第2話 仕事始め

 「小銃(アサルトライフル)は選ぶのは良いが、初歩的な任務で使うのはせめて拳銃だけにしておくのが無難だぞ。」

犬島部長は雪本に伝えた。

 「あ、基本的に隠密活動だから消音器が取り付けられる仕様を持っていくと良い。」

さらにはサイレンサーが取り付けられるP226を9ミリパラベラム弾とセットで雪本に渡す。

 P226ハンドガンは9ミリ口径仕様なら15発装填することができ、自衛隊で採用されている9ミリ拳銃という呼称で知られているP220より6発多い点では多少なりとも安心できる。

 拳銃をショルダーホルスターに入れて、腰に福岡県在住のナイフ職人が開発したマッカリーハンティングナイフを装備して、いつ案件が来ても良いように備えた。

 「準備ができたら別の現場に行こう。物覚え悪いなら拠点の住所が書いてあるメモ渡すから任務の時に見ると良い。」

犬島は雪本に拠点所在地が記載された紙を渡した。

 そして犬島の車に乗って別の場所へ向かう。

 おおよそ15分ほど時間かけて行くと廃墟があり、近くのコインパーキングで駐車してから廃墟に向かった。

 犬島部長についていくとそこには同じ要員と思われる者が数人いて空気もよどんでいた。

 地面にはブルーシートが敷かれて、椅子に拘束された状態の男の姿があった。見るからには堅気の人間ではない。袖のまくった白のカッターシャツに黒のスーツズボンで腕にはヤクザ特有の刺青がある。

 「これはいったい…」

雪本は犬島部長につい口を開いてしまった。

 「あそこに拘束されているゴロツキ君は日本で最大のとある暴力団の一員で主なしのぎは子供と女の子を売り飛ばして稼ぐみたいよ。下手したらサラリーマンいや、俺らの給与より稼いでる。」

 「今、日本は陥落の一途を辿っているがその中で身近なのが貧困になった女を性奴隷として売ったり子供をさらって売るのが陰ながら問題になっているんでな。これは陰謀論でも都市伝説ではないぞ〜。」

犬島部長はおふざけ感覚で雪本に説明した。

 (この人、よくこんな状況でふざけていられるな…)

雪本は犬島部長のサイコパス具合に恐怖を感じた。

 「流田古ながれたご、尋問を続けてくれ。」

犬島部長は要員に指示を出す。

 「この人身売買にどの組織と海外組織が絡んで、大物ではどういったコネクションがあるのか教えてくれればすぐに解放して新たにやり直すチャンスをやる。」

流田古と呼ばれる要員が拘束されたヤクザの髪を掴んで尋問をした。

 それでもヤクザは吐かなかった。

 「よし、秘密兵器をこっちに連れてきてくれ。」

犬島部長がそう言うと、別の要員がある人物を連れてきた。

 拘束されたヤクザは驚くような表情を隠しきれない様子だった。

 「よお、元気してたかな〜?売り上げと懐のお金はどうかな〜?」

現れた男は陽気そうに話しかける。

 「亀頭!どう言うことだ!」

拘束されたヤクザは叫んだ。

 亀頭と呼ばれる男も特務情報部の要員であり潜入捜査官だった。何よりもスキンヘッドが特徴である。

 「売買リストと顧客リストの複製をパシった下っ端の正体を見抜けないとかアホかよ。最近の反社は頭良いのかと思ったらそうでもなかったのな。」

亀頭は小馬鹿にするように話した。

 「自分のビジネスなのに人を、しかも信用できるか分かんねえ下っ端をパシるとかマヌケの極みだな。」

亀頭はさらに皮肉に近いことを言い続ける。

 「ところでさ、唐突に聞くが人売りとキビダンゴ売りはあんたらだけでは無いんだろう?」

流田古が質問を始めた。

キビダンゴとは臓器の隠語である。

 「ほれ、これ。」

亀頭は大陸の組織が絡んでいると思われる男達の写真をトレカ自慢するノリで見せた。

 写真には武装警察制服姿の中国人や人民解放軍佐官の男が写し出されている。

 「あんたらの組織が取引している先方はかなり特殊なメンツばかりだねえ。帰化した親日の中国人に無理やり協力させて調べてもらったが埃や塵よようにたくさんいっぱい出る!出る。この軍服は大佐だな。うろ覚えだが。中国警察の幹部の方は疎いから全然知らないが。教えてくれたら命だけは助けてムショにしばらくいるだけでいい。」

亀頭はそう言って尋問を始めた。

 「こいつは大陸系マフィアの大物だったはずだ。よく日本に臓器を大量購入しに着たりしてる。それに現役の軍人ではなく、元軍人のはずだろ?」

ヤクザは喋り出す。

 「それがとある諜報機関調べだとピッチビチの現役なんだとよ。向こうは警察や軍人も当てにできないぐらい汚職と国家絡みの犯罪が多いからな。」

亀頭はそう言って犬島部長の元へ向かった。

 「表向きは取引の相手は中国のマフィアや無法者ですが、実際は中国の秘密諜報機関「野狗子」の要員です。構成員も軍人で網軍などの諜報部隊出身も大勢います。あの反社も野狗子と知らずに取引していたようです。」

 亀頭は犬島部長にクリアファイルに入れられた資料を渡すと同時に報告をする。

 「オ・チンティンを連れて来てくれ。処理をして欲しい。」

犬島は亀頭にそう頼んだ。

 それからしばらくしてスチームパンク風のゴーグルみたいなのをかけた男が現れてサイレンサー付きの自動拳銃H&K USPでヤクザの頭を撃ち抜いた。

 「あんたに特別な恨みは無いが平和で素朴な日常のためにあの世へ行ってくれ。」

オ・チンティンと呼ばれる男はそう言ってその場を立ち去る。

 その後、多額の金で雇った特殊清掃員が来てヤクザの死体は時間をかけて処理された。

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