ソラとクモとアメと 2

青い空。夏の入道雲。待ちゆく人々。

その中で立ちすくみ黒服と話す男の子。


私、佐々倉琉氷ささくらるいは先週から夏休みに入り自由な時間を謳歌していた。

両親は仕事でどうせ居ないし、宿題もめんどくさいからとベランダでだべっていた。

モンスター片手に待ちゆく人の人間観察。

これが観察途中に知らない店を発見したり、犬の散歩にハプニングが起きたりして意外と楽しく、一ヶ月前にハマってから暇さえあればじーっと観察していた。


(今日はどんな人が居るのかな〜♬)

鼻歌歌う気分でガラッと窓を開ける。

なにかめぼしいものは....。

「ん?」

ぐるっと見渡して目に止まったのは人の流れの中で止まって動かない物体。

「んん?」

よく見えなくて少し身を乗り出す。

今日に限って双眼鏡を親が持っていってしまったのだ。何に使うのか。

目を凝らしてみると高校生くらいの男の子と黒服のいかにも怪しそーな雰囲気の男。

なにか話し込んでいる様子だった。

しばらく観察していると、黒服が名詞のようなものを取り出して男の子に渡している。

「何やってんだぁ?」

そしてなにやら書類を出して黒服男が喋っている。

男の子は頷くだけ。

(何かの説明....?)

そして男はなにやら手帳のようなものを取り出して男の子に渡した。

流石に目を凝らすのも疲れ、必殺技!!とスマホを取り出す。

カメラを外カメにしてズームする。

男の子の手元に焦点を合わせると目的のものが写った。

「通、帳....?」

男の子が持っていたのは銀行で使う通帳。

どこかしらの有名な銀行のものだった。

「通帳の受け渡し?いや違う、受け渡しは窓口か郵送のはずだし...。」

なぜ男の子が通帳を渡されているのか、一体何を話しているのか考え込んでいる間に男の子と男は別れたようだった。

「ヤバッ!!男の子どこ行った!?」

急いで探すとそれほど離れいないところに男の子が居た。

「そういえば男の子の顔ちゃんと見えなかったな。」

スマホはもうしまってしまっている。

この距離では流石に男の子の顔は見えるまい。

そう思ってぼんやりと歩く男の子を目で追っていると、不意に男の子が立ち止まった。

「......?」

食いいいるようにじっと見つめてたら男の子がそっとこちらを仰いだ。


一瞬目が会ったような気がしてベランダに座り込む。

今までの疑問はどこへやら、一瞬で気が抜けてしまった。

「.......ッ!」

顔が真っ赤に熱い。

一体どうしてしまったのだろうか。

胸の高鳴りを聞きながら目を閉じた。


8月の夏。


入道雲が立ち昇る空の下で。


ある男の子に恋をした。

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