第5話

 翌日、昼前に佐藤刑事が証拠品と鑑識の結果を持ってきた。

鑑識の報告書では、毒はトリカブトに含まれるアコニチンと断定している。しかし、どう飲んだのかは分からない。夜の10時半から11時の間が死亡推定時刻と記されている。

 一心は、考えて、佐藤刑事宛ての指示書を作った。

先ず、どこのトリカブトか捜査するように書いた。

そして、証拠品の写真を眺めていると、静が「あらっ、この袋」とストローのビニール袋を指さして、「上の口の近くを切られておらへんか?」と指摘する。一心がよーく見ると、確かにストローを袋から出した場所と反対側をナイフか何かで一文字に切ってある。

「佐藤刑事、このジュースどこで買ったものだ?」何気なく一心が訊くと「そこの販売機じゃないですか?」と返してくる。

「はあ、じゃないですか?って、確認してないのか?」

「え~、そこの販売機のだと思って・・」と言う佐藤に思わず「ばかもん!すぐ確認だ!犯人が持ってきたものかもしれんだろ!」と喚いてしまった。それも指示書に書いた。

その切口からストローを抜いて内側に毒を仕込んだのではないか?調べろとも書いた。

 

 調書には、田浦鴻明は長年貯め込んでいた金の中から、哀園るりに20万円貸したが返済されず、返せと迫ると開き直って返さないというので、かっとして刺した。また、哀園るりについても、金遣いが荒く友人、知人に止まらず、サラ金や闇金にまで手を出す状態だった、としか書かれていない。

この二人の誕生から事件までの暮らし振りと、事件の三か月前からの二人の口座取引の明細を調べるよう指示書に記載した。

 「佐藤刑事、これから色々お前に指示することがでる。それをこの指示書に書いて渡すから、結果を電話でも何でもいいから返してくれ。いいな!」そう言って指示書を渡した。

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