国人を多様性の元で多く招き入れることで人手不足の解消や衰退の穴埋めなどのメリットがある一方でデメリットの方が大きかった。

 国内にいる外国人は中国人、韓国(朝鮮)人、クルド人、東南アジア人などが多く存在しておりコンビニやスーパーのレジ打ちをしているのもほとんど彼らである。しかし、真面目に日本の法律と道徳に従った暮らしをしている者も居ればやはり不良外国人だって多くいる。

 特務情報部の存在を知る防衛省事務官、陸海空自衛隊幹部にとって守るべき日本に対して不良外国人の存在は頭痛が治らない原因の一つである。

 犬島部長は、防衛省市ヶ谷地区で勤務する陸上幕僚監部長に呼び出され防衛省施設の内にある厚生センターではなく部外の宴会場で貸切のVIP席へ連れて行かれた。

 「久しぶりだな。千羽和。」

「部長が第8師団副師団長だったころでしょうけどその呼び方辞めてくださいよ〜。その名前、親を恨むレベルで恥ずかしいですから。」

「そう、不貞腐れるな。とりあえず本題に入ろう。」

 陸上幕僚監部長は冗談まじりに犬島部長をからかったあと、資料を出した。

 彼は犬島部長が一般部隊勤務していた時に第8師団副師団長を勤めており、犬島部長をレンジャー教育に行かせようと最初に考えついた将官である。名前は剣田蓮司つるぎだ・れんじで階級は陸将。普段は陸将の階級章が輝く制服姿だが今回は人の目もあることを考慮して背広姿だった。

「これはこの間、消したヤクザから得た情報からさらに出てきたネタというわけですか。雑誌レベルにまとめられた資料。日本国土は完全に特亜に食い込まれてますね。あと思想を共にする外国人達に。」

 「あぁ、犬島らのお陰で助かったよ。中国人勢力による人攫いによる人身売買や臓器売買など、日本国内の暴力団組織も加わってるし巷では各それぞれのテロリストにも繋がりがあると現地の要員達も特定してくれてたからな。」

「しかし、我々の職務は外敵からの侵略、災害対策で裏社会絡みは警察に任せておけば良いのではないでしょうか?」

「馬鹿言うな。警察などハナっからあてになるか。絵本の警察官に憧れるガキが見る警察と現実の警察は違うんだよ。よく聞くだろ?警察と暴力団が密かに裏で繋がっていることもあると。内部から出てくるサビはあらかじめ排除しないといけないのさ。」

 剣田陸将は死んでも警察には任せないと頑なに決めているようだった。

 「そこで犬島ら特務情報部の連中、フェイトシーカーのスレイヤーであるモンゴル人の血が混じった在日チャイナだかコリアンだかの奴に頼むのもありとして港区へ飛んでくれ。と言ってもすぐに行ける距離だから飛んでくれというのもおかしいが。」

剣田陸将は笑い半分でそう頼んで渡すべき資料を確認して渡した。

 

 東京都港区

 犬島部長は久しぶりに富裕層が住むことで有名な港区に足を踏み入れるがお金持ちの比率が高いだけあって賑やかなのは相変わらずだった。

 港区には巷じゃ港区女子とか呼ばれるだけあって水商売やパパ活でのし上がった女性が多いせいでもあるのか街並みのネオンは美しくても通りの風景は何故か霞んでるように感じた。しかし、港区全てがそういった状態という訳でも無く談笑しながら言い合うホスト、食べ歩きをするカップル、通勤帰りのサラリーマンにスナック通いの中年グループなどとすれ違うのも犬島部長にとって日常的な平和を味わう醍醐味でもある。

 しばらく街並みを拝見したあと本件の人物であるフェイトシーカー所属のスレイヤー、オ・チンティンとの待ち合わせ場所の路地へ向かった。 そしてちょうど見覚えのあるスチームパンクの丸組手黒いゴーグルみたいなのをかけた男が現れた。

 「お久しぶりです。部長。まだ特情にいたんですね!」

オ・チンティンは軽く挨拶代わりにそう言うが敢えて犬島部長の苗字を名乗らなかったのは万が一の事を考えてのことだった。

 特務情報部の動きは情報保全隊や調査別室(別班)に見つかるのはもちろんの事、表舞台で平穏な暮らしをする一般人、警察や公安などに見つかるのも厳禁だからだった。

 「潜入調査してる要員によると今日、乃木坂の外れある歩道橋、天橋の近くで上級国民に接待してもらっていた國田組幹部が臓器売買顧客管理リスト、取引先データを取引するそうです。相手はおそらく中国人とは思うが、日本人かもしれません。見てみなきゃ分からないと言うことでしょう。」

オ・ チンティンは現像された國田組幹部の写真を見せた。

 「写真見せなくてもこいつのことは知ってる。名前は東郷寺銀太とうごうじ・ぎんた。借金漬けになった人間に奴隷や性処理のビジネスに引きずり混んだり、やべぇ話だと組の金をくすねた組員を殺してそいつの愛人、子供も連れ去って臓器を売ったりしてたらしい。話せば長くなるが人身売買、臓器売買で巨額な利益を上げている。」

犬島部長は説明を続ける。

 「それと彼らはどうしますか?」

「俺らは警察みたいな逮捕という権限は無いからな。取引の証拠を抑えて受け取った奴を天誅してその資料を奪うのみさ。」

 犬島部長は消音器サイレンサーが取り付けられるようになった自動拳銃SIG-P226の確認をした。

 オ・チンティンも念の為、民間の市場で買える暗視眼鏡にビデオカメラの確認をしてから最後に

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