子供っぽい彼女のピアスが、なんかエロい。

野原想

子供っぽい彼女のピアスが、なんかエロい。

彼女のピアスが、なんかエロい。俺の彼女は少し子供っぽい。


俺と30cm程差がある背丈と、高めの声。あの髪型が演出する丸いフォルムは何歳頃から大きな変化が見られないのだろうかと考えてしまうほどで。だが、そんな彼女の耳たぶには一つのピアスがくっ付いている。俺と居る間はずっと付けているので彼女の一部のように思っていたが、今日その考えが改まったので是非聞いていただきたい。事の経緯と彼女のピアスが俺から見ていかにエロいのかと言うことを。

今日初めて俺の家に泊まることになった彼女は当然俺の家の風呂に入る訳だ。俺は普通に夕飯を作る。彼女とピアスの話などしたことも無く、俺がいつも通り勝手に 『今日はこういうやつか、可愛いな』 と心の中で呟くだけだった。

コツ、コツ、と鍋の中でお玉が音を立てる度に俺の頭の中で彼女の耳元のピアスが揺れた。幼い雰囲気を持つ彼女にしてはシンプルで、外してその辺に置いておけば直ぐになくなってしまうような小さなデザインのものだった。もっと可愛いものを選びそうだが、いっつもどうやって選んでいるんだろうかとふと気になる。とても多くの種類を持っているわけではなさそうで、服の系統や色、季節によって変えているようだった。まぁ、俺には分からないので彼女に聞くのが一番だろうと。そこでタイミングよく風呂から上がってきた彼女に目を向ける。


『ねぇー、この部屋くらいよー?電気つけてもいいー?』

ぺたぺたと部屋に入ってきたあとで明かりのリモコン操作を手に持つ彼女。

『あ、いいよ。飯もうちょいだから待って』

『ありがとー!』

ピッと電気の明度を最大にした彼女の耳元には来た時と同じピアスがくっ付いていた。

『あれ、ピアスしたんだ』

思わず出てしまった俺の言葉に彼女が少しだけ驚いたような表情を見せたあとでニヤリと口角を上げてこちらに近づいてくる。

『え、何?火ついてるから危ないよ?』

『うんうん』

なぜだか嬉しそうな彼女。何か話をしようと口を開く。

『あ、そう言えばピアス。いっつもどうやって選んでるの?買う時とかも。』

結局ピアスの話題じゃねーかと自分のMC力を呪う。しかも声若干裏返ったし。彼女も彼女で少しだけ言葉に間があった。

『ああー、、』

ニヤニヤの裏に都合の悪そうな声を隠しているつもりなのだろうか。

『え、何?言いづらいの?』

『違う違う!』

『じゃあ何?』

詰めるような言葉にすぐ反省した。

『えっとね〜』

話し始める彼女を見てコンロの火を消す。

『うん』

『最初は2つくらいしか持ってなかったの』

『最初っていつ?』

『付き合い始めた頃〜!』

俺の瞬きを一つ確認して話を続ける彼女。

『でー、初デートでピアス付けて行ったらすごくよく見てくれてたから。こういうの好きなのかな〜と思って喜んで貰えるようなの選んでる〜』

パチリと向けられた下からの視線と揺れるピアス。水色の石がさっきつけた明かりを反射させている。

『そ、そっ、か。』

口元を隠した俺の手を見て彼女はパッと笑う。

『照れてるー!好きなんでしょー?』

目を逸らすという典型的な照れています宣言をかます俺。

『ピアスが好きなわけじゃ、』

『私のピアスが、好きなんでしょ?』

『え』

ぴしゃりと周りの音が消えたような感覚だった。

『あはっ、なにそれ。』

『へへー』

『ビーフシチューできてるよ。味見する?』

『するー!』

風呂上がりの濡れた髪を耳にかけて大きなスプーンに掬われた一口分のビーフシチューを頬張る彼女の足は俺の足を少し踏んでいた。

『うまー!』

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子供っぽい彼女のピアスが、なんかエロい。 野原想 @soragatogitai

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