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 コン……。


 

 眠りが浅かったのだろうか?

 わずかな物音で、伊沢は目を覚ましてしまった。

 

 時間は朝の7時。

 比較的、自由に時間が組める彼にとって、この時間に起床することは、とても珍しいことだった。



 

 「ヴィ……、んぅい~……」


 

 なんとも言えない呻き声を出しきると、手探りで、近くに置いたはずの暖房のリモコンを探し当てる。

 

 手足の先は氷のように、冷え切っていた。

 やはり、あれだけ重ね着をしても、冷え性を前にしては無意味であるようだ。

 

 一瞬過ぎった節電節約の4文字は無かったことにして、伊沢はあっさり暖房の電源を入れる。

 

 これは氷河期だから仕方ない。

 

 夏にも似たようなことを言っていた。

 


 

「そういえば、さっきの音、何スかね?」

 

 少し時間が経ち、部屋が温まったことで、頭が動いてきたらしい。


 伊沢は、おもむろに、玄関の方へ向かった。

 特に誰もいないことを確認すると、扉を開けてみる。

 


 「……ん?」


 

 置き配という予想に反して、宅配ボックスに何かが届いた様子はない。

 その代わり、外側のドアノブに、紙袋が持ち手を支えに引っ掛けられていた。


 先ほどの音は、誰かがこれをここに掛けた音だろう。


 

 特に覚えがないそれの中身を、一応確認してみると、白い封筒と、飲み物の詰め合わせらしい小包が入っていた。

 

 飲み物は、伊沢の好きなメーカーの商品だった。

 確か、昨日もそこのフルーツ牛乳を飲んだ気がする。

 

 宛名として、〝伊沢様〟と書かれた封筒を返すと、伊沢の想像した通りの差出人の名前が書いてあった。

 


 

「……本当に、真面目ッスね」

 

 

 クックックと笑いながら、伊沢は、いつものコーディネートに加えて、ブラウンのコートを取り出した。

 


 どうやら、今日は珍しく、出かけるらしい。

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