第36話「約束するよ」
俺は力の全てを解放し、俺と砕華の全身を包み込む。
すると俺のイメージに従って俺たちの背後に白銀の双翼が出現、さらに翼は限界突破によって俺たち二人を余裕で包み込むほど巨大化した。
俺と砕華は互いの目を見つめ合い、相手の意思を理解して頷く。
直後、巨大な翼の羽ばたきで俺たちは空中へ飛び上がった。
夜空を翔ける俺たちの全身は互いのエネルギーで満たされ、力の双循環によって増幅を繰り返していく。
「いくよ、衛士!」
「ああ!」
俺たちに戸惑いや迷いは微塵もない。
互いを信頼しているからだ。
俺たちは輝く翼を折りたたみ、目にも止まらぬ速さで流星の如く急降下する。
そのまま二秒と経たず地上を目前にすると、地面に衝突する直前で翼を広げ、高速で滑空。
速度を維持したまま、地面スレスレの低空飛行でゴライアス目掛けて突っ込む。
「ゴライアス! 奴らを叩きのめせェ!」
『オオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!』
スペクターの号令により咆哮を轟かせるゴライアスはスペクターの前に立ち、俺たちに拳を振りかざす。
メテオキックのパワーに匹敵する強烈な一撃は、今の俺たちでも食らえば危うい。
だが、そんな攻撃は今の俺たちには止まって見える。
俺たちはゴライアスの拳が直撃する寸前で体を翻し、拳を躱しながら体の上下を反転させた。
そして飛び蹴りの体勢のまま、俺と砕華はゴライアスの体の中心へ渾身の蹴りを同時に叩きこむ!
これが俺たちの、最後の一撃だッ!
「
「
『
俺と砕華が同時に放った超威力の二つの蹴りが、ゴライアスの胴体に炸裂!
天地開闢に匹敵する膨大なエネルギーの奔流がゴライアスに圧倒的衝撃を与え、その頑強な肉体を完膚なきまでに粉砕するッ!!
『ウッ、ウウウッ……ウバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?』
俺たちの一撃に耐えられないゴライアスは、肉体を粉砕されながら地上から飛び立つロケットの如き勢いで弾き飛ばされていく。
そしてゴライアスが飛ばされた方向には、スペクターが立っていた。
「く、来るな! やめっ……ぬおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!?」
避ける間もなくスペクターはゴライアスに巻き込まれ、一緒に弾き飛ばされる。
さらにゴライアスの勢いは止まらず、そのままスペクターは箒星にも似た光の尾を引きながら、夜空へ飛翔して行った。
「覚えていろきさまらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
スペクターは断末魔の叫びを上げながらゴライアスと共に夜空へ消え、やがて星となって見えなくなった。
それを見送った俺たちは決着を確信し、力の解放を止めて地上に降り立つ。
「終わった、か……」
「つっっっかれたぁ~!」
俺と砕華は体の力を抜き、二人そろって地面に座り込んだ。
砕華の言う通り普段以上の力を使ったせいか、大きな疲労感が全身を襲っている。
しばらくは運動もできそうにない。
ふと、気付けばすっかり花火も止んで静かな夜空だった。
空を見上げた俺は、少しばかりスペクターの安否が気になった。
図らずもゴライアスと一緒に蹴り飛ばしてしまったが、果たしてどうなったのだろうか。
「なぁ砕華、スペクターは……」
「心配する必要ある? それに、あの程度でくたばるなら苦労しないし」
「そ、それもそうか」
心配というのは少し違うが、実の娘である砕華がそう言うなら、スペクターはきっと生きているのだろう。
だが同時にそれは、スペクターが再び俺たちの前に現れるという意味でもある。
バリアントは東京に住まう人々を害し、懲りずに砕華を連れ戻そうとするだろう。
だが、そうはさせない。
俺が必ず砕華を守ってみせる。
俺は踏ん張りながら立ち上がり、砕華の手を取ってゆっくりその場に立ち上がらせた。
「砕華」
名前を呼ぶと、彼女は不思議そうに首を傾げた。
俺は砕華の手を握ったまま、輝く藍色の瞳を見つめる。
「約束するよ。俺は命ある限り、君の側にいると」
「え? い、命ある限り?」
「俺は君の隣で、君を守りたい。今の俺にはかつての力はないけれど、それでも君を守り続けたい。それが俺の生きる道だと思うから」
「えっ、あっ、えっと……それって、あの……」
暗闇でも分かるほど、砕華は頬を真っ赤に染めている。
「はい」
少しの沈黙の後、砕華は小さな声でそう答えてくれた。
大丈夫。
俺は砕華と共に生きていく。
だからクロ。
空の向こうから見ていてくれ。
――ドォーーン!
その時、まるで俺たちを祝福するかのような輝く大輪が大きな音を伴い、再び夜空に浮かび上がった。
大輪は俺と砕華の瞳に映り、光輝く。
「花火、まだ終わってなかったんだな」
「そうみたい! すごく綺麗……」
「そうだな」
「アタシ、衛士に出会えてよかった! 今日のこと、絶対に忘れない!」
「俺もだよ、砕華。俺の隣にいてくれて、本当にありがとう」
「うんっ」
握った手をもう一度固く握り締める。
当たり前のように隣に並び立って、打ち上がる花火を二人で見つめ続けた。
時折、お互いの肩が触れ合う。
互いの熱がそれぞれに伝わり、二人の体が火照っていく。
そのうち、俺たちはどちらからともなく見つめ合って、気付けば相手の吐息を鼻先で感じる距離まで近付いていた。
やがて、花火に照らされて伸びる俺達の影が重なり、ひとつになった。
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