本文をクリックすると、主人公ブラームスさんの一人称がいきなり「おいら」。
ブラームス先生ってお偉い有名作曲家じゃなかったっけ……と呆気にとられるうちに、読み手はあれよあれよと怒濤の推し活人生に巻き込まれていきます。
西洋音楽に詳しくない、有名作曲家の名前も「聞いたことはある」程度、な自分にとっては、本作の内容がどこまで本当でどこまで嘘かはさっぱりわかりませんが……読んでいるうちにそんなことはどうでもよくなってきます。
そこにあるのは、推しに魂を、命を捧げた一人の男の生き様。
推しである女流ピアニストにすべてを捧げ、それでいながら一線は越えない、まさに推し活道を体現した生の軌跡。
それでいて時々、自分が美味しい思いをできるような企みも忘れないあたり、策士です。
それらすべての経緯を語る、一人称「おいら」の軽妙な口調。
クラシックの重々しさは微塵もない、愉快痛快な人生でございました。
KAC版の文字数縛りが外れたことで、更にパワーアップしたブラームス先生の推し活人生。
堪能させていただきました。ありがとうございました。