第6話勇者パーティはお約束通り困る1
「今日は清々しい朝だ。何しろあのクソ奴隷がいないからな」
「全くです。あいつ、いつも私のことをいやらしい目で見て、きっと目で犯していたに違いないです」
「俺が上書きしてやろうか?」
「お願いします。アーサー様♡」
「ルピーもお願いします。あいつのことだからきっと私も!」
「よし、まとめて犯ってやる。二人共、早くケツをこっちに向けろ」
「「きゃぁあ! 嬉しい!」」
朝から嬌声が響く。
☆☆☆
ひとしお剣聖エミリアと魔道士ルビーの身体を堪能した後、勇者アーサーは満足げに朝のコーヒーを楽しんでいた。
『ふふ。酒池肉林だ。やはり王子であり、勇者の才能を授かった俺様は特別なんだ。こんな便利な魅了というスキルまで授かった。おかげでこのいい女二人は俺の肉便器だ』
勇者アーサーの目は赤く禍々しく光っていた。どうやら二人の女に愛されているのは実力ではないらしい。
二人の美しい裸体が惜しげもなく晒されている。二人共何一つ隠そうとしない。そう、二人はこのアーサーにより完全に魅了漬けにされていた。
しばらく二人の裸体を楽しんでいたが、そろそろ勇者パーティとしてレベリングと遊ぶ金を稼ぐためにダンジョンに潜る頃あいだ。
ドンとエミリアを蹴飛ばす。
「さっさと起きろ。そろそろダンジョンに潜るぞ」
「わ、私、もう無理です」
「私もあんなに激しくされたのに」
「五月蝿い。さっさと行くぞ」
魔道士のルビーにも乱暴に蹴りを入れて叩き起こす。
「おはようございます。アーサー様」
「おう、ご苦労だ。シエナ」
「アーサー様、今日はチェックアウトする日です。今日から隣の豪華な宿にと伺っております」
「そうだったな。レオを売った金が入ったからな。あいつも少しは俺の役に立って嬉しいだろう」
「……」
レオのことを言われてつい下を向くシエナを一瞥するとアーサーは考えた。
『奴隷だからと思っていたが……奴隷でも中々シエナは見目よいな。そのうち……そろそろエミリアとルビーにも飽きてきたしな』
最低な男、勇者アーサー。彼の毒牙はシエナにも迫って来ていた。もちろんシエナは奴隷でも戦闘奴隷だ。そういう方向のことは契約違反だ。そもそも給料すら払っていないので、それ自体違反だ。
「さあ、チェックアウトしよう」
髪をかき揚げナルちゃん気味に気取って宿のカウンターにもたれかかり、宿の受付嬢に話しかける。
「Εσυ τι θελεις? 」
「何言ってるんだ? こいつ?」
「いえ、アーサー様、ここは私達のサンマリノ王国ではないので、言葉が違います。共通語で話されませんと!」
シエナのツッコミは当然だ。何言ってるんだコイツと言われるべきはアーサーの方だ。
「おい、誰か通訳しろ!」
「私、共通語わかんない」
「大阪弁なら!」
「それは方言だ!」
結局シエナが身振り手振りで何とかチェックアウトの意思を伝えて金を払う。今まで困らなかったのはもちろんレオのおかげである。
「あの、僭越ですが、通訳を雇った方が良いのでは?」
「はあ? 通訳? そんな金もったいないだろ?」
「ではどうやってこの国で生活します? 通訳なしだと何もできませんよ」
「ねえ、アーサーさまぁ♡ 通訳雇ってくださいよ」
「そうです。メンドクサイじゃないですかぁ♡」
剣聖エミリアと魔道士ルビーが胸をアーサーに押し当てながら懇願する。
「仕方ないな。ダンジョンから帰ったら、ギルドで雇おう」
「やったー!」
「流石アーサー様!」
「……」
何も考えないで喜ぶエミリアとルビー。だが、シエナは一人心の中でツッコんだ。通訳雇う金でレオを売った金はなくなるだろう? と。
☆☆☆
「よし、念願のロイヤルオークを倒したぞ!」
「流石アーサー様ぁ♡」
「ルビー濡れちゃいますぅー」
無邪気に喜ぶエミリアにルビー。だがシエナは心の中でツッコむ。
このでかいロイヤルオークの肉をどうやって運ぶ気だ? 今まで狩った魔物はレオの収納で運んでいたが、今後どうする? 収納持ちのポーターを雇ったら、レオを売った金が無くなる処か赤字だろ?
☆☆☆
「な、なんだと! ふざけるな!」
大声を上げるのはもちろんアーサーだ。
「なんでたかが収納持ちのポーターの依頼料がこんなに高いんだ!」
「何をおっしゃる。収納のスキル持ちは数が少なく、これでも良心的な価格ですぞ」
「本当か? 通訳のお前を雇った金も結構高かったようだが?」
「適正価格ですぞ」
シエナは一人心の中でツッコんだ。絶対ボラれてる、と。
「ああ! せっかく倒したロイヤルオークの肉が持ち帰れなかった上、こんな出費なぞ!」
「アーサーさまぁー。レオが…「ああッ!!」
レオがいればと事実を告げようとしたエミリアの言葉を乱暴な言葉で塞ぐアーサー。
「これは一時的な出費だ。何、収納と翻訳のスキルを持った戦闘ができる冒険者を雇えばいい! 明日からレオの上位互換の聖女アイリスも合流する!」
「ほお? 収納に翻訳に戦闘もできる冒険者ですか? Sクラスの冒険者を雇われるのですな?」
「はあ? Sクラスだと?」
通訳の男に指摘されて疑問を浮かべるアーサー。
「翻訳も収納も珍しいスキルです。その上戦闘もできる冒険者となると……それだけでSクラスになりますな」
「そ! そんな訳があるかぁー! それではレオがSクラスの冒険者と同格になるだろうがぁ!」
だからレオはSクラスの戦闘奴隷だったのである。目先の遊ぶ金欲しさに貴重な給料すらいらない奴隷を売ったしまったアーサー。彼の転落劇はまだ始まったばかりである。
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