変な特務機関〜今日から天珠を下します。〜

ピンクッティー

第1話 闇への扉

 この時期、日本国民の生命、財産、生活、平和を防衛することを主たる任務とする特別職国家公務員である自衛隊に転属の話が出てくる頃合いだった。

 「雪本!お前、中隊長が探してたぞ!」

先輩と思われる若手の3等陸曹がタバコをふかしてる隊員に声を張り上げて言った。

 (何の話なんだろうか…もしやレンジャー素養受けるか何かだったら面倒臭いな…)

雪本と呼ばれてた自衛官はあと少し残ったタバコを灰皿に入れて中隊長室に向かう。

 その頃、ほとんど年次休暇取っていたり振替休日(代休)を取っている日で勤務している自衛官は少なかった。

 「雪本3曹入ります。」

 そしてノックして名前と階級名乗ってから中隊長室へ入る。

 中隊長室にはいつも通り3等陸佐の階級章付きの迷彩服を来た中隊長がいるがその隣には背広を着た謎の男がいた。

 (情報保全隊?警務隊?俺、何もしてないぞ…)

雪本はそう思いながら息を飲む。

 「いきなりですまないな。背広がいるからちょっとびっくりしただろう。」

中隊長はにこやかに言った。

 (ちょっとどころではないわ。)

雪本はそう思いながら気を取り直そうとする。

 「今、呼んだのは雪本3曹を特務情報部へ異動させようという話でね。隣にいるのは部長の犬島千羽和さんだ。階級は1等陸佐で実は幹部候補生時代の先輩でもある。」

中隊長は雪本に紹介するが、雪本は特務情報部の部長の名前に笑いそうになったが我慢した。

 「初めまして。犬島1佐と申します。雪本優馬3等陸曹は特務情報部とは聞いたことがないでしょうから簡単に説明します。」

「はい…」

「情報保全隊や別班とは違うところは我々は日米地位協定という概念もありません。相手が米軍だろうが警察だろうが国民生活、生物の居場所に不利益と思ったら遠慮なく排除します。転入したら最寄りの自衛隊駐屯地業務隊臨時勤務、もしくは自衛官の身分の抹消という扱いです。」

犬島部長は説明を続けた。

 「となると特殊作戦群みたいな部隊と言うことですか?」

雪本は犬島部長に質問する。

 「まあ近いですが、違うところは空挺とレンジャー必須ではない点だけですね。特戦から転入してきた人もいますが。で、入るんですよね?国家、国民に寄り添った国防ができますけど、いかがなさいますか?断ることも可能ですが入るんですよね?」

 犬島部長は雪本さんに詰め寄るように転入しろと言わんばかりに物を言う。

 (どっちでも良いが、どうせ自衛隊のタブーに等しい内容を知ってしまったんだし背に腹は変えられんだろう。)

「入ります。まだ未熟で手間を掛けることが多いですがよろしくお願いします。」

雪本は特務情報部に思うことや疑問を抱えながら転入を承諾した。

 「よろしい。部隊から先輩へ白羽の矢を捧げることができ、先輩の顔も立てれてこっちも一石二鳥だな。だが、しかしこのことは他の奴に絶対に言うなよ。転属の話だが、表向きは即応機動連隊へ行くと言うことにしておくからな。」

中隊長は遠回しに忠告をする。

 それから話は終わり、雪本は中隊長室を退室して営内に戻った。

 いっとき時間が流れてついにこの時が来た。

 雪本は迎えに着た送迎車に乗り込み勤務していた駐屯地を後にして本格的に特務情報部の要員として一歩を踏み出すことになった。

 特務情報部は90年代初頭に日米関係の基盤となる日米同盟、日米地位協定に囚われずその他の国の外交にも囚われず、政治や政党にも囚われない非合法諜報機関で自衛隊はもちろん表舞台に出ることは一切無い。要員の人数は所属する者しか知られていないし、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の現職や経験者もいるし準軍事組織と言える特別行動班フェイトシーカーも存在している。フェイトシーカーは特別なだけに日本に帰化もしく帰化予定の在日外国人も含まれていた。

 もし、日本国内にそんな非合法諜報機関が存在していることが知られた場合、間違いなく世論による批判の標的になる懸念もある。

 転入先に到着すると最初にしけた建物に案内されて近くのペーパー企業の事務所へ案内された。一見見るとまんま暴力団事務所みたいだった。

 「開け〜ゴマ。」

犬島部長はふざけてそう言うと花瓶や骨董品が飾られている棚が動いて地下へ向かう階段の空洞が出てきた。

 「ついて来てくれ。」

 そう言われて雪本はついて行くように降りて行った。

 階段を降りると謎解き小説に出てきそうな部屋がいくつかあり、案内された室内を見てみると地図が書いてあり、白い仮面を被った有名なホラー小説家である砂穴が創作してそうな間取りになっていた。

 そして、驚くことにとある一室は武器庫になっていて映画みたいに多彩な銃や刃物、爆発物がありまるで夢を見ているような感覚になる。見る限りだとM16やM4、HK416、AKシリーズ、ステアーAUGなどがあり、拳銃や短機関銃ではP226にグロックシリーズ、USP、ベレッタシリーズ、UZIやMP5、MP7なども見られた。その他様々な武器もあったが調べれば調べるほどキリがない。

 「自分に合いそうな物を選んで装備するんだな。特に統制を強要することはないから考えて選べば。」

犬島部長はそう言って部屋を去っていった。

 雪本はHK416とP226を選んだ。一時的にサバイバルゲームでも使い慣れた銃器を選んだがまた選ぶこともできるから特に思い残しはない。

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