境の日

街で親の死の知らせが飛び込んできたあの日を堺に俺の人生は180°きっかりと変わった。


中学生でもできるバイトを探して面接。


落ちて探して面接。


また落ちてまた探してまた面接。


それが5回続いたときは流石にきつかった。

5日も冷や汗かく面接を受け毎度不合格通知を頂戴した。


5回連続で不採用の通知。

流石に無理だと腹をくくりある番号に電話した。

数字を順番に押して呼び出し音がなる。


上条聖斗。

ヤクザの若頭。

困ったら連絡するように....と言われた。

が、ヤクザが本当にアドバイスなどしてくれるのだろうか。


不安を募らせ呼び出し音を聞く。

十秒程待っていると呼び出し音が途切れた。

『はい。上条です。』

しっかりと名前を名乗る声は低く、俗に言うイケボだった。

「あ、あの、僕、猫宮と言います。」

なんて言えばいいのかわからなくてとりあえず名前を伝えた。

不安になりながら綴られるであろう言葉を待つ。

「あぁ、君か。何かあったのか?悪いが今取り込み中なんだ。少しだけ待ってくれ。」

意外な言葉に目を見張る。端から断られると思っていた。

予想外の対応の後ろで何やら騒がしい騒音がしていた。

『ボス!こいつ殺っちゃっていいっスか?めちゃくちゃムカつくんで!』

物騒な言葉に顔を顰める。

元々喧嘩にも縁がない僕だ。警戒心丸出しでかけた電話でいきなりこういう内容は流石にキツイ。

電話越しにきびきびと指示を出す上条さんの声が聞こえてきた。

(すごい、堂々としてる.....。)

対応してくれた上条さんには申し訳ないと思いつつ切ろうかなどと思い始める。

そんな中段々と騒音が小さくなっていった。

『待たせて悪いな。どうした、なんかあったのか?』

おそらく騒ぎの中心から離れたのだろう。

物騒な言葉が飛び交う騒音が限りなく小さくなったことに安堵した。

「え、、っと、お金返したいんですけど、お金なくて、バイトしようと思ったんですけど、5回連続で断られちゃって.......。」

事情を話すと上条さんに盛大なため息を吐かれてしまった。

『あのなぁ、そういうことはもっと早くに言え。序盤に言ってくれれば根回しとか、色々できたんだ。』

呆れたように言う声には、疲労が含まれていた。

指示を出す人というのも大変なんだな、とその時初めて思った。

「す、すいません💦」

ビクビクしながら謝るとまたため息を吐かれた。

『バイト先ならいくつか紹介できる。あぁ、安心してくれ、危ないとこじゃない。単純にバイト募集中の顔見知りのところだ。』

そう言っていくつかのバイト募集中だという店を教えてもらった。

行ったら面接だけの状態にしておいてくれるそうだ。本当にありがたい。

日時が決まったら連絡すると言われた。




少しだけバイトの面接日時の連絡で上条さんと話すのが楽しみになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

それでも僕は恋をする。 琥白音 @garua_karasute

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ