第12話支援職、何故かハイライトの消えた目で見られる

俺は殺した魔族の体を裂いて魔石を取り出した。世界図書館で読んだ本によると魔族も魔物同様魔石を持つ。これを放置すると強い瘴気を放ち、新たな魔物を生み出す。


魔石は魔道具の動力源として使うことができ、魔石の魔素を使うことで瘴気は薄れる。


そのため、冒険者は極力倒した魔物の魔石を解体して取り出すことが義務付けられている。


魔族には義務が無いが、これだけの瘴気を纏っていた魔族だ。放置することに危険に思えた。


魔族の魔石を取り出した時にちょうどアリスが追いついて来た。


「レオ! 酷いぞ! 私を置いて行くなんて!」


「すまん。急がないと生存者が殺られる可能性があったんだ」


「そういうことか……じゃしょうがないかな……うん? あれ?」


アリスは魔族の胴体を見ると。


「レ、レオ。この謎の魔物、レオが倒したの?」


「ああ、こいつが商人達を襲っていたんだ。結局助けることが出来たの……一人だけだ」


「いや、この褐色の肌に姿! 見覚えがある! こいつ喋らなかった? 人間とは思えない魔物と人間の間みたいな顔している上、喋らなかった?」


「ああ、喋っていたよ。多分……魔族」


「……ま、魔族」


アリスは何故この魔族を知ってるんだろう?


「腑に落ちたよ。私を護衛していた騎士達を殺したのはこいつよ。それに魔族と言われてわかった。私が皇帝陛下に伝える内容も世界図書館の魔族に関する記述よ」


「アリスも世界図書館のこと知ってるのか?」


「ええ、世界図書館自体はまだ見つかってないの。でも、私の国の古文書の一冊をある学者が翻訳に成功したの。そこに書いてあったのが、世界図書館と魔族復活に関する記述」


そうか、アリスの目的は帝国の皇帝に魔族復活を伝えに行くことだったのか?


「……あ、あの」


そこに声をかけて来たのは唯一生き残ったエルフの女の子だった。


「酷い目にあったな。でも、助けることが出来てよかったよ」


「あ、ありがとうございますね。助けて頂いた上、図々しいのは承知していますが、お願いがありますね」


「お願い? 何かな? 俺にできることなら出来るだけ協力するけど?」


「ぼ、僕の里を救ってくださいね。お願いしますね」


俺はアリスと目を合わせた。


エルフの女の子は名をクロエと言った。彼女の話によると、最近エルフの里の近くに人攫いが出たそうだ。月に一人か二人、人知れずエルフが消えていく。


もちろん、エルフもそれで黙って見ていた訳では無い。里の戦士達が里の周辺を警護したが……姿が消えた。そしてあくる日、エルフの戦士達の頭部だけが里の端に置かれていた。


頭部は頭を割られ、脳髄がなかった。そして目も無くなっており、食糧とされたことが一目でわかった。


里の長は只事で無いことに気がついた。『魔族の復活』里の長は1000歳にもなるエルフの中でも長寿だった。それで1000年前の子供の頃のことを思い出した。


魔物に知性は無い。このやり方は知性がある者の仕業。亜人とはいえ、エルフを食べるような人族がいるとは思えない。ましてや屈強な戦士達を返り討ちにするとは……魔族としか思えなかった。


里の長は戦士の一人、クロエに救援を要請する旅を命じた。人族、亜人族、誰でもいい。魔族に対抗できる戦士を探してくる。それがクロエに課せられた任務だった。


幸い、里は目的地の帝都へ向かう街道沿いから近い。


「アリス、どうする?」


「どうって言われても、そんな怖い魔物になんて……え? て、レオは魔族を倒したの?」


は? 何を今更言ってるんだ?


「ごめん。あんまりにも凄すぎてスルーしちゃったけど、レオは一人で魔族を倒したの? 私の国のS級の騎士10人が勝てなった奴に?」


「勝ったよ。いや、運が良かったんだよ。コイツ余裕ぶっこいて戦闘中に考え事してたからな、隙がありまくりだったから、その隙に乗じてまぐれの一発が入ったんだ」


俺が笑顔でアリスとクロエを見ると、クロエが何故かブンブンと首を横に振った。


「隙……とか……運とか……そういうレベルじゃ無い!」


何故かクロエもブンブンと首を縦に振って同意していた。


そして、アリスとクロエが俺を見る目から何故かハイライトが消えていた。

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