第15話支援職はCクラスダンジョンをいきなり攻略する

王女アリスにエルフのクロエを味方にして、その後東の森のダンジョンを攻略しに行った。


俺の冒険者ランクは最底辺のFクラスだ。勇者パーティの頃はランク判定を受けていなかった。勇者パーティは国王陛下直轄で、冒険者ギルドには属してない。だから俺はランク判定を受けていなかった。おかげで街道沿いの商人なんかの護衛を引き受けることが出来るランクCに早く到達する必要があった。


勇者パーティの頃にランク判定を受けていたら、多分Cは間違いなかっただろう。貧弱な支援職とはいえ、支援職は重要な仕事だ。


で、俺達はダンジョンのスケルトンを片っ端から倒していった。何、中級の火の攻撃符術一発で簡単殲滅できたからだ。


「なんか、私達いらなくない?」


「そうなのね。僕も戦士の端くれ、少しは出番が欲しいね」


「そっかな? この方が楽でいいと思ったけど……ならこのダンジョンの最下層を攻略しようか? このダンジョンのラスボス、魔法に強いんだ。剣は必須だからな」


「はあ?」


「ええ?」


驚くアリスとクロエ。だが、俺は勇者達に見捨てられたSクラスダンジョンを単独で攻略済みだからCクラスのこのダンジョンは楽勝だと思う。


俺は剣もかなり強くなったから、危険はないだろう。それに二人の実力も見ておかないと。


符術士は支援職だ。だから仲間のことを全て頭に入れておく必要がある。


長所と短所。特に短所は符で強化して補って、長所は当然伸ばす。その為には二人の戦いぶりを良く観察しておかないと。


ちなみにアリスの才能は巫女戦士、スキルは『未来予知』、『剣術(中)』、『光魔法』一見剣には有利な才能だけど、重要な未来予知をすると古代語しか喋れなくなるというペナルティがある。ちなみに未来予知は相手の動きを予め予想できるからチート級のスキルだ。


そしてエルフのクロエは屠殺士という才能だった。人ならハズレスキル扱いで奴隷として売り飛ばされていただろう。だが、エルフの世界ではハズレスキルだからと言って売り飛ばしたりする習慣はない。


それにクロエは必死に剣を学び、剣術(小)のスキルを後天的に手に入れた。必死の努力の賜物だと思う。俺もそうだったから。符術士はいざという時は仲間の後衛職を守る責務がある。だから剣も必死で努力した。結果、後天的に手に入れた。


才能によって何の努力もなしに剣術(極大)のスキルを授かる剣聖や勇者と違って、俺達は必死の努力で手に入れるんだ。


☆☆☆


「エリートスケルトンだぞ!」


アリスが現れた魔物の名を告げる。符術を使えば一発だけど、あえて攻撃魔法を使わないで二人に身体強化と敏捷強化、防御強化の魔法をかけた。


アリスが叫び、剣を振り下ろすと最後のスケルトンは滅んだ。


クロエは器用にスケルトンから魔石を取り出す。


観察していたけど、剣術(中)のスキルを持つアリスは未来予知のスキルと相まって剣は一流だ。敏捷度より力が足りていないようだから今後筋力強化の魔法も追加しよう。


問題はクロエだ。クロエの才能は屠殺士……戦闘向きじゃない。戦闘ではハズレスキルだが、酪農家としては超一流だろう。だが、冒険者としては致命的だ。


剣術(小)だけでは戦力として弱い、エルフ固有の精霊魔法もスキルが(小)だから中途半端だ。


俺はクロエを鑑定してみようと思った。スキルやステータスを見てもっと上手い強化ができないか調べるためだ。


「クロエ、君を調べさせてもらっていいかな?」


「はい、レオ様。僕はレオ様の奴隷なのね。隅々まで見て下さいね。何なら今すぐ服を全部脱ぐのね」


「い、いや鑑定で見るのに服脱ぐ必要ないよ」


「そ、そうなのね? 僕、てっきり体の隅々まで……レオ様になら全部見られても……いいのね」


何故か顔を赤くするクロエ。何言ってんだ? この子?


一瞬、もしかして俺のことを好きなの? とか……はは、あり得ない、クロエは本当の奴隷じゃない。偽の奴隷の首輪でアリスの奴隷のようにしているけど隷属の魔法はかかっていない。


俺はアリスの正真正銘の奴隷だ。奴隷の俺に好意を寄せる女の子なんている筈がない。


しがない符術士だし。


だが、クロエを鑑定すると意外なことがわかった。クロエには『屠殺(極大)』、『包丁術(極大)』、『調味料(大)』、『風の精霊魔法(小)』というスキルがあった。屠殺士が故のスキルだろう。スキルの説明にはどんな魔物、動物も瞬時に解体、料理が可能とあった。


「クロエって、剣じゃなくて包丁で戦った方がいいと思うよ」


「え? 包丁? 剣の方がいいのね。包丁なんて短い獲物じゃ戦いにくいのね」


「いや屠殺包丁という長物の包丁があるんだ。包丁を使うと一瞬で魔物を解体できるらしい。多分それが一番効果あると思う」


クロエの屠殺のスキルレベルは(極大)だった。使わない手はない。


俺は錬金の符術で大ぶりの屠殺包丁を作ってあげた。


その後、クロエはアリスに見劣りしない活躍を見せた。出てくるスケルトンを一瞬でバラバラにする。クロエ曰く、何処を切れば解体できるか簡単にわかるそうだ。


おかげで俺たちは東の森のダンジョン最下層を攻略できた。俺の攻撃符術なしで。

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