13
コン……。
眠りが浅かったのだろうか?
わずかな物音で、伊沢は目を覚ましてしまった。
時間は朝の7時。
比較的、自由に時間が組める彼にとって、この時間に起床することは、とても珍しいことだった。
「ヴィ……、んぅい~……」
なんとも言えない呻き声を出しきると、手探りで、近くに置いたはずの暖房のリモコンを探し当てる。
手足の先は氷のように、冷え切っていた。
やはり、あれだけ重ね着をしても、冷え性を前にしては無意味であるようだ。
一瞬過ぎった節電節約の4文字は無かったことにして、伊沢はあっさり暖房の電源を入れる。
これは氷河期だから仕方ない。
夏にも似たようなことを言っていた。
「そういえば、さっきの音、何スかね?」
少し時間が経ち、部屋が温まったことで、頭が動いてきたらしい。
伊沢は、おもむろに、玄関の方へ向かった。
特に誰もいないことを確認すると、扉を開けてみる。
「……ん?」
置き配という予想に反して、宅配ボックスに何かが届いた様子はない。
その代わり、外側のドアノブに、紙袋が持ち手を支えに引っ掛けられていた。
先ほどの音は、誰かがこれをここに掛けた音だろう。
特に覚えがないそれの中身を、一応確認してみると、白い封筒と、飲み物の詰め合わせらしい小包が入っていた。
飲み物は、伊沢の好きなメーカーの商品だった。
確か、昨日もそこのフルーツ牛乳を飲んだ気がする。
宛名として、〝伊沢様〟と書かれた封筒を返すと、伊沢の想像した通りの差出人の名前が書いてあった。
「……本当に、真面目ッスね」
クックックと笑いながら、伊沢は、いつものコーディネートに加えて、ブラウンのコートを取り出した。
どうやら、今日は珍しく、出かけるらしい。
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