第3話 せめて死に際くらい派手に…
「―ここは、どこだ?」
暗い周囲を見渡しながら、クラディスはそう声を上げる。
マルドに追い詰められて足を踏み外してから、果たしてどれだけの時間が経っただろう。
クラディスは痛む体をどうにか動かそうと、身をよじるが―
(……駄目だ、動きそうにない。……これはもう駄目かもな)
よく見れば、彼の体は血だらけだった。
徐々に目が暗闇に慣れてきたものの、自分がどこに居るのかはやはり分からない。
(……今、何層なんだ? マルドに追い詰められて、落下して……はは、よく生きていたもんだ)
まさか、自分が作り出したパーティから追放されるとは思わず、クラディスは思わずから笑いをこぼしてしまう。
今のリーダーであるマルドは少し後に入ってきた新参者だった。
ただ、仕切りたがりだったマルドにリーダーの座を渡し、クラディスはあくまでも『支援役』という立場に身を置き、『副リーダー』のようなポジションをずっと保ってきた。
それがまさかこんな結果を生む事になるとは……クラディスは自分の行いに自嘲気味な笑いを浮かべるしかなかった。
(……まあ、今さら何の未練もない。あんな奴の居るパーティに戻ったところで、また同じように襲われるだけだしな)
強いて言えば、パーティの人間達がどう考えていたのかくらいは気になっていたが……それも死んでしまえば意味はない。
これまでずっと共に居た者達が自分の死を耳にしてどう考えているか、それを思い心が痛むところはあるものの、それを確認する術は彼にはもうない。
そうして、クラディスが諦めに近いため息を吐いた時だった。
(……血の匂いに寄って来たのか)
気付けば、周囲には口からよだれを垂らした大量の魔物が集まっていた。
どれもこれもが凶悪な見た目をしており、恐らくは未確認のモンスターも多い。
それはつまり、こんな高難度ダンジョンにここまで入って生き残れた者など居ないことの証でもある。
「……悪いが、いくら死にそうだからって、モンスターに食われて死ぬなんざゴメンだ」
そんなモンスターの群れを前に、クラディスは自嘲するように笑みを浮かべる。
散々な人生だったが、死ぬ直前すら散々な目に遭うのはごめんだ。
クラディスは周囲を確認して人が居ない事を確かめると、まるで最後を覚悟するように笑みを浮かべた。
「―これなら心置きなく本気を出せる。最後くらい手加減なんてしないで、デカい魔法を撃って散るとするか」
そうして、自分の死を覚悟したクラディスは、これまで『仲間達を巻き込まない為に加減していた魔法』を、思う存分に振るうのだった―。
骸骨魔導士の下克上~ダンジョンの最下層で追放され骸骨モンスターに転生した魔導士は、婚約破棄の為に追放された聖女と大魔導士へと成り上がる〜 月下文庫(ゲッカブンコ) @sekiya_ookami
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